子どもがいる環境としてどうか、周囲への迷惑は?
反対意見によくある2つの大きな理由が、「子どもがいる環境として職場がどうなのか」「同僚に迷惑が掛からないか」ということだ。
子どもの居場所としてどうかという点について光畑さんはこう話す。
「会社には、保育(所)としての視点はありません。子どもが機嫌よく落ち着いて過ごせる雰囲気であるかどうかということですね」
ベビーベッドはあるものの、子連れ出勤用に何か設備を整えているというわけではない。「今ある環境で子連れ出勤が可能か、という視点は大事だと思います。自宅と全く同じというわけにはいかないでしょうから」
モーハウスでは、1歳前後の乳児を子連れ出勤の目安にしているということだ。かといって、その月齢を少しでも過ぎたらNGではなく、もっと大きい子を連れてくるケースもあるそうだ。
同社の場合、子連れ出勤しているのは、短時間勤務で週に数日働いている社員とのこと。勤務の間は、赤ちゃんを抱っこしたままパソコンに向かったり、会議をしたり、接客するという感じだ。赤ちゃんのタイミングに合わせて授乳も随時行う。
「子どもが居心地よく過ごすためには、子どもの要求にこたえることが大事」と光畑さん。そのために、会社に来る前にしっかり遊ばせてくるので、仕事中にぐずったり泣き続けるケースはほとんどないそうだ。大きい子は、宿題を持ってくることもあるとのこと。
周囲の環境として、やはり同僚の理解は必要不可欠だ。モーハウスの場合は、授乳服を売っていること、社員が女性ばかりである点は子連れ出勤がしやすい大きな要素だろう。
職場で働く人には子どもを持たない人、子どもが欲しかったけれど授からなかった人などもいる。子どもがいることで仕事に集中できないというケースもあるかもしれない。メンバーの意向を確認して、同意が得られたうえで実施するプロセスは欠かせない。
そうしたことを踏まえてもなお、やってみる価値はあるという。
「(モーハウスのショップがある)青山で、子連れで働いている人がいるなら、私も何かできるかもしれないと考える人もいると思う。仕事じゃなくても、ボランティアでもサークル活動でもいい。そんな考え方のきっかけになれば」(光畑さん)
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筆者が以前、スウェーデンに取材に行ったときに、カフェで打ち合わせをするパパ(32歳)に突撃取材したことがある。育休中のそのパパは、1歳2カ月のお子さん連れで仕事の打ち合わせをしていた。ママが8カ月の育休を取ったあと、バトンタッチして、そのときはパパが6カ月の育休中とのこと。「今日はプロジェクトの打ち合わせだよ」と言っていた。
育休中だから一切働かない、子どもを絶対に連れていけない職場環境であるなど、どうしても難しい時期や職種はあるかもしれないが、働き方自体が多様化していく中、選択肢の1つとしてゆるやかに考えるのは大いにありだと思った。さらに子連れ出勤を働くママだけでなく、ママでもパパでも選択できることが大切だ。
最初から「こうあるべき」にとらわれすぎないことも、子育てしながら心地よく働くことにつながるのではないだろうか。
子育てアドバイザー、育児情報誌miku編集長。資格は保育士、幼稚園教諭2種ほか。リクルートで学校・企業情報誌の編集に携わり、妊娠・出産を機にフリーに。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事ほか。著書は「感情的にならない子育て」(かんき出版)ほか。3児の母。