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日本人ならぜひ極めたい とろっとろの軟らかプリン

土屋敦の男の料理道(6)

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日本はプリンのクオリティーに対して厳しく、なによりそのことが日本のプリンをよりおいしくしているのだろう。特に最近は、とろっとろの、本当に美味な市販のプリンがたくさんある。プリン好きとしてはうれしい限りだ。

私が生まれ育った昭和時代はプリンは器から出し、皿の上にひっくり返して供するものだった(これはフランスのクレーム・カラメルが由来だという)ので、皿の上で崩れずに自立するだけの硬さが必要だった。

しかし、最近は器に入ったものをスプーンで食べる形式も多く(まさに茶わん蒸しと同じスタイルだ)、この場合はさらに軟らかく、とろとろに作ることができる。型からきれいにさかさまに出して自立させなければいけない、という呪縛から解放され、日本のプリンはさらに「とろとろさ加減」をエスカレートさせているのだ。

というわけで、型から出さずにそのままスプーンで食べる、「とろとろ」のプリンの作り方を考えてみたい。

プリンの基本的な材料は、卵、牛乳、砂糖である。これにバニラビーンズで香りをつけ、そしてカラメルソースとともにいただくのが最もシンプルな形だろう。

軟らかい、とろとろの状態を作るには、何より固まりすぎていないことが大事だ。プリンは、卵のたんぱく質が凝固することで固まるが、まずは卵の量を控えめにすることが必要だろう。しかし卵はおいしさにも貢献している。あまり減らしすぎてもおいしくなくなる。ほどよい配分を見極める必要があるだろう。

また卵は卵白と卵黄に分けられるが、どちらか一方を使うという手もある。そこで卵白だけ、そして卵黄だけでプリンを作ってみたが、同量の卵白、卵黄で比較すると、卵白だけで作ったほうが軟らかい。しかし、味は卵黄のもののほうがプリンらしい味になる。もちろん色みも卵黄のほうが食欲をそそる。これを全卵だけで作ったものと比べると、やはり全卵が軟らかく、かつ味もよい。全卵に卵白を少量足すとより軟らかくなるが、そもそも、卵とほかの材料の比率を変えることで軟らかさは操作できる。余った卵黄や卵白の処理方法を考えるとわざわざ余分に卵を割って少量の卵白を加える意味はないように思う。

続いて、牛乳だが、これにはやはり生クリームを加えたい。油脂分が多いほうがとろりとした食感になり、味にコクも出る。また生クリームは水分が少ない。つまり、プリンを固めるのに必要な卵の量も減らせる。卵が減ればより固くなりにくく、よりいっそう、なめらかなプリンにすることができるのだ。

ただし、生クリームだけだとさすがに私にはくどい。牛乳と生クリームの比率は、コクがですぎないよう、くどくなりすぎないようにするという観点から決めるのがいいだろう。

そして砂糖だ。砂糖にも、加熱した際にたんぱく質をかたまりにくくする作用がある。ただ、だからといって大量の砂糖を入れればもちろん甘すぎるプリンとなる。これも味との兼ね合いで分量を決めていくほかないだろう。

ここまでをまとめると、材料は卵(全卵)、牛乳、生クリーム、砂糖、ということになる。実は、ほかの材料でよりなめらかにおいしくできないかも試してみたのだが(ヨーグルト、クリームチーズ、豆乳、ココナツミルクなど)、味に違和感があって、特になめらかさに貢献しない(ヨーグルト)、舌触りがいまいち(クリームチーズ、ココナツミルク)、コクが足りず、味もいまいち(豆乳)、など。やはり基本のシンプルな材料がよさそうだ。

牛乳と生クリームの比率は、4対1とした。コクがあるのが好きな人はもっと生クリームを入れてもいいだろう。よりとろとろになるはずだ。

また卵と「牛乳+生クリーム」の比率だが、なんとかぎりぎり固まる程度の比率にしたい。そこで卵に対する「牛乳+生クリーム」を増やしながら何度も試してみると、卵が全体の20~25パーセントほどなら固まるようだ。

砂糖の量については、まず味の面から考えてみると、やはり「卵+牛乳+生クリーム」の1割程度がほどよく感じる。試してみると砂糖ゼロより2割ほどの砂糖を入れたほうが明らかに軟らかくなるのだが、甘すぎる。そこで砂糖は1割ほどにしたい。

それらをふまえて、ここでは、卵1個(60グラム)に対して、切りのよい数字になることも考慮に入れ、牛乳200グラム、生クリーム50グラム、砂糖30グラムとした。

まず卵をほぐし、砂糖をよく混ぜ合わせる。砂糖がよく溶けるよう、お風呂ぐらいの熱さに温めた牛乳と生クリームを加えて、よく混ぜる。本格的に作るなら、温めるときにバニラビーンズをさやごと入れるが、バニラ・エキストラクトを少々を使ってもいいだろう。

