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大発見! カンブリア紀の新たな化石群で新種続々

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/4/6

ナショナルジオグラフィック日本版

レアンコイリアの化石。最大の付属肢を含め、詳細な解剖学的構造が保存されている(PHOTOGRAPH BY AO SUN)

2019年3月22日付けの学術誌「サイエンス」に発表された論文によると、中国の川のほとりで5億1800万年前の古代生物の化石が大量に発見された。保存状態は驚異的に良好だという。

「清江」というこの化石産地からは、保存状態が非常に良く、ふつうは化石にならない軟体動物の化石まで見つかっている。こうした世界有数の化石を産出する地層は、地質学の世界で「ラーゲルシュテッテン」と呼ばれ、カナダの有名なバージェス頁岩(けつがん)や中国の澄江などが知られている。

「ほとんどの化石産地では殻のあるものや硬いものだけが化石になりますが、これらのラーゲルシュテッテンでは解剖学的な構造までが保存されます。これ以上ない最高の化石です」と、カンブリア紀の生物の専門家である米ハーバード大学の古生物学者ジョアンナ・ウルフ氏は説明する。なお、ウルフ氏は今回の研究には関与していない。

清江では現在までに、101種の動物化石が確認されており、その半数以上が新種だという。中国、西北大学の古生物学者で論文の筆頭著者である傅東静(フ・ドンジン)氏は「明るい未来が見えます」と言う。「清江は次のバージェス頁岩になるでしょう」

現代のクラゲの遠い親戚にあたる動物が、長い歳月を経ているにもかかわらず、鐘状の体や触手まで保存されている(PHOTOGRAPH BY AO SUN)

今回の発見は、さまざまな動物が爆発的に現れたカンブリア紀初期に関する知識を大幅に増やしてくれる。この時代には、わずか数千万年の間に世界中で複雑な海洋生態系が誕生し、今日の主要な動物群の基礎となる生物が出現した。動物の生息地となる浅い海ができたことや、DNA調節機構の進化により体節をもつ生物が登場したことなど、多くの要因が重なって先例のない「種の放散」が起きたと考えられている。

「半数以上の化石が新種という化石産地が見つかったと聞いて驚いています。これまでの時点ですでに、カンブリア紀の生物多様性はかなりよく把握できていると思っていましたから。ワクワクしています!」と、スイス、ローザンヌ大学の古生物学者でカンブリア紀の生物を専門とするアリソン・デイリー氏は言う。

■カンブリア紀へのガリバー旅行記

傅氏と、その博士研究の指導教官で論文共著者の張興亮(チャン・シンリャン)氏が清江の化石産地を発見したのは、化石を求めて中国南部の岩石を調べていた2007年の夏のことだった。暑さから逃れようと川沿いを歩いていた両氏は、偶然、川岸に有望そうな頁岩があるのを見つけた。発掘を始めるとすぐに目をみはるような化石が見つかった。カンブリア紀のほかの化石産地でも見つかっているエビのような生物「レアンコイリア」の化石だった。

清江生物群の復元図。今から5億年以上前、海底の動物たちは、泥の斜面の頂上付近の、酸素濃度が高いところにすんでいた。あるとき泥が斜面を流れ下ってきて、動物たちは斜面の裾の方まで押し流され、急速に泥に埋もれたが、深いところの酸素濃度は低いため、死骸の分解が進まなかったと考えられている(ILLUSTRATION BY DONGJING FU)

4回の発掘シーズンを終えた両氏は、時間の流れを遡って、この生態系の中を泳ぎ回ったらどのような感じか、かなり詳細に明らかにしている。それは、『ガリバー旅行記』の海底版のようなものになるだろう。あなたは海底で最大の動物になる。清江の動物の体長は、大きくてもせいぜい15cmだったと考えられているからだ。

清江の動物たちと一緒にカンブリア紀の海に浮かべば、興味深いドラマが繰り広げられているのが見えるだろう。海底では、原始的なイソギンチャクの横を三葉虫が這い回っている。枝分かれした藻類と、色も大きさもさまざまな約20種のカイメン(海綿)が、風景に賑わいを添えている。葉足動物と呼ばれる脚のあるいも虫のような生物も、短く太い脚をうごめかせて海底を横切っていく。

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