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LGBTを戦力に 日本企業の受け入れ、ようやく始動

2019/4/26 日本経済新聞 朝刊

LGBT向け採用説明会には20社が参加した(3月30日、東京・渋谷)

日本企業が性的少数者(LGBT)が働きやすい職場づくりに動き出した。人口の約9%は該当者とされ、職場での会話などからストレスを抱えて退職する人も多いという。国連目標「SDGs」でも性差別解消を掲げる。多様な価値観を受け入れることが企業の競争力向上につながると、採用や社員教育で工夫を凝らす企業が増えてきた。

LGBTの就活を支援するスタートアップ、ジョブレインボー(東京・渋谷)は3月30日、東京・渋谷で合同採用説明会を開いた。富士通や丸井グループ、ソフトバンクなど20社が出展。新卒既卒を問わず、LGBTを対象に会社紹介していた。

来場した21歳のトランスジェンダーの大学生は「通常の採用セミナーと異なり、参加時に男か女かの二者択一を聞かれないので気が楽だった」と語った。

参加企業の一社、日の丸交通は「LGBTは繊細な人が多い。きめ細かい対応が求められる接客業務に向いている」(三木孝志採用センター次長)と採用に前向きだ。ジョブレインボーの星賢人代表は「多様な価値観を受け入れる社会の第一歩になれば」と今回初開催した理由を述べた。

電通が1月に発表した調査によるとLGBTに該当する人は日本の人口の8.9%。また人口の68.5%が、LGBTはレズビアンやゲイなど性的少数者の総称であることを認識しているという。

LGBTの認知度の高まりに合わせ、職場環境の改善に動く企業が出てきた。セガサミーホールディングスは2月に社内規定を改定し、国内グループ社員約8000人を対象にしたeラーニングを始めた。LGBTの用語の理解や会話で注意すべきことなどを学ぶ。「SDGsへの対応が世界企業の条件といわれるなか、多様な価値観を受け入れる風土作りは必要だ」(グループ代表室)。

「彼氏や彼女とは言わず、恋人かパートナー、相方と言いましょう」――。会計ソフト開発のfreee(フリー、東京・品川)はほぼ月1回、中途やアルバイトなどその月に入社した従業員を対象としたLGBTの研修を開いている。「性に縛られず自分らしく働ける職場が、個人のパフォーマンスを最大化できる」(ダイバーシティ推進室)狙いがあるという。

研修や同性婚の配偶者手当支給など社内制度にとどまらず、ビジネスに直結される動きも出てきた。

マンション運営のレジデンストーキョー(東京・渋谷)は7月、東京・新宿にLGBTに配慮したホテルを開業する。共用トイレは男性用便器を置かないなど、男女で分けることをやめた。全従業員にLGBTの研修を施して、接客方法にも気を配る。「20年の東京五輪を見据えてLGBTが泊まりやすくすることで、外国人客の利用を見込んでいる」(野坂幸司代表)

ただ日本全体でみると対策を講じていない企業はまだ多い。電通調査ではLGBT該当者の54.5%が、福利厚生や理解促進の勉強会といったサポート制度が「職場にない」と回答している。

外資系企業は以前から取り組んでいる。日本IBMは04年にLGBT社員への配慮について検討する委員会が発足。手当以外に慶弔見舞や介護休暇も配偶者と同等とする同性パートナー向け福利厚生制度を設けている。

17年からeラーニングや理解啓発のメルマガを配信するなど、国内企業ではLGBT対策を先行して取り組むソフトバンク。だが「LGBTへの配慮を社内で意識しないことが理想だ」(人事企画部)と語る。そう考えると、日本企業の対策は緒に就いたばかりといえそうだ。

(榊原健)

[日本経済新聞朝刊2019年3月31日付]

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