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『カツベン!』の周防監督 平成に邦画が復活した理由

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NIKKEI STYLE

平成元年(1989年)に一般映画デビューし、『シコふんじゃった。』『Shall we ダンス?』などの大ヒット作を生んできた周防正行監督。平成の時代、日本映画はどう変わったのか。監督人生で感じた思いを振り返ってくれた。

ピンク映画を経て、89年に本木雅弘主演『ファンシイダンス』で一般映画デビュー。92年には学生相撲を題材にした『シコふんじゃった。』で日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した周防正行監督。96年の『Shall we ダンス?』は全米公開され、ハリウッドリメイク版も製作される快挙を成し遂げた。以降も『それでもボクはやってない』(07年)、『舞妓はレディ』(14年)などの話題作を生んだ。

「僕がデビューした頃は、日本映画の状況が、今とはまったく違いましたね。当時僕は『良い映画はあるけど、面白くて楽しい映画がない』という言い方をしていました。良くできたエンタテインメント映画が本当になかった。興行成績も今からすると信じられないぐらい落ち込んでいて、洋画に太刀打ちできない。伊丹(十三監督/『マルサの女』など)さんが『ハリウッドの娯楽作品に負けない日本映画を』と、孤軍奮闘している状況でした。撮影所システムも崩壊していて、どうやったら監督になれるのかも分からない。新人監督が1人デビューするだけで、『事件』になった時代でしたね。

そういうなかで、ようやく企画が通った一般映画デビュー作が『ファンシイダンス』でした。でも僕は『少女マンガ原作、アイドル主演』となって、『もうダメだ』と思ったんですよ。『またいつものつまんない日本映画のパターンだ』と思われると。実際に仕事をしたら本木さんは素晴らしかったので良かったけど、公開館数は少なく、興行的な成功はハナから見込めない。だから前売りも自分で1000枚近く売りました。その頃、知り合いのパーティーで『券を買ってください』と言ったら、ある女性に『日本映画になんかお金払うわけないじゃない!』と罵声を浴びせられたんですよ。まるで僕がつまらない日本映画の代表みたいに(笑)。それぐらい、当時の状況はひどかった」

デジタルとシネコンの出現

『ファンシイダンス』で評価を受けた周防監督。しかし親交の深い伊丹監督からは「内に閉じていて、良い意味でも悪い意味でも日本映画」との批評を受けたという。

「『メジャーな娯楽作品として勝負する映画じゃない。こういう映画を作ってたら洋画に負けちゃうね』ってことですよ。そりゃあ、そうですよ。そういうつもりで作ってないから(笑)。でも悔しくて、『だったら、誰にでも分かる王道の、笑える娯楽映画を作ってやる』と企画したのが、『シコふんじゃった。』でした。

学生相撲を題材にしたのは、僕が見て面白かったし、驚いたから。学生とはいえ体の大きいセミプロが相撲していると思っていたら、その日初めてまわしを締めた学生が、国技館の土俵に上がっていたんです。しかも一番弱いリーグを見ると、笑っちゃうような相撲が展開されている。なぜ素人を土俵に上げてまで相撲部を続けるのかと聞くと、OBが『自分たちの帰る場所がなくなるから』と言う。そういう日本的な考え方が背景にあるところも面白いと思いました。それですぐに相撲版『がんばれ!ベアーズ』にしようという発想になり、『シコふんじゃった。』というタイトルもすぐに浮かんだんだけど、面白いタイトルと言ってくれたのは広告業界の人くらいでしたね。映画業界の人たちには『はっけよい!』がいいとか反対されて。『だからダメなんだよ! 日本映画は』と思いながら作ったんです」

「その次の『Shall we ダンス?』も、社交ダンスの企画と言った瞬間に、え? そんなの当たるわけないじゃんという反応でした。だけどその映画がヒットして、(主演の草刈民代と)結婚もしたので生活も変わりました(笑)。アメリカをはじめ各国で公開されて、海外の人も面白がってくれましたね。『世界に通用する映画を』と大上段に構えず、自分の興味の範囲で作っていても、通じるものは通じるんだなと思いました」

