埋もれた技術で一歩先へ ものづくり信じる起業家の志TRINUS(トリナス) 佐藤真矢代表(下)

もう一つは、募集したアイデアを審査し、商品化が決まってから実際に量産するまでの過程だ。例えば、17年4月に発売した「花色鉛筆」。木ではなく廃棄された古紙を再生した材料を使っており、鉛筆の断面が花の形で、削りかすも本物の花びらに見えるのが特色だ。佐藤氏がこの材料に着目し、サイトで情報を公開したところ、このデザインが寄せられ、すぐ商品化が決まった。15年3月のことだ。

国際的なデザイン賞を受賞した商品も

削りかすが花びらの形になる「花色鉛筆」もTRINUSから生まれた(同社のホームページから)

ところが、この素材を実際に製品にするには数社の協力が必要なことがわかる。まず、この特殊な紙素材を桜や紅梅、タンポポのような花の形の断面に成形するという難度の高い技術を持つ企業。和の伝統色を表現できる顔料のメーカー。また、書き心地の柔らかい色芯を作る国産メーカーや、少し硬めの鉛筆も難なく削る鉛筆削りメーカー。さらに、パッケージも別会社に依頼した。結局、発売するのに2年の月日がかかった。

ただ、発売すると反響は大きかった。5本1セットで1800円と高価ながら、1年余りで4万本以上を売り上げた。国際的なデザイン賞を受賞したほか、ニューヨーク近代美術館の専門家が選んだ雑貨やインテリアをそろえた「MoMAデザインストア」や、フランスのセレクトショップ「Merci」など世界9カ国で販売されている。

「世の中に商品として送り出すまで寄り添う。そこが当社の強み」。佐藤氏がこだわるのは、日本のものづくりが持っている潜在力を引っ張り出したいとの思いがあるからだ。「例えば、大手メーカーでは面白い製品アイデアがあっても、数十億円単位の売り上げが見込めないと実現できないこともある。ベンチャーが事業を立ち上げれば、その技術は生きるし、もし規模が大きくなれば大手が買い戻せばいい」。もっと柔軟にビジネスを生み出す仕組みが必要だと訴える。

将来は「世界中の技術とクリエーターの力を集め、人を前進させるような製品やサービスをつくり続けたい」と語る。佐藤氏の父親は半導体の元技術者、母親は作曲の仕事をし、絵も描いていたという。「クリエーティブなものへの憧れは常に持ってきた」。ものづくりの可能性を信じるポジティブ思考の源泉はここにもあるようだ。

(村上憲一)

管理職・ミドル世代の転職なら――「エグゼクティブ転職」

5分でわかる「エグゼクティブ力」
いま、あなたの市場価値は?

>> 診断を受けてみる(無料)

「エグゼクティブ転職」は、日本経済新聞社グループが運営する 次世代リーダーの転職支援サイトです

NIKKEI 日経HR


マネジメント層に必要な4つのスキルを鍛える講座/日経ビジネススクール

会社役員・経営幹部の方を対象とした、企業価値を高める経営の実務に役立つビジネス講座を厳選

>> 講座一覧はこちら

今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら