マヨシート・飲むおにぎり…斬新発想のヒット食品予測
2019年上半期食品ブレイク予測(下)
2019年上半期にブレイク必至の食品をキーワードで予測する。日本アクセスがまとめた「バイヤーズグランプリ」(詳しくは記事末参照)の入賞商品に加え、編集部が厳選した注目商品を紹介する。スライスチーズのような見た目の「マヨシート」、皿の上にあけるだけで食べられる「そのまんま麺」、プロテインを補給できるヨーグルトドリンク、凍らせれば低カロリーの豆乳アイスに早変わりする豆乳飲料など、趣向を凝らした商品が集まった。
【キーワード1「変身助っ人フード」】
子供がいる共働き世帯や働く女性が年々増加する今、家庭用食品における調理の簡便さはもはや最低条件。しかし一方で、「家族の喜ぶ顔が見たい」「手抜きと思われたくない」心理から、肉や野菜などの食材をそろえて、手料理を振る舞いたいという意向が強いのも事実だ。こうした一見矛盾するような心情をくみ取り、19年上半期は、一発で味が決まる頼もしい調味料が各社から続々と投入されている。
なかでも目を引くのが、革新的な形状のモデルチェンジで、格段の使いやすさとどんな料理にも使える汎用性を兼ね備えた「変身助っ人フード」だ。外見はスライスチーズかと見まごう「スライスキッチン」(ブルボン)は、バジルマヨ、ツナマヨの味足しが完了する前代未聞のシートマヨ調味料。他の具材と一緒にサンドイッチやおにぎりに挟めばレシピの幅も広がる。
●画期的な「マヨシート」、液垂れなしが利点
溶くのが面倒な味噌をサラサラ顆粒(かりゅう)にした、「パパッと味噌パウダー」(神州一味噌)も好例だ。前回の「味付カレーパウダー バーモントカレー味」(ハウス食品)同様に、サバの味噌煮、ナスの味噌いためなど、初心者には高難度の味噌系料理の味付けをひと振りで決められる。
●女性も持ちやすい容器、味噌系料理を簡単調理
●チューブボトル入りで抜群の使い勝手
既存品の1.5倍量のトマト、いためタマネギ、ニンニクを煮込んだ濃厚トマトソースを、チューブボトル入りに。使いたい分だけ使える利便性が好評。缶やパウチの「使い切れない不満」を、形状を変えることで解消した。
●大胆不敵な飲む炭水化物、非常食にも活用できる
うるち米、梅肉などをジェル状にしてパウチに封入。食事時間の取れない移動中に、小腹がすいたオフィスで、ゼリーのように飲む斬新なおにぎり。賞味期限1年で非常食にもなる。
【キーワード2「究極時短」】
「とことん手抜きが許される」ときに重宝するのは、調理時間と手間を限りなくゼロに近づけた「究極時短」商品。「日清のそのまんま麺」(日清食品チルド)は、文字通り、そのまま食べられる麺。ついに、ゆでたり流水でほぐしたりする工程すら不要になった。麺をそのまま皿にあけ、タレをかけてかき混ぜればすぐ食べられる時短の極みだ。
●麺をタレでほぐすだけ、比較的日持ちがして安価
コンビニで販売されている同様のカップ入り調理麺に比べ、賞味期限が12日間と長く、価格も税別240円からと手ごろ。
●働く女性の朝食需要に「焼かない」おにぎり
30年前に冷凍の焼きおにぎりを他社に先駆けて発売。定番化に成功した日本水産が、食物繊維が豊富なもち麦を配合した、"焼かない"ヘルシーな冷食おにぎりを新発売。狙いは30~40代の女性の朝食需要。「枝豆こんぶ」も発売。
【キーワード3「プロテイン増し」】
一方、健康関連食品ではプロテイン市場が急成長。従来はアスリートや筋肉マニアなど一部のファンが支えた限定的な市場だったが、近年、シニア層の筋力維持や若い女性のボディーメーク需要でマーケットが拡大。1日のうち最も不足しがちな「朝」のタンパク質補給が手軽にかなう、ヨーグルトドリンクや6Pチーズなど乳製品の「プロテイン増し」商品が相次いで発売された。
●飲むヨーグルトで毎朝の摂取を習慣化
朝食などでもっと手軽にタンパク質を取れるように、ドリンクヨーグルトにホエイプロテインを2グラム増量。1パック(450ミリリットル)でタンパク質15gを摂取できる設計。
●プロテインを25%増量、健康・美容需要を狙う
健康維持や美容目的の需要が引っ張り、プロテイン市場が近年急成長するなか、従来品よりタンパク質を25%増量、1ピース(15グラム)当たり3.7グラム配合したのが「プラス習慣」。朝食でのプロテイン補給を推奨する。
