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接客充実などお得感 広がる完全キャッシュレス飲食店

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現金を使えない、完全キャッシュレスの店がぽつぽつと目に付くようになってきた。背中を押しているのは昨年4月の経済産業省による「キャッシュレス・ビジョン」の発表。同報告書では、世界の中で後れをとっている日本のキャッシュレス決済の比率を2025年までに4割まで高めるという目標を掲げ、メディアでも頻繁にキャッシュレスという言葉を目にするようになった。スマートフォンを使った決済(スマホ決済)では、先行するLINEや楽天に加え、昨年10月にはソフトバンクヤフーが出資するPayPay(ペイペイ)がQRコードを使って支払う「QR決済」のサービスを開始。100億円還元キャンペーンを打ち出し、一気に同決済への注目も高まった。

実は、飲食業界では2017年に完全キャッシュレス店が早々とお目見えしている。ファミリーレストラン大手のロイヤルホールディングスが同年11月に東京・馬喰町にオープンした「GATHERING TABLE PANTRY(ギャザリングテーブルパントリー) 馬喰町店」がそれ。キャッシュレスだけでなく、調理からローコストの店舗づくりまで次世代を見据えた店舗運営の研究開発を行う。

同店では、テーブル上のタブレット端末、iPadから料理やドリンクをオーダー。支払いは、クレジットカードから交通系をはじめとするICカード、スマホ決済まで幅広いブランドに対応しているが、特にLINEペイ、PayPayなどQRコードを使ったスマホ決済の場合は、スタッフの対応を待つことなくタブレット端末からセルフ決済ができる。

こうした店舗のIT化を進めると、店のスタッフと客のコミュニケーションが薄れるように思えるが、同店の一連のシステムは「どうしたら接客と調理に集中できるのかを考えて開発した」(ロイヤルホールディングス野々村彰人常務)と言い、セルフ決済の場合も、客が決済したことがスタッフが身に付けるApple Watchに振動で伝わるようになっている。そして、退店の際にはスタッフが客の見送りに出るなど、きめ細やかな接客を心がける。

キャッシュレス化によりレジ締めなど金銭に関係した業務が一切なくなるなどで、店長の業務時間の使い方が大きく変わったという。グループのほかのフルサービス(サービス全般をスタッフが行う店)の店の店長との比較では、管理・事務に使う時間が19.0パーセントから5.6パーセントと大幅に減少。一方、接客調理に使う時間が55.9パーセントから67.4パーセントと増加した。「現金が店舗にないことで店長はプレッシャーがなくなり生産性も上がる。また、店のスタッフもお客様に料理の説明をするなど、人ならではの仕事に特化できる」と、経営企画部吉田弘美コーポレートコミュニケーション担当部長は利点を挙げる。

「GATHERING TABLE PANTRY」は店名通り、人々が集まってわいわいしながら食事をする「ギャザリング」がテーマの店。一皿で食事がすむような一人客のための料理ではなく、いくつかの皿を2人以上でシェアしながら食べてもらうことをイメージした料理がメニューに並ぶ。価格は300~1000円台前半と手ごろな設定。

ハウスワインは野々村氏自ら20、30本の試飲から選んだ自慢のバリューワインで、赤白共グラスで400円と450円の2種。パリッと焼き上がったフランス・アルザス地方のピザ風郷土料理タルトフランベからアルデンテに仕上がったパスタ、ボリューム感のある肉料理まで、ワインやビールに合いそうな料理が並ぶが、驚くのはすべてこれらが火も油もないキッチンで調理されているということだ。

キッチンで使用するのは、パナソニック製のマイクロウエーブ コンベクションオーブンなどの調理器。マイクロウエーブ コンベクションオーブンはいわば電子レンジ付きオーブンだが、パナソニックとの共同研究により鍋やフライパンと同じような加熱を料理ごとにプログラムにしてオーブンに差し込むSDカードに記録。セントラルキッチンから運ばれた冷凍メニューを調理している。メニューの番号を入力すれば、それぞれ異なる調理工程をプログラムが再現してくれるため熟練度が必要なく、調理経験のないスタッフにキッチンを任せることもでき、人員のやりくりがしやすいというメリットも大きいと言う。

「GATHERING TABLE PANTRY」だけでなく、キャッシュレス店では、決済の負担を減らすことで接客に力を入れられると考えている店が多い。

2014年にオープン、都内に8店舗を展開するチョップドサラダ専門店「クリスプ・サラダワークス」は昨秋より、完全キャッシュレス店を展開。発想の原点は「お客さんに一番、喜んでもらえる店をつくろう」(事業主体のクリスプ宮野浩史社長)ということにある。

チョップドサラダとは、様々な具材を同じような大きさに細かく刻んだ近年人気のサラダのスタイルで、同店はその先駆けの店だ。店頭では、カウンターの後ろに並ぶ野菜や雑穀米、肉類やチーズなどの具材やドレッシングを自由に選んで組み合わせるほか、「クラシック・チキンシーザー」など具材・ドレッシングをあらかじめ組み合わせたお薦めサラダもある。意外にも夜の利用客が多く、「特に夜9時ぐらいから、軽めにおいしいものを食べたいというお客様の来店が多い」(宮野氏)。ヘルシー志向が強い昨今の流れを反映しているのだろう。

クリスプは経営理念に「熱狂的ファンを作る」ことを掲げる。「飲食店はご飯を食べるだけではなく体験が大事。例えば、夜遅くお店に来てくれたお客様に『お仕事大変ですね』などといった声がけをする。スタッフがそうした対応をできる余裕を作るために注文や決済をIT化しようと考えた」(宮野氏)と言う。

