平成視聴率トップ 『半沢直樹』と『平成教育委員会』
平成のテレビ人気番組を、番組の最高視聴率ランキングから振り返ってみた。 ドラマの1位は『半沢直樹』の最終回で42.2%、バラエティーの1位は『平成教育委員会』で司会のビートたけしが交通事故から復帰した日の35.6%だった。
まずは連続ドラマの最高視聴率ランキングから見ていこう。平成の視聴率No.1ドラマは、2013年(平成25年)の『半沢直樹』だった。いまや著作が映像化に引っ張りだこの、池井戸潤の小説が原作。バブル期に大手銀行に入行した主人公の苦悩と戦いを描いた作品で、男臭いストーリーながら女性視聴者も取り込み、初回19.4%でスタートした視聴率は右肩上がりで上昇、最終回で42.2%を記録した。
平成後期のヒット作という意味では、3位の『家政婦のミタ』も当てはまる。常に無表情のロボットのような家政婦が主人公のホームドラマで、こちらも最終回で40.0%を獲得した。ランキングでは、2010年代の作品で上位に入ったのはこの2本のみ。しかし「テレビ離れ」が進むなかで、これだけの結果を出したということは、社会現象的に多くの人の心をつかむ爆発力がドラマにはあるという証明になった。
2位には、木村拓哉と常盤貴子主演の『ビューティフルライフ』がランクイン。美容師と車椅子生活を送る図書館司書のラブストーリーで、最終回視聴率で41.3%を記録した。木村はこのほか、航空会社を舞台にした青春ドラマ『GOOD LUCK!!』(5位)、型破りな検察官を演じた『HERO』(7位)、山口智子と共演した『ロングバケーション』(8位)と、主演作がトップ10内だけでも4作品入っており、平成を代表する俳優の1人と言えるだろう。
4位には、フジテレビの"月9"枠で放送された、江口洋介主演のホームドラマ『ひとつ屋根の下』が入った。"月9"作品はほかにも、浅野温子と武田鉄矢が主演した『101回目のプロポーズ』(8位)や『ロングバケーション』など、トップ30の中に13本入っており、圧倒的な力で時代をけん引したことが分かる。
安達祐実主演の『家なき子』は、37.2%で6位にランクインした。貧しい家で育った少女が、家庭内暴力や理不尽な環境に耐え、困難に立ち向かっていく物語。「同情するなら金をくれ!」というセリフは流行語大賞に選ばれた。
10位には、関西テレビ制作の『GTO』が入った。反町隆史ふんする元暴走族の高校教師が活躍する学園ドラマ。トップ10の中では唯一、マンガ原作ものとなった。
オリジナル作が多数ヒット
現在は小説やマンガの実写化が盛んだが、平成の半ばあたりまではオリジナル作品が多い。その観点で脚本家に注目すると、18年にNHK連続テレビ小説『半分、青い。』を手掛けた北川悦吏子は、『ビューティフルライフ』や『ロングバケーション』のほか、22位の『素顔のままで』などを担当。今年1月期に放送された『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日系)の遊川和彦は、『家政婦のミタ』のほか、『魔女の条件』が30位に入っている。『ひとつ屋根の下』や『家なき子』、『101回目のプロポーズ』の野島伸司は、16位の『高校教師』や17位の『愛という名のもとに』でも世間の話題をさらった。
昨年2本の連ドラ(地上波)を担当した井上由美子は『GOOD LUCK!!』、平均視聴率21.4%を獲得した朝ドラ『まんぷく』の福田靖は『HERO』、昨年大河ドラマ『西郷どん』を担当した中園ミホは11位の『やまとなでしこ』と、現在も引く手あまたの脚本家たちは、実力が問われるオリジナル作でヒットの実績を上げてきた。今はタイムシフトや配信サービスの充実により、簡単には高視聴率は出ないが、『半沢直樹』や『家政婦のミタ』のような例もあり、世間が沸く作品が誕生する可能性はまだまだあるだろう。
バラエティでは、『平成教育委員会』が1位となった。35.6%を記録したのは司会のビートたけしが、交通事故から復帰した日だった。このほか、5位に『マジカル頭脳パワー!!』、9位に『クイズ!年の差なんて』が入っており、平成の初期はクイズ番組が国民的な支持を得た時代だった。
2位は現在も人気の『行列のできる法律相談所』。『24時間テレビ』の時間内でゴールできなかった、チャリティーマラソンランナーの萩本欽一の走る姿を引き続き生中継して、35.3%を獲得した。
3位は『SMAP×SMAP』という結果に。稲垣吾郎が復帰した回で34.2%を記録した。
そして『めちゃ×2イケてるッ!』が4位にランクイン。人気コーナー「単位上等!爆走数取団」に、モデルとなった氣志團が登場した日に33.2%を獲得した。
ランキング内で現在も続く番組は『行列』のみ。バラエティ界は新しい時代に移行しようとしている。
(ライター 内藤悦子)
[日経エンタテインメント! 2019年4月号の記事を再構成]
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