N
Men's Fashion
ひと

2019/3/19

ひと

今回のテーマは「地球から始まる宇宙の旅」。宇宙をめぐる多様なシーンを創造するためにさまざまな素材、手法に挑戦した。「本当にいろんなことをして、大変だった」

「何をやったのかというと、2万円ほどの飛行船のキットを50個限定でつくりました。飛行船には発光ダイオード(LED)がついていて、その光と動きを音楽やDJ機器など様々なインターフェースにリンクできるようにしました。制御ソフトウエアとインターフェースは、誰でも自由に利用したり改良したりできるオープンソースで提供して、購入者が変えられるようにしたのです。本格的な音楽のパフォーマンスとともに、観客の上を光る飛行船が飛ぶといったようなことが自分たちでできる、そうしたプラットフォームをつくったのです」

「興味関心も航空機から移り変わってきました。エンジニアリングを使いクリエイティブなアプリケーションをつくって、みんなに楽しんでもらい、夢見てもらう――そういうことがすごく好きになってきました。東大で航空宇宙工学を研究するという選択肢もあったのですが、このチャンスに、海外へ行こうと。英ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)で博士課程に進もうと決めました」

エルメスのブースでは地球のオブジェのほか、16シーンのディスプレーを手がけた

――将来に対する不安はありませんでしたか。

「RCAで博士号を取得するまで不安はありませんでした。2015年に会社(デザイン・エンジニアリングスタジオ『タンジェント』)を立ち上げてから、不安がたくさん出てきました。やはり守ってくれるオーソリティー(権威)がありませんから」

――日本に帰るという選択肢はありませんでしたか。

「日本にとにかく帰りたくないとか、ロンドンに絶対残りたいとか、そういうことを思ったというよりは、ごく自然にロンドンに残っている感じですね。やはり仕事があるところに拠点を持つべきですし」

「すごく象徴的だったことがあります。2年前にインターン(就業体験)をRCAで募集したのですが、30人ほどの応募があって10人を面接したところ、出身が9カ国に分かれたのです。キプロスとか、アルゼンチン、南アフリカとか。こんなことロンドンでなければ絶対にありませんよね。すごく面白くて、すごくいいなと思います」

「何をやっていいか分からないところから始まった」と振り返る。完成したディスプレーはそれぞれが関連、連動している

――会社の運営はいかがですか。

「タンジェントの主なメンバーは4人。アメーバ的というか、みんなタンジェント以外のこともやっています。それは私もいいことだと思っていて、自分自身、4人以外の人たちと組むことももちろんあります。すごく自由で、会社といえば会社ですけど、英語でいえばデザインコレクティブ。コレクティブ、すなわち集団に近い感じですね」

――これから取り組みたいことは。

「私自身は、もののフォルムを細かく詰めていくような作業よりも、抽象的なコンセプトを考えたりすることが一番好きなので、その対象が大きくなるのは面白いです。オブジェを考えていたのが空間になり、建築空間が都市空間になり――。コンセプトを考えるというのは対象に縛られない点がいいですよね。その幅を広げていきたいと思っています」

(聞き手は平片均也)

吉本英樹
デザインエンジニア 1985年生まれ。2004年智弁学園和歌山高校卒、2008年東京大学工学部航空宇宙工学科卒、2010年同大学院修士課程修了、2015年英ロイヤル・カレッジ・オブ・アート博士課程修了デザイン工学博士。同年タンジェント・デザイン・アンド・インベンション(www.tangent.uk.com)設立。和歌山県出身。
SUITS OF THE YEAR 2021
Watch Special 2021
SPIRE
SUITS OF THE YEAR 2021
Watch Special 2021
Instagram