人生の晩期を豊かに楽しむ 老いの現実受け入れてこそ人生の景色が変わる本(2)『すごいトシヨリBOOK』

『すごいトシヨリBOOK』 池内紀著 毎日新聞出版
『すごいトシヨリBOOK』 池内紀著 毎日新聞出版

70歳で「自分の観察手帳」を作り、日々の発見を記してきたドイツ文学者でエッセイストの著者が、楽しく老いる秘訣を語る。

年を取ると、体とともに心も老けていく。初めは固有名詞を思い出せないくらいでも、やがて人の話を遮って自分の話をしたがる、過去の記憶を“ねつ造”する、記憶が脱落する…と進み、しまいには忘れたことすら忘れるように。

だからと加齢にあらがうことを、著者は真っ向から否定する。老いの現実に寄り添い、老いた自分を直視してこそ、これまでとは違う人生の局面が見えてくるし、残された時間が充実すると説く。

体験から導き出したアドバイスはとても実践的。漠然とした不安に覆われた老後のリアルな“感想”と、肩ひじ張らず前向きな視点に、心が軽くなる。

要点1 老いるという当たり前の現実を受け入れよう

年を重ねると嫉妬心を抱いたり、意味のないことで迷ったりしなくなると思っていた。しかし全然そうはならない。一方で「年相応に」愚かしいことを控えるなど用心深くなり、用心などしていないかのようなフリをするのは上手になる。老いの局面は実に複雑だ。

ネガティブな要素はいくつもある。これが自分かと思うほど容貌が衰える。新しい言葉が分からない。周囲に老人扱いされる。ものの見方が古いから意見が通らない。しかしそれらは当たり前のことだ。不機嫌に閉じこもるのではなく、老いの現実を受け入れよう。

要点2 老いてこそ自立を。情報にも流されない

年寄り同士で群れる姿は物悲しい。一人ひとりが自立して、自分の老いを生きる覚悟をしてはどうだろう。自立の第一歩は、テレビと手を切ること。一方的に流れてくる安っぽい情報を断ってこそ、自分が本当に興味を持っているのは何なのかが分かる。元同僚、元同窓といった、「元」が付く人たちとの縁も遮断する。昔話は楽しいけれど、そこからは何も始まらない。夫婦も互いに寄りかかるのをやめる。自分のことは自分でする自立した関係をつくり直そう。

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