キューバのおんぼろ列車 時間が止まったような旅

日経ナショナル ジオグラフィック社

くつろぐ乗客。サンティアゴ・デ・クーバからバヤモに向かう列車(PHOTOGRAPH BY ELIANA APONTE)

撮影したアポンテ氏は、鉄道を撮るプロジェクトに取りかかるにあたって、自分自身を、この国の鉄道旅のリズムに合わせることにしたという。

「サンティアゴ・デ・クーバに列車で行くことを決めたとき、周囲からは『どうかしてる。着くまでに3日はかかるよ』と言われましたが、わたしは『大丈夫、やってみたいから』と答えました」

事実、列車がハバナを出発するのは2時間遅れ、ひたすらのんびりと走る旅は、24時間かけて目的地に到着した。それでもアポンテ氏は、列車の窓から見えたすばらしい田舎の夕景と、乗客たちができるかぎり旅を快適にしようと工夫を凝らしている日常の風景に出会えたのが収穫だったと語る。ある乗客などは、列車に持ち込んだマットレスを通路に敷き、他の乗客たちが窮屈な座席で寝ている脇で気持ちよさそうに寝ていたという。

すれ違う列車から互いに手を振る乗客たち(PHOTOGRAPH BY ELIANA APONTE)

アポンテ氏はこうしたエピソードの中に、「ノ・コハス・ルチャ(「戦うな」の意)」という現地の言い回しにも見られる、キューバ農民たちの辛抱強さを感じ取ったという。

「それは言わば、人生を前向きに生きていこうという精神です」とアポンテ氏は言う。

キューバは現在、海外からの支援を受けて2030年までに鉄道の近代化を進めようとしている。新たな法律により、キューバの鉄道は60年前の国有化以来初めて、海外企業による運営が可能になり、ロシアとフランスの二国がすでに投資を表明している。こうした動きに押されて、キューバの鉄道は未来に向けて走り出すことになるだろう。