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がんになったらお金はどうする?頼りになるFPの働き

『がんになったら知っておきたいお金の話』著者インタビュー

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

がんにかかると、治療法の選択や療養場所の悩みだけでなく、生活やお金のことも問題になってくる。病院では医療ソーシャルワーカーが、生活上の悩みの相談に乗ってくれるが、家計や経済面の問題まで踏み込んで対応してくれることは少ない。看護師でファイナンシャル・プランナー(FP)の資格を持つ黒田ちはる氏はこのほど、がん患者のお金の相談に乗ってきた自らの経験を基に、『がんになったら知っておきたいお金の話』(日経メディカル開発)を出版した。がんになった時に頼りになるFPの働きなどについて、同氏に聞いた。

看護師経験を生かし、がん患者専門の家計相談事務所を開業

――黒田さんは看護師の資格を持つFP(ファイナンシャル・プランナー)とのことですが、FPの資格を取られた理由からお願いします。

黒田 もともとは病院の看護師でした。看護学校を卒業後、最初に配属されたのが外科病棟で、そこで多くのがん患者さんを担当しました。ある末期がんの患者さんを担当した時、余命が限られた中で、やりたいこと、行きたいところがあるにもかかわらず、金銭的な制約から、それができない状況を見て、看護師としてもどかしい思いを抱いたことを覚えています。

病院には医療ソーシャルワーカーがいて、様々な制度の説明や他の病院や施設、在宅への紹介などを担当していますが、患者さんの個人資産への介入は業務の中にありません。もちろん、病棟の看護師の業務にもありません。

何かいい方法はないか、もやもやとした思いを持ちながら看護師を続け、その後、一旦結婚を機に専業主婦になりました。専業主婦の期間に「お金のことを勉強しよう」と一念発起し、FP2級・AFP(アフィリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー)の資格を取りました。資格を取って気づいたのは、FPの知識があれば、お金に困っているがん患者さんを少しは助けることができたのでは、ということです。

その後、国際基準のCFP(サーティファイド ファイナンシャル プランナー)の試験勉強中に、病院等に出向いてがん患者さんのお金の問題の相談に乗る活動を行っているNPO法人「がんと暮らしを考える会」の存在を知り、定期会にも参加するようになりました。

しばらくして再び医療現場に戻り、病院の看護師として働くようになりました。その病院では、患者さんにFPとしても相談に乗ることができたらと思っていました。しかし、やはり看護師の仕事との両立は難しいのと、勤務する病院以外の患者さんにも役に立ちたいと考え、がん患者さん専門の家計相談事務所を開業することにしたのです。

――本書を執筆したきっかけは?

黒田 2017年秋に、この書籍を担当した編集者が、「がんと暮らしを考える会」の取材に来られたのがきっかけです。私の話をお聞きになり、本にしてみないかと持ちかけられたのです。そこで、これまで経験した相談の中から、典型的なケースを9つ選び、それぞれについてお金に関連する制度と、その活用法をまとめ、1冊の本にしました。

会社員、自営業、専業主婦…相談が多い9つのケースをピックアップ

――執筆に当たって特に心がけた点は。

黒田 患者さんご自身や、ご家族で悩んでいる人が、金銭の悩みの解決に向けて一歩を踏み出せるような本にしたいと考えました。そこで、「自営業(個人事業主)のケース」「働き盛り会社員のケース」「専業主婦のケース」「60代前半のケース」「つらくて退職を検討しているケース」「再発後見通しが分からないケース」というように、相談が比較的多い典型的な9つのケースについて、家計のどんな点をチェックし、具体的にどんな制度を活用すればいいか、どんなアクションを起こせばいいのかを、分かりやすく解説するよう心がけました。

例えば、「傷病手当金」という健康保険の制度があるのですが、働いている方と、会社を辞めようと考えている人では活用の仕方が全然違うので、ケース別で説明した方が理解しやすいと考えたわけです。

――「働き盛りの会社員のケース」の章で、住宅ローンのリスケジュールについて解説されていますが、普通の人は「銀行がローンの支払いを待ってくれる」とは考えないですよね。病院の医療ソーシャルワーカーもその種の相談には乗ってくれませんし。

黒田 患者さんの中には、相談に行ったが銀行から追い返された、という人も結構いて、泣きながら相談に来る人もいます。ただ、「がんになって家計が苦しい」というだけでは話は通じません。「収入はこれくらい下がります。貯金のうち子供の学費で残しておきたいのはこれくらいです。だから、この金額ならなんとかローンを払い続けられます」というように、ある程度理詰めで説明しないと、分かってくれない銀行もあります。そんなリスケジュールを銀行に提案する際の注意点などについても詳しく書きました。

