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W杯だ!ラグビーを語ろう

「楕円桜」 ジャパン応援歌、東北の被災地に響く シンガーソングライター・渡瀬あつ子さん

2019/4/2

――歌は「転がったボールの行方 誰も知ることのない道」で始まります。とくに気に入っているフレーズはありますか。

「2番冒頭の『過ぎし日の流す涙に ここにいるその訳を知る』ですかね。この歌詞を書けたのは、たぶんラグビーと出合ったから。それがなければ、私自身も、ただ報われない気持ちのまま終わる音楽人生だったかもしれないですね」

■リクエスト受けて避難所で歌う

――故郷の南相馬市は東日本大震災で大きな被害を受けました。どんなふうに過ごされたんですか。

「実は震災翌日に都内で(自分の)結婚式を予定していたのですが、延期しました。こんなときに歌っている場合じゃないと思って、別にできることをやらなきゃと、実家と東京を行ったり来たり。そのうちSNS(交流サイト)やラジオで『福島出身のシンガーの曲です』と楕円桜が紹介されるようになりました。私には歌うことしかできないなとも感じ、避難所を回るようになりました」

今回のW杯前にも福島で楕円桜を歌うことを予定している(19年3月、横浜市のラグビーダイナーセブンオウス)

「被災地で歌うときは、自分のオリジナル曲は封印して、みなさんになじみのある歌を披露しました。それでも『楕円桜が聞きたい』とリクエストしてくださる方がいて、私にも励みになったのを覚えています。ラグビーの関係者だけでなく、いろんな方に響く歌なのかもしれないと、少し感じ始めました。今回のW杯前も福島で歌うことを予定しています」

――W杯、ジャパンにどんな期待を。

「前回の活躍で、ほかのチームはもう油断しないじゃないですか。それを跳ね返してくれると信じています。決勝トーナメントに駒を進めてもらえたらうれしいな」

「ジャパンらしさは、やっぱり粘り強いことですよね。あきらめず、とにかくついていく。そのガッツと気迫。メンタルの強さは、世界にひけをとらないと思います」

――観戦初心者にアドバイスを。

「私の場合は、NECにいたグレン・マーシュという選手が大好きになったことも、応援に夢中になった理由のひとつだったように思います。最初はルールがわからなくても、かっこいいと思える選手ができると見るのが楽しいかな。その私も今では、スクラムの重要さ、すばらしさが見えるようになってきました」

――楕円桜はラグビーの試合会場を含めて各地で歌われてきました。とくに思い出に残る場面はありますか。

「高校ジャパンが18年の遠征で、19歳以下のアイルランド代表を撃破したときに歌ってくれました。映像をみると、ピッチの上で円陣を組んで歌ってくれていて、すごく感動しました。勝って楕円桜を歌うことを目標にしてくれていたと聞きました。夢のようなシーンでした」

「イングランドやウェールズのように、勝ったときも、つらいときも、みんなで歌って応援する『文化』が生まれてくれたらと思っています。それが今の私の原動力です」

渡瀬あつ子
1975年(昭和50年)4月、福島県南相馬市生まれ。98年武蔵野音大卒。大学在学中にバンドに参加し、ボーカルを担当。2005年にファーストシングル「ひだまり」、08年に「楕円桜」をリリースした。19年は3月29日に始まった全国高校ラグビー選抜大会の開会式や、7月20日に予定する「うえの夏まつりパレード」などで楕円桜を披露。ラグビー関連の曲は他に「プロップROCK」「スクラムの唄」など。

(聞き手 天野豊文 撮影 瀬口蔵弘)

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