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スマホで撮るだけ 津田大介が見た服採寸アプリの実力

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NIKKEI STYLE

ジャーナリストの津田大介氏が気になるモノやサービスに迫る本連載。今回取り上げるのは、スマートフォン(スマホ)で全身を撮影するだけで、服を着たままでも体のサイズが測れるという採寸テクノロジー。実際に体験してみると、オーダーメードの服を作るだけにとどまらない、さまざまな可能性が見えてきた。

服の上からでも正確に採寸

米シリコンバレー発のベンチャー「Original Inc.」が、2018年11月に発表した採寸テクノロジー「Bodygram(ボディーグラム)」は、自分のスマホで体を撮影すれば、撮影データからAIが自動で体形を計測して、誤差1cm以内の正確な採寸をしてくれる技術だ。店舗に足を運ぶ必要はないし、ゾゾスーツのように専用スーツを着る手間すらかからない。

15年に設立されたOriginal Inc.は、オンラインで注文するオーダーメードシャツブランド「Original Stitch」を展開する企業。同社の最高経営責任者(CEO)、ジン・コー氏から聞いた設立のきっかけが面白い。シリコンバレーで働くエンジニアが「服を買いに行くのが面倒くさい」と嘆いていたのを見て、オンラインですぐに買えるオーダーシャツのビジネスを思いついたという。

服を買いに行くのが面倒くさいという人たちには、スマホで撮るだけでサイズが測れるBodygramはうれしいテクノロジーだろう。ただ今のところ、一般の人たちがスマホで利用できるアプリとしては公開されていない。BodygramはB to B(企業間取引)事業として、他社のアパレルサービスへ導入するために開発を進めているという。スマホアプリとして僕らが利用できるのはまだ先になりそうだが、その精度をコー氏の操作で実際に体験する機会に恵まれた。

計測は、身長・体重・性別・年齢を登録し、スマホで正面と側面から2枚の全身写真を撮るだけ。正面の写真を撮る際は、足を肩幅に開き、腕も30度ほど開く。これだけで、周囲の背景から被写体を自動で抽出し、肩幅や首回りなど全身16カ所の採寸をしてくれる。

Bodygramの長所は、服を着たままでも体のラインを正確に採寸できることだ。撮影した写真をBodygramで見てみると、頭頂部から足首まで体の各所に赤いポイントが表示されている。各ポイントをつなぐ線が、服で隠れている体のラインになる。例えば、背中のポイントは服のラインより内側に表示されている。撮影した写真からAIが骨格を自動で検出して、服の厚みを考慮した体のラインを測ってくれるという。

本当にそんなに正確なのか。Bodygramの精度を確認するため、メジャーを使って採寸してみる。

その結果、全ての部位が誤差1cm以内に収まっていた。中には、誤差なしという部位もあるほど正確だった。これまで、様々な人種や体形の被験者を約800名撮影してAIに学習させ、精度を高めてきたという。

日本の工場に泊まり込んで製造工程を短縮

Original Inc.は15年設立の米カリフォルニア州サンフランシスコに本社を構えるアパレルベンチャー。同社が手掛けるオンラインによるオーダーメードシャツ・ビジネスについて、コー氏は「Original Stitchは、かつてビル・ゲイツがパソコンをすべての家庭に普及させたいと思ったように、『すべてのクローゼットにカスタムシャツを』というビジョンを持っています」と語る。「現在のファッション業界は、ファストファッションが主流で、多くの人がS、M、Lの既製品を手にしています。しかし、オーダー品をより手軽に作れるようにすることで、ファッション業界にマス・カスタマイゼーションの革命を起こせると考えています」

現在、世界28カ国でサービスを展開している同社だが、面白いのはOriginal Stitchのシャツを作っている工場が、長野県にある「フレックスジャパン」「山喜」という2社だということだ。もともと日本が好きだったと話すジン・コーCEOだが、米国でスタートした企業が、なぜ日本の工場でシャツを作ることにしたのだろう。

「日本に決める前は、アジアの国々を見て回りましたが、全て大量生産に特化した工場でした。一方、今回契約したフレックスジャパンや山喜は、オーダーメードを作るプロセスや設備、高い技術を備えており、安心して任せることができると考えたのです。また、工場で働いている職人の高いパッション(情熱)を感じて、日本で作ることに決めました」

とはいえ、Original Stitchが考える納期は注文から10日前後。一般的に1カ月程度かかるオーダー品よりかなり早い。オーダーメード品を低価格・短納期で届けるために、シャツを作る工場と協力しながら製造工程を見直して効率化・自動化を進めたという。

