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「営業は長時間労働」女性が変える 現場発で提案競う

2019/3/26

■営業の管理職の少なさが課題

エイジョカレッジは「10年で営業女性の9割が現場を離れる」という現状に危機感を覚えた日産自動車、リクルートホールディングス、キリン、日本IBMなど7社が集まり、14年に始まった。当初は議論を重ね、「女性は営業を続けられない」という思い込みと長時間労働が課題と特定。続いて生産性の向上、次世代の営業モデルづくりへと活動を発展させてきた。

現在は参加企業・業種が広がり、異業種合同で研修・提言をする活動も。意見交換を通じ、提案力が高まっている。運営に携わるコンサルティング会社、チェンジウェーブ(東京・港)の佐々木裕子社長は「女性のためだけでなく実際に営業の働き方を変えられるアイデアが出てくるようになった」と話す。

営業はいまだ男性優位だ。厚生労働省の雇用均等基本調査(16年度)では「男性のみ配置の職場がある」という割合が営業部門では44.6%。人事・総務・経理(5.0%)や販売・サービス(17.9%)などと比べ最も高い。

高い営業力で知られるリクルートも女性営業職対象のキャリア研修という珍しい取り組みを18年度から始めている。営業職から管理職になった先輩女性の話を聞き、長期的なキャリアデザインを自ら書き示す。「長期の目標を立てると何をやりたいのか見定めるきっかけになる」(人事統括室ダイバーシティグループの鉄原佳奈さん)。19年度も規模を拡大して開く予定だ。

営業女性の足元の課題は何か。全国の営業職の女性ら約3600人を束ねる一般社団法人、営業部女子課の会(東京・港)の代表理事で、人材育成コンサルタントの太田彩子さんは「営業部門で働き続けて管理職になるという女性のロールモデルがまだ少ない」と指摘する。

生命保険・損害保険業界はIT(情報技術)の浸透や女性の活躍推進のため、内勤の女性社員を営業職に転換する動きが進んでいる。三井住友海上火災保険は19年度からは営業経験がある女性社員による営業サポーターを拡大して、業務転換した女性社員を後押しする。「女性が働きやすい環境をつくることは、男性や組織全体にとってもワークライフバランスの拡充につながる」(太田さん)。女性自身が主導する改革は、さらに広がりそうだ。

■仕事が好きだからこそ ~取材を終えて~

担当者が1人で他の人と情報共有できない。顧客の都合に合わせざるを得ない。体育会系の男性社会――。営業職の女性の課題は根深い。「エイジョカレッジ」ではオンライン面談などITを活用した提案があった。顧客には直接会うのが当然という感覚に風穴を開けるものだと感じた。現場の女性発で、課題を明確にし、対策を考える取り組みが営業職の働き方を抜本的に変えられれば、その方法や考え方を他の職種に広げられる可能性がある。

一方、営業女性からはなお「ロールモデルがいない」という言葉を多く聞いた。女性のライフイベントのなかで、結婚と仕事は両立しやすくても、妊娠・出産を経て、従来どおりに働き続けるのは容易でない。特に営業のハードルは高いが、「本当に好きだと思える仕事を主体的にしていくことが、自分自身を輝かせる」(太田さん)という言葉が印象に残った。

(増田有莉)

[日本経済新聞朝刊2019年3月25日付]

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