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VIPが認めるカリスマ通訳者 伝わる技術の磨き方

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NIKKEI STYLE

日経doors

カリスマと呼ばれる同時通訳者・関谷英里子さん。元米国副大統領アル・ゴア氏、米フェイスブックの最高経営責任者マーク・ザッカーバーグ氏、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世など世界の最重要人物(VIP)たちの同時通訳を務めたことでも知られている。いかにして輝かしいキャリアを歩むことができたのか。日経doorsの連載コラムを持つライターのニシブマリエがインタビューから得られた「学びのお品書き」からひもといていく。

◇  ◇  ◇

同時通訳者・関谷さんは、そうそうたる著名人の同時通訳という経験だけでも十分かっこいいのだが、2014年に休業し、スタンフォード大学への留学のためにキャリアを一時停止させるなど思い切った行動に。現在はサンフランシスコにお住まいとのことだが、一時帰国のタイミングで関谷さんにラブレターを送ったところ、快くインタビューに応じていただけた。

関谷英里子さんが伝授する「学びのお品書き」


・環境の変化によって「努力の習慣化」ができる
・英語は、語彙の豊富さより「言葉選び」が重要
・最悪なケースは、準備をすれば最悪じゃなくなる
・目標は、年に一つだけ
・自分の「気が済む」ための選択を

英国留学時代はトイレで勉強

ニシブマリエ(以下、マリエ):実は、関谷さんはかつて私が嫉妬していた対象なんです。私は高校まで山奥でドメスティックに生きてきたので、大学で上京して初めて出会った「キコクシジョ」という人たちがまぶしくて、羨ましくて、直視できなかったんです。関谷さんは小学校の時、英国にいらっしゃったんですよね?

関谷英里子さん(以下、関谷):そうですね、6歳から2年半くらい。子どもだから確かに吸収は早かったけど、当時は「一緒に遊ぼう」みたいな英語しか話していなかったです。

マリエ:9歳で日本に帰ってきて、英語を維持するための、いわゆるバイリンガル教育は受けていたんですか?

関谷:全然。小学校だから当時は英語の授業もないし、特に何もやっていなかったです。むしろ日本語に苦労しました。みんなが漢字を勉強し始める頃、私は英語圏にいたので。よく覚えているのは、テストの時に「港」という字がどうしても思い出せなかったこと。

マリエ:確かに「港」は難解ですよね。でも、中学から始まった科目としての英語には自信があったんじゃないですか?

関谷:確かに、初めのうちは楽勝なんです。でも、中学2~3年になってくると、周りの優秀な子たちのほうが良い点数を取るようになっていって。英語の音は分かるのに、スペルが分からない。これはちゃんと勉強しないといけないぞと焦りました。

マリエ:英国帰りの身としては、ちょっと悔しいですよね。

関谷:そうそう、これは経験に甘えてちゃダメだなと。私は英語が得意だし、得意であり続けたい。だから、自分を追い込むために「海外の高校に行かせてくれ」と親を説得しました。

マリエ:大学留学ではなく、どうして高校だったんですか?

関谷:私が通っていた学校からは、毎年3~4人交換留学に行くんですよ。高校で留学する選択肢があるのを知ったら、それはやってみないとと思いました。

マリエ:環境が変わることへの不安はなかった?

関谷:むしろ、昔から変化が結構好きでしたね。英国でも2回引っ越しているし、思えば3年以上同じ場所にとどまったことがないかもしれない。

マリエ:なんか、それがすべてな気がしますよね。関谷さんを関谷さんたらしめているのは、「変化を恐れない姿勢」。

関谷:締めが早い(笑)。

マリエ:すみません、前のめり過ぎました(笑)。

最初は散々…でも、1年後には総代に!

マリエ:念願の英国での高校生活はどうでしたか?

