みうらじゅん 実は断捨離から始まったコレクション

「マイ遺品にはウケが必要なんです。よく店舗の2階とかに、趣味で集めたものを展示している人がいるじゃないですか。『先代がカメラマニアだったんです。どうぞ、見てやってください』なんて言われても、誰も2階に上がらないでしょ。それはなぜかというと、面白くなさそうだからですよ。

例えばカメラの横に本物の亀とか置いて、『こんなもんまでカメつながりで集めてたんだ!』と思わせるくらい、ひねったり盛ったりしないと、誰も関心を示してくれないんじゃないかな。反対に関心を示してもらえれば続ける気にもなるし、それを残すこともできるかもしれない。

盛るためには、できる限り損をしたほうがいいです。『何のためにそこまで? そんなもん買うために外国まで行ったの?』ってなると、みんなちょっと笑うもんですよ。『コイツ、バカだなあ』と油断が出る。そこを突破口にバーンと入り込める(笑)。そういう意味で旅行は重要ですね。笑ってもらうための移動です。『せっかくだから温泉に入りたい』とか、そんな甘い気持ちはあってはいけないのだと思います(笑)」

すでに価値があるものには興味がない

さまざまなモノを集め続けるみうらさんだが、コレクションに関しては「限度を見定めることも重要」だという。

「ボブ・ディランのレコードを各国盤まで集めていた時に垣間見えたんですけど、膨大な数のモノを集め続けたら、いずれ破産するってことです。猫グッズなんかも大変ですよね。『何? 自殺すんのか?』っていうぐらいの数のグッズが出ていますから。どこが崖っぷちなのか、見定めて戻ってくることも大切だと思います。

そもそも俺のコレクションは誰かが付けた価値に対して疑問を持ったのが始まりです。すでに価値があるものは、あまり興味が持てなかった。

テレビの鑑定番組で『ごめんなさい、5000円です』とか言われてみんながっかりしているけど、いいじゃないですか。自分が100万円だと思っているんだったら、それでいいんですよ。そこは思い込みですから、お金で計れない。そういうものこそが本物のマイ遺品じゃないのかって思いますけどね」

膨大なモノを持つみうらさん。中でも一番大切なモノは?「自分ですかね。理想的ないい自分ばかりじゃないけど、そこもひっくるめて、自分を愛さずには先に進めない。モノも、自分というものがないと集めることもできないし」
みうらじゅん
1958年生まれ、京都府出身。80年、武蔵野美術大学在学中に漫画家でデビュー。代表作に、後に映画化もされた『アイデン&ティティ』『色即ぜねれいしょん』など。またイラストレーター、文筆家、ミュージシャンなど幅広く活躍。04年度日本映画批評家大賞功労賞受賞、18年に第52回仏教伝道文化賞沼田奨励賞を受賞。著書に『アウトドア般若心経』『いやげ物』『マイ仏教』『「ない仕事」の作り方』など多数。

マイ遺品セレクション

「死ぬまで捨てるもんか!」と強い意志を持って収集し続けている「マイ遺品」を、写真と文章で一挙紹介。収集癖の原点である「怪獣スクラップブック」をはじめ、名所がない土地で見かける微妙な風景の絵はがき(カスハガ)、子どもの交通事故防止のために道路脇に立てられている「飛び出し坊や」の写真、町の看板から般若心経の文字をコンプリートして並べた「アウトドア般若心経」など、「世間的には『なぁーんの価値もない』」(みうらさん)モノが並ぶ、「マイブーム」の集大成といえる著書。文藝春秋刊。

(文 泊貴洋、写真 藤本和史)

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