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家庭優先、だから社員が思い切り働ける メルカリ社長

小泉文明社長兼COO(上)

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NIKKEI STYLE

フリーマーケットアプリで急成長し、2018年6月に東証マザーズ上場を果たしたメルカリ。会社の急成長を支える人事施策を次々と打ち出している。小泉文明取締役社長兼最高執行責任者(COO)にその狙いを聞いた。

思い切り働けるフェアな環境を

白河桃子さん(以下敬称略) 御社はインターネット企業として急成長を遂げながら、働きやすい環境を整えていることでも知られています。16年には、「産休・育休からの復職一時金支給」や「社員の死亡保険加入」といった独自の人事制度「merci box(メルシーボックス)」を導入し、その後、不妊治療支援や病児保育費支援など子育てに手厚い制度も追加投入していますね。ベースとなる考え方を伺わせてください。

小泉文明さん(以下敬称略) すべての制度のベースとなっているのは、「バリュー」と呼んでいる会社としての行動指針です。「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be Professional(プロフェッショナルであれ)」。僕らのミッションである「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」を実現するため不可欠な行動指針として、創業当初からブレずに言い続けてきたバリューがこの3つです。

そして、このバリューを実行できる会社にするには、すべての社員が思い切り働けるフェアな環境を整えなければならない。とすると、ケアすべきはダウンサイドリスク。つまり、子育てや介護といった仕事のパフォーマンスが落ちかねない状況をしっかりサポートすべきだろうと。ライフ面の不安や心配事を最小化するフォローを会社側がしていくことで、いつでも「Go Bold」にチャレンジできる環境を整えたいという考えに基づいてやっています。

白河 「すべての社員が思い切り働けるフェアな環境」って良い言葉ですね。そして自身も幹部クラスも次々と男性育休を取っているところもすごい! ベンチャー企業では、創業期からいる女性社員がライフイベントに突入する10年目くらいからようやく施策に着手するところが多い中で、御社は早くから環境整備を重視していた印象があります。なぜその必要性を感じていたのでしょうか。

小泉 僕や会長の山田(進太郎氏)が、創業して2~3年目のタイミングで第1子が生まれたということも影響していると思いますが、「家族があって、仕事がある」という優先順位が経営陣に共有されています。これは、前世代の経営者とは明らかに違う点でしょうね。経営戦略として、インターネットサービスの業界は「勝者総取り」。やるなら絶対に1位をとらなければ成長できない、という信念が最初からありました。同時に「家族は優先されるべきだ」という価値観も創業当初から持っていました。

白河 上のベンチャー世代とは全く違いますね。最初はとにかく仕事第一のモノカルチャーでやったほうがいいというベンチャー経営者が多いのに。

小泉 ファミリー優先の価値観は、世界を見渡すとすでに当たり前に浸透しています。今後、一層のグローバル展開をしていくとなると、家族を大事にする制度やLGBT含めてダイバーシティーに対応するのは経営戦略として自然の流れではないかなと思います。

白河 小泉さんは大和証券SMBCはじめ伝統的な日本企業での経験もありますが、もともとそういうお考えでしたか?

小泉 ファミリー優先の考えは、学生時代から持っていました。

白河 まさに新世代の経営者ですね。そして幹部経営者やご自身が育児休業を取得されたことも説得力があります。子育て期のダウンサイドを支えないとまずい、という危機感はご自身の経験から実感されたことなのでしょうか?

男性の育休取得は約8割に

小泉 それもありますし、やはり家族に対して十分なケアをすることが、社員の満足度や会社に対するロイヤルティーを高めるために不可欠だろうと考えています。背景にあるのは、会社と個人の関係性が大きく変わってきていること。これまでの社会では、会社が上で個人は下という「タテの関係性」で雇用形態や評価の仕組みもつくられてきたと思うのですが、インターネットの登場以降は個人がエンパワーメント(能力発揮)され、会社と個人は「ヨコの関係性」を築く時代に変わろうとしています。僕らは、「会社と個人は完全なるフェアな関係性にある」と考えますし、だからこそ彼らの要求を満たさなければ簡単に辞められてしまい、競争優位に立てないという危機感を持っています。

白河 社員のニーズを満たす上で、ファミリーのケアを重視しているということですね。お金の報酬だけでなく、いわゆる「ワークライフバランス報酬」もそろえていく。

小泉 そういうことですね。

白河 不安や心配を取り除くダウンサイド施策とは別に、例えば育休期間を独自に延長するような全体を底上げする施策についてはいかがですか?

