社員一人ひとりの給与を決めるのに結構長くプロセスをかけているという

白河 ということは、採用面でかなりプラスに働いているのでは。

小泉 はい。うちはずっと採用マーケットには強いです。転職組も人材エージェント経由は少なくて、「メルカリで働きたいです」と直接ノックしてくる人や社員の紹介で入ってくる人が多いのはうれしいですね。

白河 知人や友人に紹介したくなる、というのはエンゲージメント調査でも最高レベルと評価されるポイントです。

小泉 成約報酬が年収の3割程度といわれるエージェントフィーを省ける分、社員の人生のリスクヘッジにコストをかけられる。これは正しいお金の使い方だと思っています。

白河 年収の話が出ましたが、もう一つ、御社の人事制度でユニークだと思うのは「ノーレーティング」という仕組み。日本の企業社会で長らく染み付いてきた「社員格付け制度」をなくすという仕組みですね。メルカリでは一人ひとりの仕事に対する評価を給与に反映していると聞きました。

小泉 そうですね。ランクAの人は一律で年5%昇給する、といったルールは一切ありません。突き詰めれば、「あなたはいくらですか?」という話をしたいからです。ですから、うちの場合は、一人ひとりの給与を決めるのに結構長くプロセスをかけているんですよ。

白河 「あなたはいくら」を決める基準は。

小泉 2つあります。一つは、期初に立てた目標に対する達成度、いわゆるOKR(Objectives and Key Results)ですね。これはできるだけ数値化した目標を立てるようにしています。日本社会だと「なんとなく頑張ったよね」と曖昧な評価がされがちですが、グローバルな環境だとまったく通じないんです。達成したのかしていないのか、測定可能な数値にできるだけ目標を落とし込むことが大事です。しかし、数字さえ到達すればいいのかといえばそれでは不足していて、冒頭に申し上げた「バリュー」に沿った行動ができたかを、もう一つの評価軸にしています。数字を達成していても、「All for One」の行動がまったくできていないメンバーの評価は低くなるという具合です。

白河 2つの評価軸があったほうがいいと判断した理由は?

小泉 例えば、業務の7割がたがルーティンワークである総務部門の社員の評価をどうしたらいいのか。業務改善の目標を数値に落とし込むこともできるかもしれませんが、バリューの評価軸もあることで、「All for One」の欄に「私は日々社員のためにこんな仕事をしている」と書けたり、「Go Bold」の欄には「こんなチャレンジをした」と書けたりする。バリューの評価軸があることで、失敗しても許される、チャレンジ精神をたたえる文化が育ち、会社の成長につながります。バリューの評価とセットにすることで、OKRの数値目標が低かったのではという議論ができると考えています。目標設定と評価は四半期に一度、給与の改定は年2回のペースでやっています。

白河 チャレンジを評価することは本当に重要ですね! 日本の伝統企業はチャレンジして失敗するなら、なにもせずに無難に過ごすほうがいいという価値観が長く続いていますから。

(以下、明日公開の後編に続きます。人材の評価と育成、権限委譲と社内の情報共有などについてお伺いします)

白河桃子
少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「『婚活』時代」(共著)、「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)。

(ライター 宮本恵理子)

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