医療関係者にも読んでほしい

――本書は、患者さんとその家族向けの本ですが、他に読んでもらいたい人はいますか。

黒田 医療関係者ですね。病院のスタッフを対象に講演をすることもあるのですが、「がんになっても高額療養費制度があるから大丈夫だろう」と思っている医療者は少なくありません。年齢や所得にもよりますが、高額な医療費がかかった場合でも自己負担額は10万円に満たないことが多いです。ただ、その10万円を家計の中からどう捻出しているかは患者さんそれぞれで、色んなローンや子供の学費などの支払いが多く、仮に可処分(手取り収入)額は20万円で、その中の10万円が医療費だと、生活は相当苦しくなります。高額療養費制度があるから大丈夫、とは決して言えないのです。

逆に、患者さんのためと、薬価の安い薬を処方し、高額療養費制度の多数回該当[注1]から外れてしまうということもありました。治療が長期となる場合は、医師が多数回該当の活用も視野に入れることで、患者さんの月々の治療費の軽減も可能なのです。

社会保険労務士とFPが2人1組で相談に

――がん患者さん専門の家計相談事務所とのことですが、具体的にはどんな働きを。

黒田 「がんと暮らしを考える会」に所属し、この会と契約している病院へ行き、患者さんの相談に乗るというのが基本的な仕事です。社会保険労務士とFPが2人1組で、患者さんと病院の会議室などのスペースを使って1時間ほど話をします。その他、講演会などで「がんとお金」の話をしたりします。

――患者さんが支払う相談料は?

黒田 病院と「がんと暮らしを考える会」の契約ですので、患者さんご自身の負担はありません。

――契約している病院でないと相談は受けられないのですね。

黒田 無料相談はそうです。「がんと暮らしを考える会」は今、全国で8つの医療機関と契約しています。順天堂大学医学部附属浦安病院、兵庫医科大学病院、埼玉県立がんセンター、石川県がん安心生活サポートハウスはなうめ、防衛医科大学校病院、さいたま赤十字病院、国立国際医療研究センター病院などです。

病院で医療ソーシャルワーカーが一度相談に乗って、「これは経済面が大変そうだ」という患者さんをピックアップ、専門家への相談を勧めて、相談したいという人に予約を取っていただき、我々がその病院で話をうかがう、という流れです。患者さんには事前に連絡して、当日は家計や資産の状況がわかる資料や、ローン返済表などを持参してもらいます。

「がんと暮らしを考える会」とは

――最後に、黒田さんが所属しておられる「がんと暮らしを考える会」について、簡単にご紹介下さい。

黒田 2011年から活動しているNPO法人です。がんにかかることで患者さんに生じる経済的な問題と仕事の問題を、医療関係者と共に解決できるよう、(1)がん制度ドック、(2)「お仕事・お金」の個別相談、の2つの事業を行っています(図参照)。がん制度ドックは2013年にオープンした、がん患者さんが使えるお金に関連する制度を検索できる無料のサイトです。3コインサポーター(一般市民による毎月300円の支援活動)など、皆さまのご支援により継続できています。

「お金とお仕事」の個別相談事業は先にも述べたように、契約している病院に出向いて、患者さんの相談に乗る事業です。資産・金融商品の専門家であるFPと、労働法と社会保険(年金や健康保険)の専門家の社会保険労務士が2人1組で担当します。

――会員はFPや社会保険労務士の方が多いのですか?

黒田 そうです。ただ、社会保険労務士はある程度人数はいるのですが、FPの数が足りません。社会保険労務士の役割は、がん患者の就労支援ということで、がん対策基本法の計画の中にも明記されているのですが、FPの役割はまだ明記されていないことも影響して、この分野でFPが活躍できるということがまだ周知されていないのです。FPの方にもぜひ、「がんと暮らしを考える会」の活動に関心を持ってもらいたいと考えています。4月より新しい事業としてがん患者さん向けの制度とお金の講座「がん制度大学」がはじまります。今後も様々な方法で患者支援を続けていきたいと思います。

[注1]直近12カ月間に3回以上高額療養費制度を利用した場合に、以降の自己負担限度額がさらに引き下がる仕組み。

(聞き手:千田敏之)

黒田ちはるさん
黒田ちはるFP事務所代表/NPO法人がんと暮らしを考える会事務局長。看護師としてがん患者やその家族のケアに携わる中で、経済的なつらさが体や心に影響を及ぼしていることを目の当たりにし、ファイナンシャル・プランナーを志す。現在、医療機関などでがん患者さんの家計相談を行うほか、講演会やテレビ出演などで「がんとお金」の問題の大切さの啓発活動も行っている。

[日経Gooday2019年3月27日付記事を再構成]

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