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100メートル9秒3超えも 人類最速への道は四足歩行?

2019/4/9

グリコーゲンは普通に走ると30キロメートルすぎで枯渇するため、選手は温存を図らなくてはなりません。しかし暑熱で体温が上がるとグリコーゲンは余計に燃えてしまいます。杉田氏は「高温多湿の東京五輪では、体をいかに冷やすかが最大のテーマ」と指摘しています。

■杉田正明・日本体育大学教授「マラソン練習、朝食前に」

マラソンを速く走るには、何が必要でしょうか。バイオメカニクス(生体工学)を研究する日本体育大学の杉田正明教授に聞きました。

――マラソンの世界新記録を出す条件は何でしょう。

杉田正明・日本体育大学教授

「限られた人体のエネルギーをいかに配分するかが大切なポイントだ。中でも長い距離を速く走るには、筋肉を動かす糖分の一種であるグリコーゲンが最も貴重なエネルギー源となる。脂肪やたんぱく質に比べてエネルギーへの変換効率が良く、クルマで言えばハイオク燃料のようなものだ。しかし人体がたくわえているグリコーゲンはめいっぱい走ると約30キロメートル過ぎで切れてしまう。脂肪やたんぱく質を燃やしながら、いかにグリコーゲンを保持し続けるかが勝負の分かれ目だ」

――どうすればグリコーゲンを節約できるのでしょう。

「たとえばマラソン選手は朝の練習前には食事をとらない。体は糖分を頼れなくなり、体にたくわえた脂肪を燃やすようになる。そして練習を繰り返せば脂肪の燃焼効率がよくなり、結果的にグリコーゲンが枯渇しにくくなる。朝は食べないで、空腹のまま走るのが合理的だ。市民ランナーの練習や一般の人のダイエット対策としても有効だろう」

――東京五輪で新記録も期待できますか。

「問題は東京の暑さだろう。グリコーゲンは、体温が上がるほど、消耗が激しくなるからだ。したがって体温の上昇を抑える方策が重要になる。給水時に氷などを摂取したり、走行中に頭から冷水をかぶったりするなど、体を冷やす最適な方法を研究中だ」

――マラソンはどのくらいまで新記録が可能なのですか。

「従来の記録更新のペースが続けば(現在の2時間1分39秒から)1時間50分くらいまで縮められるとみている。エネルギー効率のよい飲料や、弾むように走れるシューズの開発なども記録更新を後押しするだろう」

――普通の人にも応用できることはありますか。

「二足走行というのは長距離を走るのに適している。一定の距離を早歩きするよりは小走りしたほうが酸素の消費量が少なくて済み、エネルギー効率が良い。日常の場でも無理して早歩きするより、ゆっくり走ったほうが軽やかに移動できるだろう」

(高橋元気)

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