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有森裕子 安易な鉄剤注射「ドーピングと同じ」

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2019/3/24

長距離ランナーは鉄分不足から貧血になりやすい。(C)Wavebreak Media Ltd-123RF
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皆さんこんにちは。寒くなったり暖かくなったりを繰り返して、季節が少しずつ春に近づいてきましたね。

3月3日には、真冬のような冷たい雨が降るなか、東京マラソン2019が開催されました。2018年に男子マラソンで日本新記録(2時間5分50秒)を樹立した大迫傑選手(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)は、残念ながら29km付近でリタイアとなりましたが、初マラソンの堀尾謙介選手(中央大)をはじめとした4人のランナーが新たに、2019年9月に開催されるMGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ、東京五輪マラソン代表決定レース)の出場権を獲得しました。

さらに、3月10日に開催された名古屋ウィメンズマラソンでも、福士加代子選手(ワコール)ら5人の女子選手が新たにMGCへの出場権を獲得しました。誰が五輪の切符をつかみ取るのか、ますます楽しみな展開になってきました。

■結果を出すための安易な鉄剤注射が高校駅伝で問題に

さて、今回は2018年末に問題になった、ランナーの「鉄剤注射」について考えたいと思います。ご存じない方のために簡単に説明すると、この問題は、高校駅伝の一部の強豪校で、競技力向上のために、指導者や選手が不適切な鉄剤注射を行っていることが新聞報道で明らかになったというものです。

鉄分は、全身に酸素を運搬するヘモグロビン(血液中の赤血球に含まれる色素)の生成に不可欠な栄養素です。鉄分が不足すると、ヘモグロビンが十分に作られなくなって貧血(鉄欠乏性貧血)になり[注1]、動悸(どうき)、息切れ、めまい、頭痛、倦怠感、疲れやすさなどが表れます。血液検査で鉄欠乏性貧血と診断されると、食事ではとりきれない鉄分を錠剤や注射で補う治療が行われます。

マラソンは有酸素運動と呼ばれるだけあって、走っている間は全身の筋肉が大量の酸素を必要とします。貧血で十分な酸素を運搬できなくなると、タイムが落ちるため、貧血対策はランナーにとって死活問題と言えます。

今回問題になったのは、駅伝の指導者が、十分な血液検査も受けさせないまま、走力アップのために、選手に安易に鉄剤注射を推奨していたことです。日本陸上競技連盟の調査によれば、鉄剤注射は近年、中学生ランナーにも広がっているそうです。

■重度の貧血で鉄剤注射を行っていた現役時代

私がこの問題に強い関心を寄せているのは、私自身も現役時代にひどい貧血に悩まされていたからです。

長距離選手は長時間の激しい練習により、大量の汗をかきます。汗の中には鉄分も含まれていて、汗と一緒に皮膚から失われていきます。また、女性ランナーは月経でも経血と一緒に鉄分が失われるため、男性よりも貧血になりがちです。さらに、酸素濃度の低い場所で高地トレーニングを行うと、体の中に酸素を取り込むために鉄を大量に消費するため、ますます貧血になりやすくなります。

現役当時の夏場のトレーニングでは、汗とともに鉄分が失われて体重も3kgほど落ち、鉛のように体が重くなって眠くなることが度々ありました。その時代、血液検査などは頻繁にしませんでしたから、体の異常を訴え、病院に行って初めて、鉄欠乏症貧血と診断されたのです。血液中のヘモグロビンの量が、男性で1dL当たり13g、女性では12gを下回ると貧血と診断されるようですが[注2]、当時の私は6gしかありませんでした。

[注1]貧血はその原因によって鉄欠乏性貧血、溶血性貧血、出血性貧血などがある。スポーツ選手に最も多いのは、鉄分不足によって起こる鉄欠乏性貧血。

[注2]年齢や検査を行う医療機関によって診断基準には多少の差がある。

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