100年ぶり確認 珍しいアフリカのクロヒョウを撮影
アフリカで100年ぶりに黒いヒョウが確認された。東南アジアでは黒いヒョウはよく目撃されているが、アフリカでは黒いヒョウは珍しい。
ケニア中央部に潜む「黒いヒョウ」のうわさを聞きつけた生物学者ニック・ピルフォールド氏は、2018年に調査を開始、ロイサバ保護区の低木林にカメラトラップ(自動撮影装置)を仕掛けた。ほどなくして、求めていたものの撮影に成功した。非常に珍しい「メラニズム(黒色素過多症)」のヒョウの決定的な証拠だ。
カメラに収められたメラニズムのヒョウは若い雌で、母親と思われる大きな普通のヒョウと歩いていた。ピルフォールド氏は米サンディエゴ動物園グローバル保全研究所に所属している。
メラニズムはアルビニズム(先天性白皮症)と対照的に、先天的な色素過多によって皮膚や体毛が黒く見える形質だ。メラニズムのヒョウの存在は、ケニアとその周辺で昔から報告されてはいたものの、科学的に裏づけられたことはほとんどない。
2019年1月に学術誌「African Journal of Ecology」に発表された写真は、アフリカでは100年ぶりとなるメラニズムのヒョウの科学的記録だ。
2017年の時点で裏付けが取れていた目撃情報は、1909年にエチオピアの首都アディスアベバで撮影され、米国ワシントンD.C.の国立自然史博物館に保管された1枚の写真のみだった。
ピルフォールド氏は「クロヒョウの目撃談を聞いたことがあります。いわば伝説的な生き物なのです」と話す。
「ヒョウの狩猟が合法だった頃(1950~60年代)にケニアでガイドをしていた年配者によると、黒いヒョウを捕まえてはいけないという暗黙のルールがあったそうです」
ヒョウの生息域はアフリカからロシア東部にまたがり、9つの亜種が存在する。ピルフォールド氏によれば、ヒョウの11%がメラニズムと考えられているが、そのほとんどは東南アジアの個体だという。東南アジアのヒョウの生息地は熱帯雨林で、木陰が多い。
ネコ科動物を保護しているNPOパンセラで、ヒョウ遺伝子解析プロジェクトのコーディネーターを務めるビンセント・ノーデ氏は、メラニズムのヒョウは東南アジアの熱帯雨林に溶け込みやすく、狩りに有利だと説明する(ノーデ氏は、今回の研究には関わっていない)。
一方、ケニアでは、半乾燥帯の低木林で目撃されている。「ケニアのヒョウはサバンナに近い環境で暮らしています。そのため、環境に適応するうえで、メラニズムは利点になりません」とノーデ氏は話す。
ただし、夜行性であることを考えると、少し色素が多くても不利にはならない。いずれにしても、アフリカのクロヒョウが珍しいことに変わりはなく、色素過多の原因となっている遺伝子変異が東南アジアのクロヒョウと同じかどうかさえもわかっていない。
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 2019年2月14日付記事を再構成]
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