「いきなり社長面接」で逸材 ミスマッチ防ぐ採用戦略『最高の組織』大賀康史氏

社長が最初に候補者をふるいにかける。写真はイメージ=PIXTA
社長が最初に候補者をふるいにかける。写真はイメージ=PIXTA

一般的な社員の採用手順では、幹部面接の後に社長面接が控える。でも、ビジネス書要約サイトを運営する「フライヤー」では、社長面接のほうが先だ。『最高の組織』(自由国民社)を書いた大賀康史最高経営責任者(CEO)は「評価が分かれそうな、飛び抜けて優れた才能を持つ異能の人を採用できる」と、「いきなりトップ面接」の意義を説く。採用と組織づくりの独創的な提案を語ってもらった。

「無難な人がパスしやすい」傾向に疑問

フライヤーの採用ステップは、多くの企業の「ほぼ逆」だ。最初に書類選考があるのは普通の企業と変わらないが、次がすぐ社長面接になるのは、極めて珍しい手法だろう。続いて取締役面接、一緒に働く仲間たちによる面接と進み、内定に至る。

トップ面接が早い段階に設定されている理由を、大賀氏は逸材を獲得しやすいことに加え、「通常の採用プロセスでは、欠点の少ない人材が通過する傾向がある」と説明する。入社後に騒ぎを起こさないような、常識的で無難な人がパスしやすくなるわけだ。

風変わりな応募者にフィルターをかけるような「安全志向の選考」を通った人たちは、社員を管理する立場から見れば面倒の少なそうな働き手だ。しかし、奇想の商品・サービスを生み出せるかどうかは別物だ。フライヤー式採用は、そつのない人よりも異才のイノベーターやゲームチェンジャーを招き入れる仕組みと映る。

大賀氏が早い段階で採用面接に臨む目的は、逸材を見いだすことだけではない。企業ミッションを体現しているCEOに引き合わせることによって、有望な志望者に同社のイメージをクリアーに伝えるという効果もありそうだ。在職者が知人を呼び込むリファラル採用も、信頼できる「人」をフックにした人材獲得の手法である。優れた人物が磁石のように魅力的な働き手を引きつける仕組みは、強い組織を育てるうえで極めて重要な競争力の源泉となっていきそうだ。

採用の基準もフライヤーは世間のセオリーと異なっている。大賀氏が掲げる優先順位は「カルチャーフィット>ポテンシャル>スキル」の順に高い。職場に根付いている価値観やミッション意識などとの相性や親和性を指す「カルチャーフィット」は大賀氏が重んじる点だ。

「カルチャーフィット」の高さを評価

従来、一般企業の採用では学歴や面接結果などを通してポテンシャルを見極めようとする傾向が強かった。しかし、大賀氏は「会社のカルチャーに合っていなければ、その組織に長期にわたってコミットしてもらうことは難しい」とみる。フライヤーが求めているのは、出勤してから退社するまでの時間と労働力を勤め先に「切り売り」するような働き方ではない。「もう、出世と成功に縛られた人生を送ることで幸せを感じる時代ではなくなった」(大賀氏)

企業を取り巻くステークホルダー(関係者)の位置づけでも働き手を重んじる。重要なほうから順に「働き手>顧客>株主、債権者、取引先」と、大賀氏は優先順位を示す。日本の企業では、内心はともかく「社員が第一」と言い切る経営者はそう多くないだろう。働き手をトップに据えた並び順を示すことは「お客様軽視」のように見えがちだからだ。

しかし、大賀氏は「従業員が楽しくできることを仕事の中核に据えると、質の高いサービスができ、熱量のあるサービスを作れる」と説く。単に働き手を猫かわいがりしているのではなく、魅力的な商品・サービスを生み出し、企業の競争力を高めるうえで、働き手のアイデア・創意を引き出すことが欠かせないというわけだ。「これからの経営資源は人、人、人」と言い切る。

ビジネス書などの書評を紹介