書店員おすすめマンガ 1位は学園バトル『呪術廻戦』

日経エンタテインメント!

「全国書店員が選んだおすすめコミック2019」において、書店員1100人の投票から1位に選ばれたのが学園バトルファンタジー『呪術廻戦(じゅじゅつかいせん)』だ。「呪い」を題材にした凝った設定ながら物語展開はシンプル、主人公をはじめキャラクターが魅力的で、大人の読者も大いに楽しめる。

舞台は、辛酸や後悔、嫉妬、恥辱など、人間から流れ出た負の感情「呪い」によって、多くの被害が出ている世界。その魔除けのために学校には「呪物」が置かれていたが、封印が解かれ、「呪霊」が現れた。学校に残された友人を助けるため、高校生・虎杖悠仁(いたどり・ゆうじ)は「呪いの王」と呼ばれる特級呪霊「宿儺」の指を飲み込む。呪霊と肉体を共有したことで、対呪いの専門機関「呪術高専」へと虎杖は転入。仲間と呪術を学びながら、壮絶な呪術戦に身を投じていく。

『週刊少年ジャンプ』連載らしいバトルモノだが、その設定や緻密に積み上げられた世界観の説得力は見事。3巻発売時点で累計発行55万部と、巻を重ねるごとに、注目度が増している。「設定は凝っていても、物語展開はシンプルで読みやすい。展開が複雑になると離れていく読者は多いので、そのあたりのバランス感が素晴らしい」(三省堂書店海老名店・近西良昌さん)と絶賛する。

愚直で明るい愛され主人公

まず、主人公がいい。最近の『ジャンプ』の代表作、無個性の少年の成長譚『僕のヒーローアカデミア』などの「才能開発型」に対し、今作の虎杖悠仁は驚異的な身体能力を持つ高校生。そもそものポテンシャルが高い。「主人公が最初から活躍するのは気持ちいい」と、文禄堂荻窪店・山内歩さん。「『人を助けろ』という祖父の遺言から、シンプルな動機で自ら半分呪霊になる。ごちゃごちゃ考えず行動できるのも魅力」(山内さん)。少々おバカな愛され感は、孫悟空や桜木花道など黄金期の『ジャンプ』主人公を思い出させる。

サブキャラクターの配置もいい。熱い主人公の同級生に、クールでクレバ―な伏黒、元気で気の強い女子・野薔薇。学生たちを後ろで支える圧倒的に強い先生・五条、虎杖たちの1歳上の先輩にはしゃべる怪力パンダもいる。『NARUTO』や『HUNTER×HUNTER』『BLEACH』など歴代のジャンプマンガから影響を受けていて、その優れた部分を抽出してアップデートされているのがよく分かる。ギャグのテンポやバランスも良く、「呪い」という深刻な題材ながら娯楽作として楽しめるのは作者の技量だろう。

「ジャンプマンガが好きな層と、マンガ通といわれるマンガ読みの両方に支持されている」(新刊や売れ筋を紹介するウェブサイトの運営・記事執筆をする日販『ほんのひきだし』編集部・芝原克也さん)と言うように、成熟した大人読者にもおすすめだ。虎杖が呪術高専へ入学する際、学長は、呪術を学び、呪いを祓う術を身につけてその先に何を求めるかと問う。「遺言だから細かいことはどうでもいい」との虎杖に対し、「他人の指図で立ち向かうのか?」と虎杖自身に内省させる。虎杖たち学生を教える大人(先生)たちも、抜群にかっこいいのだ。

(ライター 平山ゆりの)

[日経エンタテインメント! 2019年3月号の記事を再構成]

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