小泉 そういう意味では、皆に平等に配布する形の福利厚生には消極的です。例えば、他の会社にあってうちにないのが「家賃補助」。どのエリアにいくらくらいの住居費をかけて暮らすかというのは個人の好みであると思っています。一方で、「子育てが理由で思うように働けない」という悩みは、個人ではどうしようもない問題も多々あるのでしっかり会社がケアをする。

白河 ダウンサイドの支援とは、思い切り働けない事由が生じたときに手厚く下支えしますよ、という姿勢なのですね。安心感につながりますね。

小泉 はい。それに、全員に均等に与える補助というのは、「もらえているのが当たり前」という意識を生みやすくて、いざやめるときにハレーションを起こしやすいというデメリットもある気がします。一番大変なときに手厚くケアするほうが、ありがたみを感じてもらえるのではないでしょうか。トータルコストを考えても、全員に毎月数万円の家賃補助を配るより、いざという時に手厚くケアするほうが抑えられます。コストを削減した上でロイヤルティー効果は高いので、経営としても理にかなっているんです。

白河 男性の育休取得も増えていますか?

小泉 今は約8割の男性が平均2カ月くらい取っていますね。復帰後に補う形で、男性にも復職一時金を支給しています。

白河 社員の皆さんからはどんな声があがっていますか?

小泉 男性社員からは「(育休取得を反対される)『嫁ブロック』がなくなった」とよく聞きますね(笑)。つまり、男性でも安心して育休が取れ、子どもを産み育てる上での安心感がある会社に対しては、家族の理解度も高まります。

白河 ということは、採用面でかなりプラスに働いているのでは。

小泉 はい。うちはずっと採用マーケットには強いです。転職組も人材エージェント経由は少なくて、「メルカリで働きたいです」と直接ノックしてくる人や社員の紹介で入ってくる人が多いのはうれしいですね。

白河 知人や友人に紹介したくなる、というのはエンゲージメント調査でも最高レベルと評価されるポイントです。

小泉 成約報酬が年収の3割程度といわれるエージェントフィーを省ける分、社員の人生のリスクヘッジにコストをかけられる。これは正しいお金の使い方だと思っています。

白河 年収の話が出ましたが、もう一つ、御社の人事制度でユニークだと思うのは「ノーレーティング」という仕組み。日本の企業社会で長らく染み付いてきた「社員格付け制度」をなくすという仕組みですね。メルカリでは一人ひとりの仕事に対する評価を給与に反映していると聞きました。

小泉 そうですね。ランクAの人は一律で年5%昇給する、といったルールは一切ありません。突き詰めれば、「あなたはいくらですか?」という話をしたいからです。ですから、うちの場合は、一人ひとりの給与を決めるのに結構長くプロセスをかけているんですよ。

白河 「あなたはいくら」を決める基準は。

小泉 2つあります。一つは、期初に立てた目標に対する達成度、いわゆるOKR(Objectives and Key Results)ですね。これはできるだけ数値化した目標を立てるようにしています。日本社会だと「なんとなく頑張ったよね」と曖昧な評価がされがちですが、グローバルな環境だとまったく通じないんです。達成したのかしていないのか、測定可能な数値にできるだけ目標を落とし込むことが大事です。しかし、数字さえ到達すればいいのかといえばそれでは不足していて、冒頭に申し上げた「バリュー」に沿った行動ができたかを、もう一つの評価軸にしています。数字を達成していても、「All for One」の行動がまったくできていないメンバーの評価は低くなるという具合です。

白河 2つの評価軸があったほうがいいと判断した理由は?

小泉 例えば、業務の7割がたがルーティンワークである総務部門の社員の評価をどうしたらいいのか。業務改善の目標を数値に落とし込むこともできるかもしれませんが、バリューの評価軸もあることで、「All for One」の欄に「私は日々社員のためにこんな仕事をしている」と書けたり、「Go Bold」の欄には「こんなチャレンジをした」と書けたりする。バリューの評価軸があることで、失敗しても許される、チャレンジ精神をたたえる文化が育ち、会社の成長につながります。バリューの評価とセットにすることで、OKRの数値目標が低かったのではという議論ができると考えています。目標設定と評価は四半期に一度、給与の改定は年2回のペースでやっています。

白河 チャレンジを評価することは本当に重要ですね! 日本の伝統企業はチャレンジして失敗するなら、なにもせずに無難に過ごすほうがいいという価値観が長く続いていますから。

(以下、明日公開の後編に続きます。人材の評価と育成、権限委譲と社内の情報共有などについてお伺いします)

白河桃子
少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「『婚活』時代」(共著)、「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)。

(ライター 宮本恵理子)

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