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1日60人 国籍無いまま生まれるロヒンギャ難民の子

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/4/17

ナショナルジオグラフィック日本版

生後25日のマムヌル。バングラデシュのコックス・バザールにある世界最大の難民キャンプで毎日60人生まれてくる新生児の1人(PHOTOGRAPH BY TURJOY CHOWDHURY)

バングラデシュにある世界最大規模の難民キャンプ。多いときで日に60人もの赤ちゃんが誕生するという。2017年2月、この地を訪れたバングラデシュ人の写真家トゥルジョイ・チョードリ氏の写真とともに、当時の状況を振り返ってみよう。

◇  ◇  ◇

チョードリ氏がキャンプを歩いていると、小屋の中から赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。中にいたのは、赤い毛布にくるまれた生後1日のロヒンギャの女の子だ。母親は子どもを毛布から出して撮影させてくれた。

チョードリ氏は、どこかで見たインスタグラム写真のように、赤ちゃんを真上から撮ることにした。難民としてではなく、普通の赤ちゃんとして撮影するためだ。「その無邪気な目を見た瞬間、『いったい何が起こっているのか』と思いました。この子は、政治とは何の関係もないのです」とチョードリ氏は話す。

写真が撮影されたのは、バングラデシュのコックス・バザール難民キャンプ。ここには、ミャンマーから逃れてきた少数民族ロヒンギャの人々が大量に暮らす。そして、ここで生まれたロヒンギャの赤ん坊は、バングラデシュ人ともミャンマー人とも見なされない宙に浮いた状態から人生を始めることになる。どちらの国もロヒンギャを自国民と認めていないため、チョードリが見かけた赤ちゃんも、この難民キャンプで毎日60人ほど誕生している無国籍者の1人となる。

まだ名前のない生後15日の赤ちゃん。ミャンマーからもバングラデシュからも国籍を認められないロヒンギャの赤ちゃんは、生まれながらにして無国籍だ(PHOTOGRAPH BY TURJOY CHOWDHURY)

ロヒンギャの人々は数十年にわたって隣国ミャンマーで迫害を受けてきた。15世紀からそこに住んでいると主張しているにもかかわらず、ミャンマーでは市民権もはく奪され、不法滞在者と見なされる。1982年、ミャンマーは国が認める135の民族からロヒンギャを排除するという法律を制定し、出生時から市民権をはく奪したのだ。

2017年8月、この少数民族に対する軍事作戦が大規模な難民危機に発展した。それ以来、73万6000人を超えるロヒンギャがバングラデシュに逃げ込んだが、そこでも正式な難民とは扱われていない。移動は制限され、教育や公的サービスも受けられず、市民権も得ることができない。

最初の写真を撮ってからも、チョードリ氏は混雑したキャンプで赤ちゃんを探しては、「Born Refugee」(生まれながらの難民)と名づけたプロジェクトの撮影を続けている。

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