五輪で「東京砂漠」防げ 今夏から水確保対策始まる

1964年の渇水時の小河内ダム(東京都奥多摩町)=都水道局提供
1964年の渇水時の小河内ダム(東京都奥多摩町)=都水道局提供

国と首都圏1都6県などが、2020年東京五輪・パラリンピック期間中も水を安定供給するための対策に乗り出した。1964年の東京五輪では開催直前の夏が渇水となり、最大50%の給水制限を実施。近年も猛暑や少雨で取水制限が発生していることから、今夏からダムの水を温存するなどの取り組みを始める。国内外から多数の人が集まる大会が成功するよう、水の面から支える。

対策は関東地方整備局や水資源機構など関係機関で構成する東京2020オリンピック・パラリンピック渇水対策協議会で進める。行動計画は大会までに準備・実施するフェーズ1から、大会中に水不足が懸念されたり、実際に発生したりした場合のフェーズ2~5を設定。利根川・荒川、多摩川、相模川の各水系で水源を確保し、各都県が水供給を止めないための活動を展開する。

水確保の大きな柱は、ダムの水の温存だ。ダムは通常、7月からの洪水期に備え、河川が氾濫しないよう雨水をため込む「洪水調節容量」を設けるため、水位を下げる。それを首都圏7カ所のダムは、洪水にならない範囲で例年より水を多くためたままにする。水位を下げる必要があるダムの維持修繕工事も、実施を大会終了後に延期する。

会場のある東京都や埼玉、千葉両県の水源になっている利根川上流のダムの水を、できるだけ使わないための手も打つ。利根川から分かれる江戸川の水量確保に、霞ケ浦などの水を北千葉導水路を通じて供給。矢木沢ダムなどの貯水量を極力減らさないようにする。

それでも断水などの恐れが出た場合には、発電用に矢木沢ダムの水を使っている東京電力ホールディングスに、飲料用などに回してもらうよう要請する方針だ。

同整備局の室永武司広域水管理官は「世界が注目するイベントで取水・給水制限は出したくない。考えられることは事前に手を打つ」と話す。水源確保策によりダムの水を約2割温存する想定。

念頭にあるのは前回の東京五輪だ。当時、東京は水源を多摩川に依存。人口急増や経済発展で水道使用量が増加し、しばしば渇水の危機に見舞われた。五輪直前の1964年夏は昼間も断水し「東京砂漠」といわれた。

国などはこれまでも、利根川や荒川、多摩川を結んで水を融通できる仕組みを作り、上流のダムと中・下流の貯水池を整備してネットワーク化するなど、首都圏の水確保に取り組んできた。さらに19年度中に完成予定の八ツ場ダムが加われば、首都圏のダムの容量は64年の5.8倍に膨らむ。

最近は猛暑や少雨の一方、集中豪雨のような降り方が増え、安定的な水の確保が難しくなっている。16年に利根川水系で、17年には荒川水系で取水制限が実施されるなど、不安定な状況だ。「64年当時に比べ対策は進んだが、異常な少雨でも影響を減らせるよう準備する」(室永氏)。選手や観客が気兼ねなく水を使えるよう、あらゆる手を打つ。

(山岡亮)

■東京オリンピック渇水
1964年の東京は記録的な水不足で、7月10日から五輪直前の10月1日まで給水制限を実施。制限率は最大50%まで強化された。昼間も断水する厳しさで、自衛隊や警視庁なども応急給水に協力し、バケツを持った人が列をつくった。
家庭ではパン主体の食事となり、入浴や洗濯も制限。水を多く使う理髪店やクリーニング店などにも影響が出た。

[日本経済新聞朝刊2019年4月6日付]