採用早まり焦る企業 就活生に勝機もたらす5つの対策
ホンネの就活ツッコミ論(100)
今年(2020年卒)はゴールデンウイーク10連休の影響もあって、就職活動の動きが例年以上に早まっています。こうした異変については前回書いたとおりですが、この異変続きの2020年卒就活で最も困った立場になるのが、いわゆる「中ぶらりん就活生」です。
中ぶらりん就活生とは聞き慣れない言葉かもしれませんが、2018年12月から今年2月にかけてのどこかのタイミングで就活を始めた就活生のこと。極端に早く始めたわけではなく、かといって3月以降に始めた出遅れ組でもありません。例年であれば、十分に間に合うタイミングなのです。
ところが今年はとにかく就活にまつわる企業の動きが早いため、中ぶらりん就活生は「どうも、先輩から聞いている以上に早すぎる」と焦ってしまいます。こうした中ぶらりん就活生はどうすればいいでしょうか?
対策1:先行する学生への「負けた感」は捨てよう
早めに始めた就活生はすでに内々定をもらっているか、選考がどんどん進んでいる段階です。当然ながら、中ぶらりん就活生は「周囲はもう内々定が出ているのに私はまだこれからエントリーシートの提出。間に合うのか?」と悩んでしまいます。気持ちはわかりますが、変に他の学生と比較するのはやめましょう。どんどん苦しくなるだけです。
後述しますが、今年は企業が10連休の影響で早めに動いているのは事実です。が、中ぶらりん学生にとって、それでもうチャンスがない、という訳ではありません。今年は例年以上に5月以降のチャンスも十分あります。そのチャンスに備えるためにも、変に負けた、と感じないようにしたいものです。
対策2:説明会はどんどん入れよう 5月以降でもチャンスあり
いくら就活が早期に動いている、と言っても、企業のことを知らなければ就活は始まりません。というわけで、中ぶらりん就活生の対策としては、企業説明会の予約はどんどん入れていくことです。
例年であれば、企業説明会のピークは3~4月。5月以降だと、大企業はほぼなく、中小企業も少なくなっていくのがパターンでした。しかし、売り手市場が強まったここ数年、5月以降も説明会を開催する企業が大手・中小を問わず、増えています。
特に今年はゴールデンウイーク10連休が強く影響しています。連休前に企業はひとまずは選考を終え、内々定を出します。当然ながら、10連休中に内定者フォローなどできるわけがありません。その影響で大量の内定(内々定)辞退が出ることも想定済み。内定(内々定)辞退が出て補充の採用を進めることも企業側は織り込み済みです。補充の採用を進める、ということは5月以降にも企業説明会を開催するところが多いことが想定されます。
こうした影響もあって、中ぶらりん就活生が思っている以上に今年はチャンスが多いと言えるでしょう。
対策3:志望業界はこれから変えられるので幅広く見よう
例年、就活の志望業界は早く決めて、絞って選考参加した方がいい、と学生は勝手に思い込みます。思い込むだけではなく、そうした指導をする就活カウンセラーや大学キャリアセンター職員もいます。
確かに就職氷河期によく言われたアドバイスではありますが、ここ数年の売り手市場では全く当てはまりません。これは中ぶらりん就活生も同様です。当初考えていた志望業界から変えよう、と思ったのであれば、さらに他業界を見ていくべきでしょう。
そして、今年は10連休と売り手市場の影響から、例年以上に採用する側のほうが苦しい立場であることが予想されます。「採用氷河期」などという言葉が定着するくらいなのですから。
逆に中ぶらりん就活生にはチャンスが多い時期とも言えます。もし、志望業界に少しでも悩みがあるようなら、他業界も見ていくようにしてください。
対策4:就活カフェやOB訪問で社会人を知る
実はこの原稿を書く直前も就活生の相談にメールで対応していました。話を聞くと、自分一人で色々考えて思い詰めてしまう、そんなパターンをよく見受けます。これは就活に限らず、社会人生活でも何でも同じですが、個人でできることなど限界があります。
様々な人の協力を得て進むのが道理です。これは就活でも同じ。不安に感じることがあれば、OB訪問・社会人訪問をする、あるいは就活カフェで話を聞くなどしてみるといいでしょう。
なお、OB訪問・社会人訪問に絡み、マッチングアプリを使った建設会社社員が就活生に対する強制わいせつ容疑で逮捕される(その後不起訴処分)という事件がありました。今週も元大手商社社員によるOB訪問の女子就活生に対する暴行事件が発覚しています。
いくら就活に役とうとも、社会人側が就活を密室に誘う、あるいは一気飲みを強要する、というのは反社会的行為であり、ありえません。もし就活がOB訪問・社会人訪問で密室に誘われた、一気飲みを強要されたなどの場合は毅然と断りましょう。その際、「選考に有利になるから」「断るなら選考は落ちたと思ってね」などといわれても無視。できれば、その発言を録音した後日、その企業の人事部か法務部に苦情を申してるようにしてください。
万全を期すのであれば、OB訪問・社会人訪問は時間は日中、場所は企業内か企業近辺の喫茶店などにすることをお勧めします。
対策5:適性検査対策は推論・集合に集中
適性検査対策をどこまで進めるか、というのは今年に限らず、例年、中ぶらりん就活生の悩みどころです。まず、時間に余裕がない以上、全部対策するのは不可能です。
そもそも、全部対策をしたところで有効となるのは初期選考だけです。適性検査対策だけでなく、企業研究や面接、グループディスカッションなど、就活対策は他にいくらでもあります。
では、どこをやればいいかと言えば、ずばり、適性検査のうちの能力検査・非言語分野の推論と集合。この2分野に集中してください。
理由は簡単で、まず性格検査は問題文に慣れておくということ以上の対策はできません。うそは論外です。もしついたらむしろ悪い評価が出てしまいます。また、能力検査のうち、国語分野は大半の学生が得点できます。
となると、問題は能力検査のうちの非言語分野。つまり数学です。この分野は文系学生が軒並み得点が取れずに苦しむところ。なかでも、推論や集合は簡単な計算問題ではなく、ちょっとした数学パズルのようなものです。問題に慣れていないと得点できません。
しかも、適性検査対策本の大半は非言語分野について簡単な計算問題を先に並べて、推論や集合は後ろに掲載しています。就活生の大半は前半の計算問題こそ勉強するものの、後半では力尽きてしまいます。つまり推論や集合が出題されても得点できないのです。実際は頻出分野で勉強を相当しておいた方がいいのですが。
こうした事情もあるので、中ぶらりん就活生が推論・集合に対策を集中させると、先に就活を進めていたはずの就活生にあっと言う間に追いつきます。
就活が進むと、色々と時間が不足してきます。中ぶらりん就活生からすれば、時間不足にイライラすることもあるでしょう。ですが、できることはなにか、負けずに進めていくと、実はどうにかなったりします。それが就活、そして社会人生活の面白いところ。負けずに頑張ってみてください。
1975年札幌市生まれ。東洋大学社会学部卒。2003年から大学ジャーナリストとして活動開始。当初は大学・教育関連の書籍・記事だけだったが、出入りしていた週刊誌編集部から「就活もやれ」と言われて、それが10年以上続くのだから人生わからない。著書に『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書)、『女子学生はなぜ就活で騙されるのか』(朝日新書)など多数。
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