日本人ならぜひ極めたい とろっとろの軟らかプリン土屋敦の男の料理道(6)

日本のプリンは、なめらかさや軟らかさ、美しい仕上がりにこだわっている?=PIXTA
日本のプリンは、なめらかさや軟らかさ、美しい仕上がりにこだわっている?=PIXTA

日本はプリンのクオリティーに対して厳しく、なによりそのことが日本のプリンをよりおいしくしているのだろう。特に最近は、とろっとろの、本当に美味な市販のプリンがたくさんある。プリン好きとしてはうれしい限りだ。

私が生まれ育った昭和時代はプリンは器から出し、皿の上にひっくり返して供するものだった(これはフランスのクレーム・カラメルが由来だという)ので、皿の上で崩れずに自立するだけの硬さが必要だった。

しかし、最近は器に入ったものをスプーンで食べる形式も多く(まさに茶わん蒸しと同じスタイルだ)、この場合はさらに軟らかく、とろとろに作ることができる。型からきれいにさかさまに出して自立させなければいけない、という呪縛から解放され、日本のプリンはさらに「とろとろさ加減」をエスカレートさせているのだ。

というわけで、型から出さずにそのままスプーンで食べる、「とろとろ」のプリンの作り方を考えてみたい。

プリンの基本的な材料は、卵、牛乳、砂糖である。これにバニラビーンズで香りをつけ、そしてカラメルソースとともにいただくのが最もシンプルな形だろう。

軟らかい、とろとろの状態を作るには、何より固まりすぎていないことが大事だ。プリンは、卵のたんぱく質が凝固することで固まるが、まずは卵の量を控えめにすることが必要だろう。しかし卵はおいしさにも貢献している。あまり減らしすぎてもおいしくなくなる。ほどよい配分を見極める必要があるだろう。

また卵は卵白と卵黄に分けられるが、どちらか一方を使うという手もある。そこで卵白だけ、そして卵黄だけでプリンを作ってみたが、同量の卵白、卵黄で比較すると、卵白だけで作ったほうが軟らかい。しかし、味は卵黄のもののほうがプリンらしい味になる。もちろん色みも卵黄のほうが食欲をそそる。これを全卵だけで作ったものと比べると、やはり全卵が軟らかく、かつ味もよい。全卵に卵白を少量足すとより軟らかくなるが、そもそも、卵とほかの材料の比率を変えることで軟らかさは操作できる。余った卵黄や卵白の処理方法を考えるとわざわざ余分に卵を割って少量の卵白を加える意味はないように思う。

材料の全卵、牛乳、生クリーム、砂糖、バニラビーンズを、なるべく泡がたたないように混ぜる

続いて、牛乳だが、これにはやはり生クリームを加えたい。油脂分が多いほうがとろりとした食感になり、味にコクも出る。また生クリームは水分が少ない。つまり、プリンを固めるのに必要な卵の量も減らせる。卵が減ればより固くなりにくく、よりいっそう、なめらかなプリンにすることができるのだ。

ただし、生クリームだけだとさすがに私にはくどい。牛乳と生クリームの比率は、コクがですぎないよう、くどくなりすぎないようにするという観点から決めるのがいいだろう。

そして砂糖だ。砂糖にも、加熱した際にたんぱく質をかたまりにくくする作用がある。ただ、だからといって大量の砂糖を入れればもちろん甘すぎるプリンとなる。これも味との兼ね合いで分量を決めていくほかないだろう。