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父が娘に語る経済の話 シンプルな言葉で本質に迫る 紀伊国屋書店大手町ビル店

2019/4/5

メインの通路に置いた平台に4列で展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回はいつもの定点観測に戻る。訪れたのは紀伊国屋書店大手町ビル店だ。『FACTFULNESS』の売り上げが突出している状況は4月に入っても変わらない。だが、2~3月の新刊の中から動きのいい本がいくつか出てきてもいる。そんな中、書店員が注目したのは、財務大臣まで務めたギリシャの経済学者が娘に向かって経済について語った本だった。

■著者はギリシャ経済危機当時の財務大臣

その本はヤニス・バルファキス『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(関美和訳、ダイヤモンド社)。バルファキス氏はアテネ大学の経済学教授で、ギリシャの経済危機のとき財務大臣を務め、欧州連合(EU)から突きつけられた緊縮財政策に対して大幅な債務帳消しを主張し、話題になった。このためその1年前に書かれた本書は注目を集め、欧州各国語に翻訳され、仏独、スペインなどでベストセラーになったという。

著者は経済学者だが、その主張は反経済学的といっていい。プロローグで著者は語る。「私は昔から、経済学者だけに経済をまかせておいてはいけないと思っていた」。「日替わりのニュースについて意見を交わすのに忙しく、本当に見るべきものが見えなくなっている」ともいう。そして真剣に考えなければいけないのは資本主義についてだと受け止め、なぜ「格差」があるのかという論点から娘に向かって語りかけ、経済の話を始める。

■文明史的視点でビットコインまで語る

格差の議論は1万年前にさかのぼり、農耕の始まりが経済を生んだこと、農作物の余剰が文字、債務、通貨、国家、官僚制、軍隊、宗教といったものを生み出したことが語られる。難しい言葉を使わず文明史的な大きな視野で語っていく経済の話は、やがて市場の話になり、利益と借金、金融、労働力とマネーとたどって現代に至り、テクノロジーやビットコイン、環境問題と今日的なテーマへと切り込んでいく。

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