億単位の損失、乗り越えた経験を武器に 石田裕子さんサイバーエージェント執行役員(折れないキャリア)

2019/3/30

「数字を1桁間違えるなどの小さな失敗は毎日。新人時代は反省ばかりの日々だった」。サイバーエージェントで唯一の女性執行役員として新卒採用を担う。自身は就職氷河期に20社近い内定を得て、内定クイーンの名をはせた。入社後は広告営業畑を歩み、目標の2倍、3倍の成績をあげるなど数々の伝説を築いた。華々しい経歴と裏腹に、「完璧とはほど遠い普通の人間」と遠慮がちに笑う。

いしだ・ゆうこ 慶応大学卒業後、サイバーエージェントに入社。子会社2社の社長を経て人事担当の執行役員に就任。37歳

入社2年目、ようやく仕事を覚えてきた頃、顧客企業と口約束のみで契約書を交わさなかったため、会社に億単位の損失を負わせてしまった。会社同士の取引自体なくなりかねない問題に発展し、担当を外れることに。しかし「このまま何事もなかったかのように他の仕事はできない」と上司に続投を掛け合った。

相手の会社とは信頼関係を回復。結果としてより大きな発注につなげることができた。「失敗しても終わりじゃない。失敗を乗り越えた経験こそ武器になると早めに気づけたことは大きかった」と振り返る。

猪突(ちょとつ)猛進に仕事に励み、女性初の局長職など最速で出世街道を突き進んだ。ところが管理職の仕事に慣れ始めたとき、社長から「怖い上司になるなよ」とくぎを刺された。部下から「石田さんと同じように脇目も振らずに働かないと、管理職になれない」と思われては、信頼や支持を得られないと、このひと言で気づいた。

自分がどう見られるか、意識するようになった。せっかちな性格で早口で話す癖は威圧的な印象を与えがち。洋服はダークカラーのスーツ一辺倒では印象が強すぎる。やわらかな色味や素材感を意識して着始めた。自分の立ち居振るまいの一つ一つが部下や取引先へのメッセージになる。「偉ぶるのではだめ。チームで成果を出して行こう」

対話型マネジメントは自身だけでなく組織の雰囲気を変えた。第1子妊娠中に初の女性統括に昇進した。

私生活は2児の送迎から日々の食事作りまで忙しい。ただ子育てと職場のマネジメントは似ていると大きな気づきを得ている。「この子にはこの環境が合う」「こういう言い方が響く」。成長を見ながら機会を与える。重要なのは「先回りして私がやるのではなく、本人に失敗させてみること」と笑った。

(聞き手は松原礼奈)

[日本経済新聞朝刊2019年3月25日付]