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女性CEOの8割が運動部系 米国学生スポーツの公平 ドーム社長 安田秀一 学生スポーツの機会均等(上)

2019/4/10

米国で補助金などをもらっている学校は、入学者数の男女比と、運動部に投じる予算、運動部で活動する生徒数などの男女比を同じにしなければならないわけです。前回(「高校生アスリート、世界に出よう NCAAにチャンス」)、前々回(「米国進学、アメフト最高峰へ 日本の高校生が開いた道」)のコラムでも紹介したように、全米大学体育協会(NCAA)所属の大学運動部の学生は充実した設備や学業支援、奨学金制度など恵まれた環境のもとで競技生活を送ることができますが、そこに性別による差別はありません。

米国の大学ではアメフトで稼いだ資金が平等に配分される(2018年11月)=AP

米国はアメリカンフットボールが圧倒的な人気を誇ります。そもそも男性のスポーツとされるアメフトですが、放映権やチケットによる大学の「稼ぎ頭」でもあります。アメフトで稼いだ資金がタイトルナインによって、女性スポーツにも平等に配分される仕組みができています。その結果、女子はサッカーを中心にアメフト以外のスポーツが男子よりも手厚くなり、その環境は著しい改善をみせています。学校が自主的に改善に取り組むような法律を制定し、時間をかけて、高校や大学での女子のスポーツへの参画率を高めてきました。現在では高校も大学も、男女のスポーツへの参加率はほぼ同じです。

■リーダーシップや協調性など学ぶ

米国の女性CEOの8割は高校や大学時代に運動部に所属していたというデータがあります。ですので、米国でタイトルナインは女性が社会で活躍するひとつの基盤になっていると考えられています。

なぜ、そうなったのでしょうか。日本の感覚では理解しにくいかもしれません。米国ではスポーツは教育に資するというコンセンサスがあることが重要なポイントです。チームや自分自身を強くするために何が必要かを考え、緻密な計画や作戦を立てる。仲間たちと同じ目的を共有し、協力して勝利を目指す。リーダーシップや協調性、戦略的な考え方などスポーツで学ぶことは、卒業後の社会生活に備えた訓練とも考えられます。スポーツはリーダーシップや協調性、戦略眼を兼ね備えた優秀な学生を育てるために重要なツールなのです。だから、大学は運動部を大学の正規の活動と位置付け、そこに投資を惜しみませんし、学生もそんな意欲と目標を持ってスポーツに参画します。

となれば、スポーツを通じて学び、成長する機会に男女で差があるとすれば、それは平等の理念に反します。その差を生み出す原因を排除する法律を作って、根元から正していこうとするのが米国のやり方です。

日本では男女の機会を均等にするために、会社など組織の役員などに女性を増やすことを求めます。出口で数字を合わせて対処しようとするだけで、役員数に差が生じる「原因」に関しては有効な手を打てていません。というかビジョンも深い思考も感じられません。まったく対照的なアプローチだと感じます。

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(後編「日本の大学運動部は男性ばかり? 女性の成長機会奪う」も併せてお読みください)

安田秀一
1969年東京都生まれ。92年法政大文学部卒、三菱商事に入社。96年同社を退社し、ドーム創業。98年に米アンダーアーマーと日本の総代理店契約を結んだ。現在は同社代表取締役。アメリカンフットボールは法政二高時代から始め、キャプテンとして同校を全国ベスト8に導く。大学ではアメフト部主将として常勝の日大に勝利し、大学全日本選抜チームの主将に就く。2016年から18年春まで法政大アメフト部の監督(後に総監督)として同部の改革を指揮した。18年春までスポーツ庁の「日本版NCAA創設に向けた学産官連携協議会」の委員を務めたほか、筑波大の客員教授として同大の運動部改革にも携わっている。

(「SPORTSデモクラシー」は毎月掲載します)

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