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相続空き家の売却 4月からの新ルールで節税しやすく 不動産コンサルタント 田中歩

2019/3/20

写真はイメージ=PIXTA

相続で空き家になった親の住まいを相続人が売り、一定の条件を満たした場合、譲渡所得から3000万円を控除できる制度が2016年4月に導入されました。しかし、相続が専門の複数の税理士によると、このルールは非常に使い勝手が悪い面があるそうです。このため国は19年度の税制改正で、この制度を適用するハードルを下げました。今回は3000万円の特別控除の制度改正について解説します。

■旧ルール、相続直前の居住が条件

16年4月に始まった制度は具体的には、相続した親の住まいだった家屋が1981年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建物=マンションなど=を除く)の場合、耐震のリフォームをして売却したり、解体して売ったりりすると、一定の条件のもとで3000万円を控除するものです。

通常、売却代金から譲渡経費や取得費を差し引いた譲渡所得に譲渡税率をかけた税金が課されますが、譲渡所得から3000万円まで引き算できるので、条件によってはかなりの節税効果があります。詳細はコラム「相続空き家の特別控除 知りたい疑問に答えます」でも説明しています。

しかし、被相続人となる親が相続発生の数年前に介護上の理由で老人ホームなどに入所している場合、適用されない例が多かったそうです。東京シティ税理士事務所の石井力税理士によると、「相続開始の直前に被相続人の居住の用に供されていたこと」という条件を満たさないとこの特例が適用されません。

■「居住」の証明、煩わしく

被相続人である親が介護上の理由などで老人ホームに転居することはよくある話です。しかし、「被相続人の居住の用に供されている家屋」かどうかは、相続開始直前の現況に基づいて判断されるので、老人ホームへの転居で住まなくなった実家は「居住の用に供されているとはいえない可能性が高くなる」と石井税理士は話します。

「相続の開始直前に被相続人の居住の用に供されていたこと」を証明するには、「被相続人居住用家屋等確認書」や被相続人の住民票、電気やガスの閉栓証明書、水道の使用廃止届出書などで確認する必要があります。

このため、老人ホームに移った際に住民票を動かしてしまった場合などは、この特例が使えない事態に陥ってしまうのです。

■19年度税制改正で使いやすく

こうした問題を受け、19年度の税制改正で、同年4月1日以降に売却した場合、老人ホームに転居していても以下の条件を満たせば3000万円の控除が認められるルールに変わります。

(1)被相続人が介護保険法に規定する要介護認定などを受け、かつ相続開始の直前まで老人ホームなどに入所していたこと
(2)被相続人が老人ホームなどに入所したときから相続開始の直前まで、その家屋について、その者による一定の使用がなされ、かつ事業の用、貸し付けの用またはその者以外の者の居住の用に供されていたことがないこと

この特例を受けるには、相続発生後、3年を経過する年の12月31日までに相続した空き家を譲渡する必要があります。つまり、16年1月2日以降の相続で、かつ19年4月1日以降に譲渡すれば適用される可能性があります。

親が一人で住んでいた実家が空き家になったままならば、今回の改正で制度適用のハードルが下がるので、この特例の適用を受けて売却を検討してみるのもよいでしょう。

■「取得費加算の特例」とは併用できず

石井税理士によると、特例では譲渡価格の上限が1億円とされおり、被相続人の居住用家屋および土地を取得したすべての相続人の譲渡対価の額で判定するルールがあります。

一方、相続税を支払った場合、相続の申告期限の翌日から3年以内に相続した不動産を売却すると、かかった相続税のうち一定金額を譲渡資産の取得費として加算できる「取得費加算の特例」もあります。譲渡所得を減らす効果があり、いわば相続した不動産を売却すると相続税が安くなる特例です。

ただ、こちらの特例は3000万円の特別控除と併用できないので、どちらを選択すべきかについては慎重に検討する必要があります。

田中歩
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション(住宅診断)付き住宅売買コンサルティング仲介などを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」に参画。

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