関谷:散々でしたよ。私の英語はこんなにも通じないものなのかと。日本では熱心に勉強していたけど、中学までに習う英語は基礎的なことが多いので、現地のティーンエージャーの女の子たちに紛れたら全然ついていけないんですよ。「would」と「should」の使い分けも分からなくて。

マリエ:みんな教科書通りにしゃべってくれるわけじゃないですもんね。

関谷:むしろ、教科書英語は一つも出てこないレベルで。しかも寮制の女子高だったので、学校が世界のすべてなんですよ。授業についていくのも、友達をつくるのも大変でした。10代の頃って、独特の仲間意識があるじゃないですか。内輪ではやっている言い回しとか、関心事とか。

マリエ:中高生の頃の人間関係って、そもそも日本でも大変ですもんね。クラス内のヒエラルキーだの、誰かと付き合う付き合わないだの……。いつごろから学校になじめるようになったんですか?

関谷:留学は1年間だったんですけど、後半はだいぶ慣れてきて、1年の終わりには総代を務めました。

マリエ:総代……? 総代って、首席ってことですか?

関谷:そうですね。「その年に卒業する人の代表」なのですが、日本に帰る1年生の私も卒業生の一人ということで、学校代表に選ばれたんです。私、毎晩トイレで勉強してたんです。お手洗いのフタを机代わりにして(笑)。寮の消灯が9時だったんですけど、その時間までに宿題が終わらないので、明かりがついているお手洗いやお風呂場で頑張ってましたね。そんな生活を送っていたら、総代に選ばれました。

マリエ:涙ぐましい……! 本気度がすごい!

関谷:2~3年ごとに環境が変わると、新たな場所に順応することに一生懸命になるので。6歳で渡英、9歳で帰国、12歳で中学受験、15歳で留学決断、2度目の英国から帰ってきたら今度は大学受験。「必死になること」が習慣になっていたのは大きいと思います。

マリエ:私も自分は努力型だと思っていたけど、さすがにトイレで勉強したことはないので、自己評価が甘かったなと反省しました(笑)。

「理想の働き方」からの通訳

マリエ:関谷さんは30代になって、今の通訳会社を起業されたんですよね? 前職の商社から、どうして通訳に興味を持ったんでしょうか?

関谷:商社にいた頃から、通訳っぽいことはしていたんですよね。商社の繊維部門でブランドマーケティングをしていたんですけど、要は海外のブランドと日本の法人をつなげる仕事で。当時は通訳を発注する立場でもあったので、通訳がどんな仕事なのか分かっていたんです。

マリエ:もともと、独立志向はあったんですか?

関谷:2社経験して、私は自分で決めたい人なんだなってことがだんだん分かってきて。自分で意思決定ができないと、ちょっとストレスになっちゃう。それにその頃、友人が英語教育事業を立ち上げるのを手伝っていたので、会社経営が自然と選択肢の一つに入っていたんです。

マリエ:そうすると、通訳になりたかったというよりも、理想の働き方から逆張りしていった感じなのでしょうか?

関谷:そうですね。在庫を持つビジネスが大変だって商社時代に学んでいたので、在庫を持たない事業で私ができることってなんだろうと考えていた時に、頭に浮かんだのが通訳でした。起業する前、外国人のセミナーを同時通訳したことがあって。その時、参加者の方から「外国人の講師が日本語をしゃべってるみたいに自然な通訳だった」と言われたんです。これならできるかもしれない、と。

豊富な語彙より伝わる言葉

マリエ:通訳って、すごく難しい仕事だと思うんですよ。ライターも言葉選びには苦慮するけど、通訳者は言葉を瞬時に選ばないといけないじゃないですか。想像するだけでゾッとします……。

関谷:ああ、それでいうと、私は昔から辞書が好きなんですよね。和英に英和に英英に。中でも一番好きなのは類語辞典でした。新しい単語に出合ったら、意味の近しい表現も一緒にインプットしておく。きっと言葉が好きなんでしょうね。

マリエ:言葉が好き。納得です。関谷さんの代表作にもなっている『カリスマ同時通訳者が教える ビジネスパーソンの英単語帳』(関谷英里子著、ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)も、言葉が好きな人の発想ですよね。

関谷:2000語とか2500語とか、英単語帳は収録単語数が多ければ多いほど良いという常識がある中で、60単語しか紹介しない型破りな単語帳だったのですが、ありがたいことにシリーズ10万部を突破しました。