【キーワード4「悪魔系」】
コンビニの人気商品にあやかり、既存商品の用途を広げる動きにも注目だ。オタフクソースは、家庭でのお好み焼き作りに欠かせない天かすのラインアップに、ノンフライ製法による「だしとうまみのサクサク天かす」を追加。天かす、天つゆ入りの「悪魔のおにぎり」(ローソン)の大ヒットを追い風にして、自家製おにぎりで「悪魔系」ファンの取り込みをもくろむ。
● 業界初のノンフライ天かす、「悪魔のおにぎり」に追随
カロリーを気にする人に配慮し、油を使わないノンフライで製造。かつお節粉末などを練り込み、だしを利かせてサクサクの天かすに仕上げた。推奨レシピはおにぎり。
【キーワード5「NEO調味料」】
既成の枠を飛び越え、調味料の可能性を広げる「NEO調味料」の出現も、19年上半期の新たなムーブメント。エスビー食品からは、「きざみ青じそ」など売り上げが好調のきざみ系チューブ入り調味料シリーズに、「きざみねぎ塩」が登場。焼肉店などでしか味わえなかった「誰もが好きな味」を最も手軽な形で食卓に持ち込んだ。かけてレンチンするだけで温野菜料理が完成する、業界初の電子レンジ専用調味料「かけてチン♪温菜おかず」(味の素)は、「食卓にもう一品欲しい」ときの副菜需要に応え、支持されそうだ。
●きざみ青じその大ヒットを受け、焼肉店で人気の調味料で勝負
チューブ入り薬味の「きざみ青じそ」は計画比10倍のヒット。「きざみパクチー」なども絶好調のきざみシリーズで、次に白羽の矢を立てたのがネギだ。焼肉店で人気にもかかわらず家庭用調味料ではまれな「きざみねぎ塩」を新規投入した。
●業界初のレンジ専用調味料、味染み温野菜を超簡単調理
野菜にかけて電子レンジで加熱するだけで温野菜の副菜が一品できる、業界初の電子レンジ専用調味料。どんな野菜にも使え、素材にしっかり絡まるのが特徴だ。レンチン料理は野菜の栄養素も保持されやすい。
●1本で味が決まる万能だし酢、和洋中の料理にマッチ
酢は使いこなすのが難しく、若い層に敬遠されがち。リンゴ酢にかつお節と昆布のだし、ユズ果汁を加え、これ1本で和洋中の料理の味足しにも使える万能選手。
【キーワード6「マジックスイーツ」】
SNS映えしそうな「クリア系」手作りスイーツ「もちぷっち」(昭和産業)は、水と混ぜるだけで、手品のごとくキラキラもちもちに変身。フルーツやチョコをくるむなどして、親子で工夫しながらお菓子作りが楽しめる。冬場のホットケーキミックス級の定着を狙う。
●女性に人気の透明スイーツ、遊び感覚で親子需要を喚起
キッコーマン飲料の「豆乳飲料」も、凍らせるだけで低カロリー豆乳アイスに早変わりするマジックスイーツ。ユーザー発案のこの食べ方は、18年5月にSNSで大ブレイク。この機を逃すまいと19年2月には、アイスで食べておいしい「ラムレーズン」「マカダミアナッツ」の新味をリリースした。夏場に親子でデザート作りが楽しめる新提案として、こうしたギミックのあるスイーツは人気を呼びそうだ。
●「冷凍豆乳」が爆発的に流行、アイスの人気味で再燃を狙う
18年、SNSユーザーの投稿を機に豆乳飲料を凍らせて食べるヘルシーアイスが爆発的に流行。売り上げは2桁増を記録した。19年2月、ラムレーズンなどアイスの人気味を商品化。
「バイヤーズグランプリ」とは?
大手食品卸の日本アクセスが19年1月に開催した、東西会場で延べ1150社出展の大型展示商談会「フードコンベンション」の特別企画。光文社の生活情報誌「Mart」の読者会員が選ぶ「Mart新商品グランプリ」のプロ版で、エントリーした83の新商品を、スーパーやコンビニなど流通各社の食品バイヤーが投票。加工食品、チルド飲料、チルド食品、冷凍食品、アイス、嗜好飲料の6部門で得票数の多い順にランキングした。日本アクセス、流通専門誌「DIAMOND Chain Store」とのコラボ企画。
(ライター 高橋学、編集協力 堀田恵美、写真 中本浩平)
[日経トレンディ2019年4月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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