さて、卵液を混ぜたら、よりなめらかにするために、何度かこしたい。ザルでもよいが、目の細かいこし器を使うとよりよいだろう。

そして容器に入れて加熱するわけだが、じっくりと全体が温まるように加熱したほうがなめらかになる。強火だと卵液内の空気の逃げ場がなくなり穴が開いてスが入った状態になるし、周りだけが硬く、中は液体のまま、という事態になりかねない。また、プリンの容器も、金属よりじっくりと熱が伝わる陶器や厚手のガラスのほうがいい。プリンは蒸し器、オーブン、電子レンジなどで作るが、まんべんなくじっくり火を入れるなら、湯煎して温度があまり上がらないようにしながら、オーブンで加熱するのがベストだろう。

卵は80度程度で凝固するのでそんなに高い温度は必要ない。140度程度に予熱したオーブン、50℃度の湯で湯煎し、じっくりと固まるまで加熱する。加熱時間は当たり前だが容器の大きさによって左右される。我が家のオーブンで、陶器のバットで湯煎し、プリン液を厚手のガラス容器に入れた場合、70分ほどでほどよい軟らかさに固まった。

蒸し器で蒸すなら、蒸気が出てからは弱火にし、途中で火を止めて余熱で仕上げる。電子レンジで作るなら、最低のワット数で少しずつ加熱し、熱がまんべんなく入るよう場所も何度も変えつつ、固めていくのがよいだろう。

とろりと固まったら、取り出して氷水で冷まし、さらに冷蔵庫で冷やして完成だ。

さて、これはあくまでも私が試行錯誤して決めた分量と作り方である。我が家のオーブンのクセなどにも依存しているはずだ。これをベースにそれぞれの分量を増減したり、加熱方法を変えるなどして、好みの滑らかさやおいしさを探ってみてはいかがだろうか。

最後に、私の子供の頃のプリンの思い出を披露しよう。

小学生の頃、家に子ども向けの英国料理のレシピ本があった。これをパラパラとめくっていると、「パンのプディング」というレシピが目にとまった。母親に「プディングって何」と聞くと「プリンのこと」だという。プリンが大好きだった私は早速作ってみた。確か、パンの切れ端とレーズン、卵と牛乳を混ぜたものをオーブンで焼き、シナモンをふりかけたようなものだったと思うが、想像していた「プリン」とはずいぶん違っていた。

それでもめげずに、同じレシピ本に載っていた「ライスプディング」というのを作ってみたのだが、こちらはどろどろの甘いおかゆみたいなもので、そもそも、ごはんを甘く味付けすることに慣れていなかった私は、ものすごくまずく感じ、残してしまった。

それでも、その後もなぜか「プディング」という名に妙に執着してしまい、ヨークシャー・プディングもクリスマス・プディングも作ってみたのだが、いずれもまったくプリンらしくないものだった。

英国でいうプディングというのは、どろどろしたものを蒸すなり天火なりで加熱して固めるもの、といったニュアンスのものらしい。そのなかで我々が想像するプリンに一番近いのがカスタード・プディングだ。

とはいえその後海外で食べたカスタード・プディングは日本のそれに比べて結構硬く、小さな穴、すなわちスが入っているものが多かったし、手で持てるほど硬いものもあった。安いカフェや屋台ばかりで食べていたので高級店ではまた違うのかもしれないが……。日本ほどなめらかさや軟らかさ、美しい仕上がりには執着はないようなのだ。

日本にはプリンと同様に、卵を入れた液体を熱によって固める料理として、茶わん蒸しというものがある。茶わん蒸しにおいては、スが入ったら、それは失敗作であり、また可能な限りだしの量を多くして、なんとかぎりぎり固まるぐらいの軟らかいものがおいしいとされてきた。

そんな日本人ならではの感覚が、日本のプリンにも反映されているのではないだろうか。日本ではプリンに対しても、軟らかくとろとろとしたものを追求する傾向があるように思う。母は、私の幼少期にアルミのプリン型にカラメルと卵液を入れて蒸し上げる蒸しプリンをときどき作ってくれたが、その際は、中にスが入ってしまうかどうか、硬くなりすぎていないかに執着し、プツプツと細かな穴が開いてしまったり、少し硬めの仕上がりだったりすると、「失敗した!」と嘆いていた。

しかし、成人して、欧州や米国、中南米、アジアなどでプリンの類いを食べてみると、もっとひどいものがいくらでも出てくる。世界の水準で見れば、母のプリンは決して失敗とはいえない出来だったと思う。

土屋 敦(つちや あつし)

ライター 1969年東京都生まれ。慶応大学経済学部卒業。出版社で週刊誌編集ののち寿退社。京都での主夫生活を経て、中米各国に滞在、ホンジュラスで災害支援NGOを立ち上げる。その後佐渡島で半農生活を送りつつ、情報サイト・オールアバウトの「男の料理」ガイドを務め、雑誌などで書評の執筆を開始。現在は山梨に暮らしながら執筆活動を行うほか、小中学生の教育にも携わる。著書に『なんたって豚の角煮』『男のパスタ道』『男のハンバーグ道』『家飲みを極める』『男のチャーハン道』などがある

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