耳元に専属トレーナー 励ますアプリで本格レッスン

アプリを実際に使ってランニングし、へとへとになった記者(東京都江東区)
アプリを実際に使ってランニングし、へとへとになった記者(東京都江東区)

ジムに入ったが、思うように続かない。マラソンの記録を伸ばしたい。そんな声に応えるアプリを手がけるのが、BeatFit(ビートフィット、東京・目黒)だ。プロのトレーナーによる音声ガイドで、ランニングや筋トレ、ヨガなどの本格レッスンを提供。音楽に合わせ、耳元で利用者の健康管理に伴走する。

「目標体重をクリアできた」「きついけど達成感がすごい」。交流サイト(SNS)では、アプリの高評価が並ぶ。利用料は月額980円と24時間ジムの1割ほどだ。女性の利用者が7割近くを占め、30代の利用が多い。本田雄一最高経営責任者(CEO、36)は「ジムに入会しても、何をすればいいのか分からず足が重くなってしまう人を応援したい」と語る。

筋トレから瞑想(めいそう)までコンテンツ(クラス)は17人の現役トレーナーの立案の下、すべて社内のスタジオで製作。月産30本ペースで、10分ほどの短いものから1時間を超えるクラスもあり、累計は300を超える。品質を保つため、収録前に実際に社員とリハーサルして効果を確かめるという。

果たしてその効果はいかに。最近はゴルフばかりで、おなか周りが気になり始めた記者(30)が実際に使ってみた。

アプリを開くとタンクトップや蛍光色の服を着た健康的なトレーナーの写真がずらり。実際にジムを経営していたり、アスリートの指導をしていたりするプロだという。

35分間の中・上級レベルクラス、屋外でランニングをトレーニングする「ダッシュ&スキップで脚力強化!」を選んだ。男性トレーナーの快活な声とともにクラブ調にアレンジされた1970~80年代の洋楽ロックが流れる。「体を温めるウオーキングからスタート!」「ペースを上げてみましょう!」。イヤホンをしているため周囲には聞こえていないと分かっていてもなんだか恥ずかしい。

アプリでは、さまざまな難易度のクラスがそろっている

ウオーキングやストレッチのメニューが終わると、曲のテンポが上がって徐々にハードな運動に。「50~70メートルの全力ダッシュを約10秒ずつ、5本繰り返します!」。息が上がり始めたが、まだ大丈夫だ。「次は1キロメートル5分40秒ほどのペースで走ってみましょう」。普段は同5分前後で5キロほど走っている。これなら行けるだろう。

甘かった。「次はスキップです」。スキップなんて何年ぶりだ。「もっと高く! 遠くに!」。体は跳ねているのに顔は全く笑っていない。「4分40秒のペースに上げましょう!」と再度ランニング。クールダウンにバラード調の音楽が流れ、ようやく終わった。エレベーターのない自宅のアパート4階まで上がるのに足がもつれる。耳元トレーナー、恐るべし。

動画コンテンツが広がるなか、あえて音声を主軸にしたのは実際に体を動かしている間も動きをサポートできるからだ。動画だとスマートフォン(スマホ)を持って小さい画面で見る必要がある。新しいコンテンツを毎日低コストで製作できるのも利点だ。フォームが複雑な筋トレなど音声だけの説明ではわかりにくい内容は短い動画で補完している。

不動産サイトやシェアスペースの運営事業を手がけたシリアルアントレプレナー(連続起業家)の本田氏。今でこそ毎日体を鍛えているものの、「小さい頃は運動下手でひ弱だった」。フルブライト奨学生として留学した米国では、体が小さくて中学生に見られたという。留学を機にパーソナルトレーニングを本格的に始め、2~3カ月で体重を5キロ増やした。

「筋トレは運動のセンス関係なく正しくやれば結果につながる」。本田氏がニューヨーク大学に留学していた同時期に、マサチューセッツ工科大学(MIT)でデザインを学んだ永田昌一氏(39)、電通出身の宮崎学氏(32)と2018年1月に会社を立ち上げた。

有料会員数はまだ数千人だが、18年12月にはフィットネス大手のルネサンスと組み、関東エリアの約20店舗とアプリをオプション機能として提供する取り組みを始めた。スタッフ不足で会員への対応が行き届かないといった事態を避けられるだけではなく、ウエアラブル端末と連携させ、その日の体調に合った運動を提案するといった機能を開発する。

利用者に継続的に使ってもらえる仕組みがカギとなる。アプリの機能開発を進め、ハーフマラソンを目指していたり、筋肉量アップを目指していたりする人が、質問に答えるだけで目標に応じたプログラムを組めるようにする。「睡眠や食にもサービスを広げ、利用者の健康を支えたい」と意気込む本田氏。そして記者は夏までに4キロ痩せるぞと意気込む。

(駿河翼)

[日経産業新聞2019年3月20日付]