「いきなり社長面接」で逸材 ミスマッチ防ぐ採用戦略『最高の組織』大賀康史氏

普通の雑談から人物像が浮かび上がる

最も重要な経営資源を選ぶ社長面接で大賀氏が応募者たちと交わすのは「普通の雑談」だという。志望動機に代表される、「お約束」的な質問はしない。近年の就職活動では面接での受け答えもかなり研究されていて、就活生は抜け目ない対応を見せる。想定問答が出回っているせいもあってか、やけにこなれた立ち回りが増えているという。しかし、予想が難しい雑談では志望者の実像が浮かび上がりやすい。

「魅力的な組織構造を用意しないと、長く働き続けてもらえない」と話す大賀康史氏

「ティール組織」は人事・組織論のホットテーマだ。コンサルティングファームの米マッキンゼー・アンド・カンパニー出身で、独立してエグゼクティブ・アドバイザー、コーチ、ファシリテーターを務めるフレデリック・ラルー氏の著書『ティール組織』(鈴木立哉訳、英治出版)から広まった。「ティール(teal)」とは、「青緑色」を指す。

旧来のピラミッド型組織とは異なり、メンバーが比較的フラットな立場で、互いに協力し合いながら、チームが自主経営的に事業を動かしていく点でティールは進化形の組織と呼ばれる。『最高の組織』ではティール型を評価しつつ、上下関係にないメンバーが「輪を描いている組織」を理想に挙げる。輪をまとめている求心力の源泉は「ミッションへの共感」だ。「会社に勤める」という労働意識よりも、「ミッションに参画する」という参加態度を働き手に期待している。

『ティール組織』には「大企業になじみにくい理想論」「日本企業には向かない」という批判もある。大賀氏が目指す「輪を描いている組織」も国内大企業の構造とは異なる。しかし、大賀氏は「常に新しいチャレンジが求められる、現代のビジネス環境では望ましい形態」とみる。「今や企業は『人を雇う』のではなく、『働く側に選んでもらう』という立場。魅力的な組織構造を用意しないと、長く働き続けてもらえない」(大賀氏)

働く側の意識が様変わりしつつあることも、組織構造の見直し機運を呼び込んでいるようだ。「今の若い層は肩書や役職、世間体などにあまりとらわれない傾向がある。むしろ、社会的意義や夢といった面での共感を重んじる。企業のありようも、そうしたまなざしを受け止めることが求められている」という。優れた才能を迎えるには、彼らが納得するような働きがいや企業ミッションを用意する必要がある時代になってきたとみられる。

「働く機会の提供」が企業の役割ではない

大きな企業がいきなり上下関係のない組織に移行するのは、現実味が乏しいだろう。だが、10人程度のチームであれば、「輪を描いている組織」に近い仕組みを実現しやすい。例えば、新規事業の立ち上げチームのような、前例にとらわれない提案が期待される組織体なら、むしろピラミッド構造よりティール組織のほうが向いていそうだ。「小グループのリーダーといった立場で、参画メンバーを選ぶ場合、カルチャーフィットやミッション共有を重視して人選するほうが目的をかなえやすくなる」と、大賀氏は身近なレベルからの導入をアドバイスする。

40歳を迎えた大賀氏は「40歳の自分は今しか存在しない。人生を振り返って、もったいなかったと後から悔いるような選択はしたくない。今の若い層にはそうした意識が広がっていて、企業の存在意義は『働く機会の提供』ではなくなりつつある」と言う。むしろ、働き手が共感できるミッションや、才能を発揮できる場の提供が企業の主な役割になっていくとみる。働き手の目指す夢の実現に寄り添うような立ち位置が異能をつなぎ留めるうえでも望ましいと指摘する。

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