『Shall we ダンス?』は日本映画復活ののろしに。しかし『それでもボクはやってない』を撮るまで、11年もの空白期間に入る。

「何本か企画はあったけど、うまく映画にならなかったという感じです。その間に、日本映画は大きく変わった気がしますね。

まずは、シネコンの出現です。それまで映画館は、東宝の映画なら東宝専門、東映の映画なら東映専門と分かれていたんです。でもシネコンは、客を呼べる映画なら上映する。何でもアリになったことで、『カメラを止めるな!』のようなインディーズ映画が広がる土壌もできました。そうしたなか、若者の興味が内向きになったのか、日本映画が本当に面白くなったのか、邦画の興行成績が洋画に負けないようになった。これは僕が監督になった頃には、まったく想像もできないことでした。

大手映画館チェーンがフィルム上映をやめたことも大きな変化です。例えば、それまでは200館公開ならその分のプリントが必要ですから、何本も焼き増すことになり、それが現像所とフィルム会社の大きな利益になっていた。だからこそ撮影現場で使うフィルム代はある程度サービスしてもらえた。でもフィルム上映がなくなったら、現像所もフィルム会社もそうはいかない。結果、フィルムはあらゆる面でコストがかさみ、デジタル化が一層進みました。

例えフィルムで撮ったとしても、編集はパソコンに取り込んでやるし、ネガを編集する必要もなくなって、ネガの編集者も仕事がなくなった。照明技師もフィルム時代のデリケートな技術を必要とされなくなり、『後でなんとかなりますから』と、『とにかく映っていれば良い』程度の仕事しか求められない。照明機材も変わりました。LEDのおかげで軽量、コンパクトになった上、光の強さや色味も自由自在に変えられる。照明部だけでなく、力仕事が多かった映画の現場に、女性スタッフも入りやすくなった。それも昭和と比べたら、大変化ですよ。

デジタル化の影響で、あらゆる面でプロとアマの垣根が低くなり、例えばiPhoneでも撮れるから、誰でもがすぐ監督になれる。かつては、ある程度の勉強と準備とお金が必要だったし、発表の場も限られていたけど今はネットもある」

「だから産業革命じゃないですけど、映画史の中で平成は大きな転換点。サイレントからトーキー、モノクロからカラーへの転換に匹敵する、アナログからデジタルへという変革期だったと思います」

新元号のもと、12月には新作『カツベン!』が公開される。映画にまだ音がなかった大正時代、セリフを発したり、物語を解説したりして観客を引き込む日本にだけ存在した「活動弁士」を夢見た青年を描いた、青春活劇だ。

「僕はあまのじゃくな性格で、野球なら強いチームを応援してもしょうがないと思うタイプ(笑)。映画の企画も、みんなが注目してないものの中に面白いものを発見すると、「絶対やりたい」と思ってきたんです。『カツベン!』もそう。これは『それでもボクはやってない』からずっと一緒にやってきて、この作品では監督補を務めた片島章三さんのオリジナル企画です。映画会社に『客が入るわけない』と思われたのかなかなか成立しなかった。

でも彼の書いた脚本は面白いんですよ。だったら、やりたい、お客さんも入れたい。幸いにも東映が乗ってくれました。日本映画の青春時代に、活動弁士に憧れた若者の青春を重ねたエンタテインメント作品。映画に携わる者だけでなく、一度でも映画を見たことがある人みんなに知ってほしい大正時代の映画青春物語です。

そして『カツベン!』は、これまでずっとフィルムで撮ってきた僕が、初めてデジタルに挑戦した作品でもあります。やってみて思ったのは、こういう時代劇こそデジタルを必要としているのかなということ。例えば、大正時代の道はまだ土だったけど、今は土の地面を探すのが大変でしょ。カメラを向ければ、当時なかったものだらけ。だけどCGを使えば余計なものは消せるし、欲しいものは付け足せる。こういう時代になったんだなあと思いました」

今足りないのは「多様性」

シネコンの出現、デジタル化などの大変革を乗り越えて復興した日本映画。周防監督は今の日本映画界を、どのように見ているのか。

「同じような映画が多くないか?とは思いますね。成功体験を基に似たような映画が量産されていて、唯一、是枝(裕和)さんが違う方向を向きながら商業的にも成功を収めている。これだけ観客が日本映画を見るようになったんだから、もっといろんな種類の映画が作られていいだろうと思います。特に大人向けの作品。

オリジナルストーリーも少ないですよね。原作があったほうが出資者も安心できるからだと思うけど、同じようなものばかり作ってもつまんないじゃん!…って思う人が増えてほしい(笑)。それで失敗しても、失敗を許せるような業界であってほしいなと思いますね」

(ライター 泊貴洋)

[日経エンタテインメント! 2019年4月号の記事を再構成]

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