マリエ:やみくもに単語を詰め込むよりも、ビジネスシーンにおいて「伝わる」ことを重視した単語が並んでいるなと思いました。

関谷:まさにそうなんです。自分が会社員として経験したビジネスシーンや、通訳者として関わった著名人の話し方を聞いていると、「できる人」の英語には共通点があったんです。

マリエ:収録されている単語の一番初めは「share」でしたね。

関谷:会議でもスピーチでも、やっぱり効果的なのは「share」なんですよね。さあ、これからプレゼンが始まりますよというとき、「I will tell you XX.」というより「I will share with you XX.」と言われたほうが、『あなたと価値観を分かち合いたい』というニュアンスが出るじゃないですか。

マリエ:あの本を読んでから、ここぞとばかりに「share」を使うようになりました。コミュニティーと言語って、ひもづいていますよね。同じコミュニティーにいると、言葉選びもなんとなく似てくる。だから、相手が使う言葉に寄せていくことで、心理的にも近づくことができそうですよね。

関谷:多少言い回しがやぼったくても伝わればいい、という考え方もありますが、言葉選び一つで「こいつ、ビジネス知ってるな」と印象付けることができる。ただ言い回しを知っているだけで、ビジネス相手との関係が大きく進展するかもしれないのに、それをしないのはもったいないじゃないですか。

マリエ:確かに、オンでもオフでも、洗練された言葉選びをする人のことは好きになっちゃいます。言葉の領域ってセンスだと思われがちだけど、科学できる分野なんだなって思いました。

関谷:語彙が豊富なのは良いこと。次のステップは使い分けができることですよね。

マリエ:ところで、通訳の方って表に出てこない方が多いイメージなんですけど、関谷さんはどうして本を出すことになったんですか?

関谷:言ってしまうと、当初の目的はブランディングです。通訳を始めたばかりの頃は、大きな案件になるほどアイミツなんですよね。料金と実績に加えて、自分を選んでもらうためにプラスに働くものが必要だなと思っていて。当時は英検やTOEICの対策本ばかりで、今ほど「ビジネス英語」というカテゴリが確立していなかった。そこに絞ったのは正解でしたね。

マリエ:ポジションを取れたんですね。

関谷:そうそう、タイミング的にも良くて。楽天が社内公用語を英語にすると発表して、世の中がザワつき始めた頃だったんです。それまで、TOEICのようなテスト科目でしかなかった英語が、いよいよ私たちの身近にやってくる。その直後にNHKのラジオ番組が決まって、追い風でしたね。

インタビューを終えて



子どもでも大人でも「私は絶対これがやりたい!」と何かに情熱を持つことは、実は難しいことだと思います。ちょっと興味が湧いても、バカにされるんじゃないかと心配したり、自分にはできないだろうと諦めてしまったり。だから目標に真っすぐな人を見ると、自分とは違う人だと思ってしまうんです。

中3の関谷さんが「英国の高校に行きたい」と両親に相談したときのエピソードをよく聞くと、関谷さんのモチベーションは「英語が得意な自分でいたい」でした。特段、壮大な夢があったわけではないんですね。子どもの頃から私たちは「夢を持つこと」を推奨されているので、やりたいことが分からないことが罪深く感じてしまう。そんなときは問いの言葉を少しだけ変えて「どんな自分でいたいか」を考えてみる。その答えに従順に生きていれば、おのずと次の扉が開かれていくんだと気付くことができました。

それにしても、トイレで勉強はすごい……。今でも海外経験のある人に嫉妬することはあるけれど、自分が努力するようになって気付いたのは、帰国子女たちは、努力する時期が自分より早かったってだけなんだなってこと。関谷さんは「違う世界の人」じゃない。同じ世界に生まれた「めっちゃ努力した人」でした。
ニシブマリエ
ライター/広報PR/チーママ。青山学院大学英米文学科を卒業後、大手人材情報会社の営業と広報を経験。現在は、企業の広報支援をしながら、HRなどのビジネス領域と、ジェンダーや多様性といった社会的イシューを中心に取材・執筆を行っている。グローバルインタビュアーを目指して、コーチング英会話「TORAIZ」にて英語の特訓中。

(取材・文 ニシブマリエ、写真 稲垣純也)

[日経doors2019年3月4日付の掲載記事を基に再構成]

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