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絶滅した「ホビット」原人が人類と共存? 新たな分析

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/4/8

ナショナルジオグラフィック日本版

インドネシアのフローレス島にある石灰岩のリアンブア洞窟で、発掘調査を行う考古学者。ここから、謎の原人ホモ・フロレシエンシスの化石が発見された。(COURTESY LIANG BUA TEAM)

インドネシアのフローレス島にあるリアンブア洞窟は、「ホビット」の洞窟として広く知られている。この場所で、体の小さな絶滅人類フローレス原人(ホモ・フロレシエンシス)が発見されたためだ。だがここを発掘する科学者たちは、この洞窟を「ネズミ洞窟」と呼ぶ。

カナダ、レイクヘッド大学の人類の起源リサーチチェア(カナダ政府に任命された研究職)であるマシュー・トチェリ氏は、「リアンブアへ初めて発掘に行ったとき、土の中から出てくる骨のほとんどがネズミの骨だったので、びっくりしたのを覚えています」と振り返る。

そのネズミの骨を、トチェリ氏を含む研究チームが分析したところ、洞窟のネズミには過去に何度か大きな変化があったことがわかった。6万年前にフローレス原人の骨が洞窟から消えはじめた時期にも、変化は起こっていた。

リアンブアに生息する現代の巨大ネズミを測るマシュー・トチェリ氏(左)とボネファシウス・サグト氏(COURTESY LIANG BUA TEAM)

「6万年前と言えば、まさにフローレス原人が減少し始めた時期です。その後まもなく、彼らはこの場所から完全に姿を消してしまいました」。インドネシア国立考古学研究開発センターの保全・考古年代測定部長であるワユー・サプトモ氏は言う。

この発見は、これまで知られていなかったリアンブアを取り巻く古生態系を明らかにするとともに、フローレス原人に何が起こったのかという、いまだ解決されない大きな謎を解くカギになるかもしれない。この研究結果は近々「Journal of Human Evolution」に掲載される。

■小型犬ほどの大きさのネズミも

フローレス原人が古人類学の世界へ突如として現れた2003年、その小さな脳と、原始的で奇妙な特徴から、人類と同じ系統に含めてもいいのかどうか論争が巻き起こった。この謎の手掛かりを探すうちに、フローレス原人の生きていた環境が次第に明らかになった。発掘現場からは、フローレス原人と同じくらい奇妙な古代生物が続々と見つかったのである。巨大なコウノトリ、ゾウの仲間だが牛と同程度の大きさしかないステゴドン、そしてコモドオオトカゲなどだ。

だが、なかでも最も多く出土したのはネズミの骨である。正体が確認された骨のうち、8割がネズミのものだった。

フローレス島のネズミは、その辺のげっ歯類とはわけが違う。これは、フローレス原人が生きていた時代にも現代にも言えることだ。現存しているげっ歯類のなかには、カピバラのように小型犬ほどの大きさの種もいる。このように体の大きなネズミは注目を集めやすいが、リアンブアに眠っていたネズミはそれだけでなかった。大きさも行動も、エサの好みも違う多様な種がそこにはすんでいた。

地球上に生息するすべての哺乳類のなかで、「げっ歯類が最も多様性に富んでいます」と語るのは、米エモリー大学の大学院生で、今回の研究を率いたエリザベス・ビーチ氏である。研究仲間からは「ミス・ティクス(インドネシア語でネズミレディという意味)」の愛称で親しまれている。そして古人類学の発掘現場では、これらの違いがその土地の過去の生態系や環境に関する情報をもたらしてくれる。

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