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『カツベン!』の周防監督 平成に邦画が復活した理由

日経エンタテインメント!

2019/4/17

「だから産業革命じゃないですけど、映画史の中で平成は大きな転換点。サイレントからトーキー、モノクロからカラーへの転換に匹敵する、アナログからデジタルへという変革期だったと思います」

『カツベン!』 広義での時代劇に初挑戦した新作。「他人の脚本に身を委ねるのも、東映とも、初めて。僕にとって冒険の映画です」と周防監督。日本映画黎明期の青春群像を恋あり笑いありアクションありで活写する(東映配給、12月公開)(C)2019「カツベン!」製作委員会

新元号のもと、12月には新作『カツベン!』が公開される。映画にまだ音がなかった大正時代、セリフを発したり、物語を解説したりして観客を引き込む日本にだけ存在した「活動弁士」を夢見た青年を描いた、青春活劇だ。

「僕はあまのじゃくな性格で、野球なら強いチームを応援してもしょうがないと思うタイプ(笑)。映画の企画も、みんなが注目してないものの中に面白いものを発見すると、「絶対やりたい」と思ってきたんです。『カツベン!』もそう。これは『それでもボクはやってない』からずっと一緒にやってきて、この作品では監督補を務めた片島章三さんのオリジナル企画です。映画会社に『客が入るわけない』と思われたのかなかなか成立しなかった。

でも彼の書いた脚本は面白いんですよ。だったら、やりたい、お客さんも入れたい。幸いにも東映が乗ってくれました。日本映画の青春時代に、活動弁士に憧れた若者の青春を重ねたエンタテインメント作品。映画に携わる者だけでなく、一度でも映画を見たことがある人みんなに知ってほしい大正時代の映画青春物語です。

そして『カツベン!』は、これまでずっとフィルムで撮ってきた僕が、初めてデジタルに挑戦した作品でもあります。やってみて思ったのは、こういう時代劇こそデジタルを必要としているのかなということ。例えば、大正時代の道はまだ土だったけど、今は土の地面を探すのが大変でしょ。カメラを向ければ、当時なかったものだらけ。だけどCGを使えば余計なものは消せるし、欲しいものは付け足せる。こういう時代になったんだなあと思いました」

■今足りないのは「多様性」

シネコンの出現、デジタル化などの大変革を乗り越えて復興した日本映画。周防監督は今の日本映画界を、どのように見ているのか。

「同じような映画が多くないか?とは思いますね。成功体験を基に似たような映画が量産されていて、唯一、是枝(裕和)さんが違う方向を向きながら商業的にも成功を収めている。これだけ観客が日本映画を見るようになったんだから、もっといろんな種類の映画が作られていいだろうと思います。特に大人向けの作品。

オリジナルストーリーも少ないですよね。原作があったほうが出資者も安心できるからだと思うけど、同じようなものばかり作ってもつまんないじゃん!…って思う人が増えてほしい(笑)。それで失敗しても、失敗を許せるような業界であってほしいなと思いますね」

(ライター 泊貴洋)

[日経エンタテインメント! 2019年4月号の記事を再構成]

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