「製造工程を効率化するため、工場長に連絡をして『2週間泊まり込みで、オーダーシャツを作るすべての工程を見たい』と依頼したのです。その間は、朝から夜までスタッフと同じ生活をして食事も共にしました」

コー氏は現地に泊まり込んで30~50にのぼる工程を体験し、もともとソフトウエアエンジニアだった同氏の視点で、効率化・自動化できるポイントを一つずつ改善していった。当初は現場スタッフとのカルチャーギャップも感じたそうだが、フレックスジャパンと山喜は非常に前向きで、製造ラインの改革を受け入れてくれたそうだ。「フレックスジャパンや山喜がオープンマインドで迎えてくれたことが、オーダーシャツを今のスピードで世界中に届けられる生産体制の実現につながっています」

今後もスケールの増加に合わせて契約する工場を増やし、生産体制を拡大していくというコー氏の話を聞いていて、Original Stitchのビジネスモデルは、ラクスルのオーダーメードシャツ版だと思った。全国にある小さな印刷所と印刷ニーズをマッチさせるシステムをラクスルが開発して遊休資産をうまく活用しているように、このモデルが拡大して契約できる工場が増えれば、地方の活性化にもつながるだろう。

集めたデータを他分野にも活用

今回、Bodygramを体験していて気になったのが、収集したデータの活用方法。アプリで採寸したデータをもとにフィットした服を選んでいくとすれば、定期的に測り直す必要があり、体形の変化などのデータも蓄積されていく。そのデータがあれば、体調管理や医学的なサービスといった分野にも活用できそうだ。そういうとコー氏は大きくうなずいた。

「収集したデータはファッション業界だけでなく、保険やフィットネス、ライフスタイルなど、さまざまな分野と連携していける可能性があると思っています。例えば、海外のアスリートに写真を撮ってもらうだけで、世界中のどこにいてもデータが収集できて、大会がある選手村に行ったときには、自分専用のマットレスが届いているといったサービスも可能でしょう」

同社がBodygramと同時に発表したのが、Bodygramで採寸したデータを蓄積するデータプラットフォーム「BodyBank(ボディーバンク)」。18年8月には、寝具メーカーの「エアウィーヴ」と業務提携を行い、ユーザーの体形に合わせて硬さを調節した寝具を生産する過程で、Bodygramの採寸データを提供している。

今は、スマホをはじめとしたテクノロジーを通じて、日常生活におけるあらゆるデータが蓄積されている。それらのデータは、サービスを提供する企業にとって宝の山なのだと改めて実感した。

アパレル業界に革命を起こせるか

最後に、この先5~10年にかけて、どのようにファッション業界を変えていきたいかを聞いてみた。「一つは、すべてのアパレル業界にBodyBankを導入することです。アパレル会社は製品を作る上で、アメリカ人と日本人の体形の違いなど、カスタマーのことを理解する必要があります。BodyBankを使えば、より早く・安く・正確に顧客情報を知ることが可能です。また、アメリカや中国に比べて小さい、日本のEC(電子商取引)マーケットを拡大させていきたいとも思っています」

Original Stitichをリリースした当初は、BodyBankのようなデータ・プラットフォームサービスを提供することは全く考えていなかったという同氏だが、オーダーメード品をより手軽に作るために採寸方法を追求していった結果、Bodygramが生まれ、収集したデータをビジネスに生かせるアイデアが生まれていったのだろう。

年初にも話した通り、19年は「オーダーメード」に注目している(記事「5Gがすべての基礎になる 2019年デジタル製品予測」参照)。昨年注目を集めた「ゾゾスーツ」や以前紹介した「SEAL(シール)」(記事「津田大介の背中をスキャン リュックをオーダーで作る」参照)のように、採寸方法が進化し、オーダーメード品がより手軽に作れるようになると考えているからだ。

あとは、この技術や収集したデータをどう活用するか。アパレル業界は、車やスマホに比べて技術革新が遅れている分野だが、これまで注文生産をしていた企業と組めば、一気にオーダー品が身近になる可能性もある。ジン・コーCEOが話すマス・カスタマイゼーション革命が、今後どのように広がっていくか注目したい。

※インタビュー後の2019年3月25日、アパレル大手のワールドがOriginal Inc.の子会社化を発表した。ただBodygramはOriginal Inc.が新たに設立した米Bodygramが中心となって展開するという。

津田大介
 ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。「ポリタス」編集長。1973年東京都生まれ。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。主な著書に「情報の呼吸法」(朝日出版社)、「Twitter社会論」(洋泉社新書)、「未来型サバイバル音楽論」(中公新書ラクレ)など。近著に「情報戦争を生き抜く」(朝日新書)。

(編集協力 藤原龍矢=アバンギャルド、写真 渡辺慎一郎=スタジオキャスパー)

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