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由紀精密の大坪正人社長

由紀精密の大坪正人社長

池井戸潤氏の小説「下町ロケット」のような会社が神奈川県茅ケ崎市にある――。そう聞いて訪ねた由紀精密(茅ケ崎市)は、切削機械の音が響き、機械油の匂いがぷんと漂う小さな工場だった。社長の大坪正人さん(43)は創業家の3代目。切削加工の高い技術力を武器に、世界の名だたる企業を顧客に得て、倒産しかけていた家業を立て直した。

宇宙から帰還、カプセルの部品手掛ける

事前にリアル「下町ロケット」と聞いていたため、小説の登場人物のような強烈な個性の人が現れるかと思いきや、大坪さんの印象はまるで正反対だった。物静かで、優しい口調で目をキラキラさせて切削加工やものづくりを語る。

宇宙との関わりを聞くと、「大きく公表していなかったんですけど」と切り出した。2018年11月、宇宙から帰還した小型カプセルの開発プロジェクトのことだ。国際宇宙ステーション(ISS)から物資を持ち帰るカプセルで、無人輸送機「こうのとり」に載って無事地球上に戻り回収したと宇宙航空開発機構(JAXA)が発表した。「あのカプセルの姿勢制御用ノズルはうちも手がけたんです」

製造したのはノズルで使われる金属部品の「スラスター」。自動車部品製造のコイワイ(神奈川県小田原市)と共同で、3次元(3D)プリンターで作った。由紀精密の切削加工技術で表面の粗さなどの課題を解決。地球に戻る際にカプセルが受ける衝撃を大幅に緩和し、帰還成功に大きく貢献した。

「無事に着水したと聞き、ホッとした。私自身が新卒で入った会社で使っていたのが3Dプリンター。今度は3Dプリンターで作った部品が宇宙に行って帰ってきた。しかも由紀精密がもともと持っていた切削加工技術も生きた。うれしかったですね」。大坪さんは静かにほほ笑む。

やはり下町ロケットですね、と言いかけると、大坪さんは「でもね」と苦笑した。「小説みたいに派手なこともないし、どこかとけんかしたり、いじめられたりするわけでもない。地道に積み上げた結果なんです」と何度も言った。

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