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低金利・減税が誘因 住宅ローン残高8年連続最高更新

2019/4/9

家計が抱える住宅ローン残高が拡大している。3月下旬発表の日銀資金循環統計によると、2018年末の残高は約206兆円。現行基準になってから8年連続で過去最高を更新した。

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ローン残高が膨らむ一因は、1人当たりの借入額が増えているからだ。じぶん銀行によると「1億円超の借り入れを望む声が月十数件は寄せられる」という。同行は18年末、住宅ローンの融資上限額を1億円から2億円へ引き上げた。都心マンションなどで高額物件が増え、上限1億円では足りないとの声が目立ち始めていたからだ。

楽天銀行も18年2月、一部の住宅ローンで上限を2億円に上げるなど、同様の動きが広がっている。

頭金をほとんど入れず、住宅価格の100%近い借り入れをして購入する人も増えている。リクルート住まいカンパニーが3月に発表した首都圏新築マンション契約者調査によると、18年の自己資金比率平均は18.8%。01年の調査開始以来、初めて20%を割った。

住宅購入者の住宅ローン依存が高まるのと同時に、すでに借りている人の残高も減りにくい状態だ。「住宅ローン減税の基準となる1%を下回るローン金利が増え、『逆金利』状態なので返済を急がない人が目立つ」(都内大手行)

住宅ローン減税は年末残高の1%が税額控除される。現在の控除上限額は年間40万円なので、10年間で最大400万円の減税が受けられる。住宅ローンの変動型金利は1%未満の商品が多い。減税メリットをフルに受けるために繰り上げ返済を急がず、残高の減少速度が鈍る構図だ。

一方、家計では現預金も積み上がっている。大和総研金融調査部の森駿介研究員は「特に住宅ローンを多く抱える40歳代以下の若い世帯で、資産に占める預金比率が上がった」と話す。万一に備え、ある程度のお金を手元に残しておきたいという考え方だ。

ローンが増えても手元のお金も増えれば、家計のバランスシートが悪化するわけではない。ただ、金利の上昇があれば状況は変わる。住宅金融支援機構などによれば、低金利の変動型を選ぶ人の比率が足元で高まっている。膨らむローン残高は、家計が抱える金利上昇リスクを増大させる。

構造的な問題はもう一つある。大和総研の森氏は「負債が多いと、万が一のために現金や預金などすぐに使える流動性資産を選ぶ傾向が強まる」と指摘。その結果、「若年層で投資などへ回すお金が細り、将来に向けた資産形成が進まないのが懸念材料」と話す。

現在の低金利はしばらく続く見込みだ。さらに10月に消費増税があれば、ローン減税はさらに拡充される。住宅ローン利用の誘因は増える一方だが、安定した家計運営のためには、目先の利益にとらわれず、適正な借入額を考える姿勢が欠かせない。

(堀大介)

[日本経済新聞朝刊2019年4月6日付]

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