ひとり話し続け商談にならず 若手が自分変えない理由
リクルートマネジメントソリューションズ 的場正人
写真はイメージ=PIXTA
今どきの若手社員を、自分で考え、創意工夫し、動けるように育て上げるにはどうすればよいか。リクルートのグループ会社でトップクラスの営業成績をあげてきた的場正人氏の著書「自分で動く若手営業の育てかた」から紹介します。最終回は商談で一方的に話すクセが直らない若手への対処法です。
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入社1年目の小暮くんは、非常にまじめで記憶力が良く、扱っている金融商品についても、マニュアルの内容をしっかり読み込み、頭に入れています。人柄も誠実で礼儀正しいので、営業マネジャーの里中さんも安心していました。
しかし、順調に訪問件数をこなしているにもかかわらず、何カ月経ってもまったく商談につながりません。「なぜだと思う?」と本人に聞いてみても、「ていねいにお話ししているつもりなんですが、全然話が弾まず、次につながらないのです」と言います。里中さんは、小暮くんの営業に同行することにしました。
訪問先はすでに小暮くんたちの金融機関に口座を持っているお客様で、最近引退されたばかりの元町工場の社長さんです。小暮くんは、応接室に通されるなり、商品カタログを取り出して一方的に説明を始めました。お客様は、最初こそ少し関心を示して話を聞いていましたが、途中から上の空になっています。
見かねた里中さんは、小暮くんの話が一段落したところで、「お部屋に入ってから気になって仕方がなかったのですが、立派なトロフィーがたくさん並んでいますね。ゴルフがお上手なのですね」と投げかけました。
するとお客様の表情が変わり、「おお、君もゴルフをやるのかね? 僕は始めたのは遅いんだけど、すっかりはまってしまって、工場を息子に譲ったのも、ゴルフをやりたいからじゃないか、なんて周りからは言われているんだよ」。
ゴルフの話題をきっかけに、会話がはずみ、1時間の滞在の間に家族構成や老後の計画、現在抱えているお金の悩みまで、お聞きすることができました。
「それでは次回は、相続税対策にもなりそうな商品をいくつかお持ちします。こちらの質問用紙にご記入いただくと、より具体的な金額などもお持ちできるのでご検討の参考になるかと思います。いかがでしょうか?」と、次回の訪問にもつながりました。
何度言っても変わらない…
帰りの道すがら、里中さんは言いました。「小暮くん、一方的に商品説明をやってちゃダメだよ。さっきのオレのやり方を見ただろう? 最初はお客様が関心を持ちそうな趣味の話題で盛り上げて、その後はお客様に質問を投げかけるんだ。ヒアリングしないと、お客様のニーズに合った提案はできないだろう。今度からは、一方的に話すのではなく、もっとお客様からヒアリングするようにしないと」