ただ数が増えるにつれ、田舎暮らしへの若者の覚悟も自治体側の受け入れ体制もまちまちになり「こんなはずではなかった」と途中で帰る例も出てきました。川上村のように定着率のよい自治体は首長が隊員を常に気にかけています。隊員同士で悩みを相談できる横のつながりも大切です。地域活性化センターの椎川忍理事長は「隊員のケアを充実させるネットワークづくりや研修で県の役割は大きい」と課題を指摘しています。

椎川忍・地域活性化センター理事長「隊員のケア充実を」

総務省時代に地域おこし協力隊の創設にかかわった地域活性化センターの椎川忍理事長に10年間の評価と今後の課題を聞きました。

――定着した要因は何ですか。

椎川忍・地域活性化センター理事長

「若者の地方志向が高まってきたときに制度を作ったこと、制度としては市町村を補助金でなく、地方交付税で支援したのがよかった。特定の事業のための補助金だと単年度主義で実際に活動する期間は7~8カ月になってしまう。定着するには不十分だ。漠然と田舎暮らしをしたいという人には、やはり助走期間にある程度、所得がないと難しい。そこで使途自由な地方交付税を使って3年間、1人あたり年間400万円を支援する仕組みにした。何にでも使える地方交付税だと『もらったのか、もらわなかったのか、わからない』と言ってくる自治体がずいぶんあったが、『これは本来、自分たちの財源でやるべきことだから地方交付税にした。国が補助金を出してやれと言っているからやるという話ではない』と説明した」

――制度が広がると、応募する人も受け入れる自治体も温度差が出てきます。

「隣がやっているからとか、議会に言われたからとか、という理由で始める自治体もある。人を扱う制度だから、ケアが足りないとミスマッチが起きる。最初のうちはかなり濃密な話し合いをして、若者も覚悟をもって応募していたが、最近は3カ月で帰ってくる例も出てきている。反対に『経験のために行ったけれど、どっぷりはまった』という人もいる。そこは確率論だが、6割が定住しているというのは成果といえるのではないか」

――8000人に向けた課題は何ですか。

「自治体が隊員のケアを充実しなければならない。親戚を受け入れるような気持ちでやってもらわないと。受け入れるなら同時に3人は受け入れた方が悩み事があったときにまず隊員の間で相談できる。隊員OBらによるネットワークをつくり、経験者が相談に乗るようにすることも大切だ。岡山などはOBのネットワークがあるが、そこに県が少しお金を出すようにするのがよい。これからはネットワーク作りや研修で県の役割が大きくなる」

「5000人規模になると、交通事故や火事、犯罪などいろいろなことが起こる。困っている人、トラブルに遭っている人のサポートが重要になる。この制度がよりよい効果を上げていくには、身近なところに相談に乗ってくれる人がいるのが大事だ。『困ったら私のところに相談に来なさい』という人が首長などの幹部にいるかどうかによって全然違ってくる」

(編集委員 斉藤徹弥)

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