完全キャッシュレス店の前段階として、クリスプは2017年に事前注文から決済までできるモバイルアプリをリリース。現在1万5000人にのぼるユーザーがいるアプリで、全店の1カ月の注文のうち1万件はモバイル注文だという。現在は3店舗が完全キャッシュレス店で、店内にセルフレジのためのタブレット端末を設置。決済方法は利用者が多いクレジットカードとデビットカードに絞り、決済用端末をタブレットの脇に置く。アプリの利用者は事前注文することが多いが、店内の注文にも利用できるため、タブレット端末ではなく席についてからゆっくりとオーダーしたい親子客などの利用が目立つ。

同チェーンでは、従来2時間に1度行っている「キャッシュカウント」(現金集計)やレジ締めなどの作業がなくなったことで、キャッシュレス店では90~120分スタッフの勤務時間が減少。そうした余裕が、接客の向上につながっているという。

一方、昨年10月、東京・中目黒駅近くにオープンした完全キャッスレス店はタコス専門店「TACO FANATICO(タコ ファナティコ)」。飲食大手のグローバルダイニングが手掛ける。日本の店舗でのクレジットカード決済は平均4割だが、同社の米国子会社の運営するサンタモニカの店舗「1212(Twelve Twelve)」では、6、7割の客がクレジットカードで決済する。「早くから世の中に先行する形で完全キャッシュレス店を出店したいと考えていた」(中尾慎太郎CFO)と言うが、スタート店としての適正規模や業態を模索する中、22席という小規模店の「タコ ファナティコ」でスタートすることになった。

キャッシュレスによる一番の効果は、店に現金がないことによる店長の負担軽減。最終的には、全店をキャッシュレスにすることも視野に入れている。客の半数は外国人だという「タコ ファナティコ」。決済ブランドが乱立する中、「多くのお客様に対応できるよう、現在はなるべく間口を広げたい」と中尾氏は言う。

同店ではすべて料理を店内で手作り。看板メニューのタコスの皮は、日本で多い小麦粉を使ったものではなく本場メキシコ同様にトウモロコシの粉マサを使って作る。黄色いスタンダードな皮のほか、ビーツを混ぜたピンク、竹炭を使った黒、クミン入りのオレンジ色と4種類のタコスの皮を用い、料理は色鮮やか。メキシコの具材だけでなく、目の前で揚げるエビの天ぷらや豚の角煮を具としたものなど、個性的な10種のタコスがメニューに並ぶ(4月7日までは桜色のピンク生地のタコス5種のみ)。和風の具は意外にもタコスの皮と相性が良く、満足感もある一品だ。多いときには1晩で300個ほどのタコスが出るという。

米国では日本のしめのラーメンのように、しめにテキーラを飲みながらタコスを食べる人も多いと言い、カウンターがぐるりとキッチンを囲む店は、メインの食事に利用するより、2軒目など気軽に立ち寄る客の利用を想定している。

テキーラは日本ではまだ一般的な酒ではないイメージだが、「ストレートで飲んだり、オンザロックで飲んだり、ウイスキーと同じような楽しみ方ができる」と中尾氏。テキーラには、たる熟成の期間の違いでブランコ、レポサド、アネホ、エキストラアネホといった種類があり、米国では熟成度違いの飲み比べメニューもよく見るそう。店ではテキーラとメスカルを合わせ100種類以上用意し、女性に人気の珍しいコーヒー味のものも。値段は1ショット45ミリリットルで500円からだが、少々酒に酔っても会計を間違えるということはなさそうだ。

最後に紹介するのは、今年1月に東京・三田にオープンした「トリ&ハイ 本店」。「自分の好きなハイボールを見付けてください」というユニークなコンセプトの店で、ドリンクは基本的に飲み放題のみ(一部、別料金のドリンクあり)。各テーブルに数銘柄のウイスキーと強炭酸のサーバーが置かれ、自分で好みのハイボールが作れるようになっている。

キャッシュレス店としたのは、現金が店にあることで盗難リスクや煩雑な業務がなくなることが大きい。「決済の手数料がかかってくるが、キャッシュレス比率が上がってくればこれも下がるはず。レジ締めなどの労働時間を考えれば、手数料を払うのは合理的」(竹長剛オーナー)と考えたという。店頭で完全キャッシュレス店ですと案内して、入店しなかったのはオープン2カ月で2組ぐらいと、キャッシュレスに対する客の心理的ハードルは高くないと感じている。

竹長氏は異業種から飲食業界に参入した。人手不足の中、スタッフがドリンクを運ばなくていいというメリットのほか、「お客様が自分で作るという体験の楽しさがある」(竹長氏)。飲み放題は60分、90分、120分の時間制で、一番利用者が多いという90分で1680円。テーブルで作るハイボールのほかにも、ワインやビール、フルーツを漬け込んだハイボールなども飲み放題メニューにそろえる。

料理はタブレット端末でオーダー。目玉料理は鶏肉版「焼き肉」で、手羽先からぼんじりやレバー、さえずりまで様々な部位を用意する。中心客層は30~40代だが、ユニークなシステムがハイボールファンにアピール。オープン1カ月で8回来店した人もいると言い、7割が男性客だ。

ビジネスマンをターゲットとした飲食店が多い浜松町に先日オープンしたビルの1、2階に入居する居酒屋に行くと、1階の立ち飲みスペースはキャッシュレス決済のみだった。理由は「これならアルバイトにも安心して任せることができるから」(店主)。キャッシュレス店を目にする機会はこれからぐんと増えそうだ。

*価格は「クリスプ・サラダワークス」は税込み、それ以外は税別

(フリーライター メレンダ千春)

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