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副業容認の企業、まだ3割 長時間労働や割増賃金が壁 弁護士 志賀剛一

2019/4/11

政府は昨年から副業の容認を推奨し始めました。2018年1月、厚生労働省はモデル就業規則を改定し、労働者の順守事項の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除し、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」との規定を設けているのです(ただし、副業の禁止や制限をすることができる場合を例示した例外規定も置かれています)。

しかし、ご存じのとおり、政府は「働き方改革」を推進しており、その重要な柱の一つが「長時間労働の是正」です。時間外労働の上限を原則として月45時間かつ年360時間と法定化し、この上限に対する違反には罰則を科す改正労働基準法が4月1日に施行されたばかりです。

一方で労働時間を減らせと言いながら、他方で副業を奨励するのはなんだか矛盾しているようにも感じます。会社から強要される労働はアウトだが、労働者がアフターファイブや休日に自らの意思で行う労働はOKであり、空いた時間の使い方の選択肢を広げようというのが政府の方針ということなのかもしれません。

しかし、モデル就業規則改定後の18年10月にリクルートキャリアが公表した企業の意識調査によると、副業を容認あるいは推進している企業は28.8%にとどまる一方、禁止している企業は依然として71.2%に及んでいるようです。兼業・副業を禁止している理由としては「社員の長時間労働・過重労働を助長するため」が44.8%と最も高く、次いで「労働時間の管理・把握が困難なため」が37.9%となっています。まだまだ副業解禁が浸透しているとは言い難い状況です。

■法定労働時間を超えた勤務は割増賃金に

ここから先は私見ですが、副業の奨励が浸透しない理由の一つは労働基準法38条の解釈にあるのではないかと思います。同条は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と規定しています。

例えば、甲社のA工場とB事務所での勤務がある場合にその時間を通算することは何ら問題ありません。しかし、「『事業場を異にする場合』とは事業主を異にする場合をも含む」という1948年(昭和23年)の労働基準局長の通達がいまだに生きており、前述のモデル就業規則とセットで公表された厚労省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」もこの立場を採っています。

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