金を抱え込まない 長期投資に踏み出そう(澤上篤人)さわかみ投信会長

日経マネー

写真はイメージ=PIXTA
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澤上篤人(以下、澤上) まもなく「平成」が終わろうとしている。今月は平成という時代を、長期投資の立場から草刈と検証してみよう。

お金を抱え込んだ平成の30年

澤上 振り返ってみると平成の30年間で、日本経済は本当に駄目になってしまった。その間に、新興国はもちろんのこと、米国も欧州も経済規模を2倍以上にしている。口惜しい限りだが、日本全体では仕方がないといった無力感に覆われている。

草刈貴弘(以下、草刈) 昭和から平成に変わった時、私はちょうど10歳でした。子供ながらに平成バブルの勢いのような時代の雰囲気を覚えています。小学校4年生くらいですから、社会科の授業では「太平洋ベルトの工業地帯」や、「自動車を筆頭とした工業製品の高い国際競争力」といったことを習っていたと思います。もちろんそのような高尚な内容ではありませんでしたけどね。三菱地所がロックフェラーセンター(正確にはそれを保有するロックフェラーグループ)を買収するなど、「強い日本」がニュースをにぎわせていたこともよく覚えています。

澤上篤人氏(撮影:竹井俊晴)

澤上 バブル期までの日本の財政は、ドイツ以上の健全さを誇っていたんだよ。ところが、今や先進国で最悪という財政赤字を抱えている。国の借金はGDP(国内総生産)の2年分に当たる1100兆円にまで膨らんだ。

草刈 それも子供の頃に習いましたが、当時と今とでは、随分話が違いますよね。GDPは500兆円を超えた1994年あたりから、成長ペースが鈍化しますが、政府の債務は増え続けます。政府の借金が、経済成長にほとんど貢献してこなかったことを表していると思います。

澤上 一方、日本経済が成熟したことで、皆、お金を使わなくなってしまった。消費は伸び悩み、個人や家計の手元にある現金と預貯金は、30年間で560兆円も積み上がった。これだけの資金が消費などで経済の現場に回っていたなら、単純計算ながら日本経済は年3.4%前後の成長を遂げていたことになる。GDPは1300兆円を超え、中国経済といい勝負ができていたはずだよ。何とも残念な話だよね。

無責任が横行、日本全体がゾンビ化

草刈 バブル崩壊の余波もあったのではないでしょうか。企業も国民も一斉に緊縮路線に走り、お金を抱え込んでしまった。おかげで経済が成長しなくなる。政府が代わりにせっせとお金を使ったけれど、景気の浮揚効果は薄く、気が付いたら停滞期が20年も続いてしまった……ということですよね。

澤上 どうして、こうもダラシなくなってしまったのか? 銀行や企業がバタバタ潰れると、失業者が街にあふれて景気が悪くなる。それを防ごうと、政府は超低金利、ついにはゼロ金利へと大きく金融政策のかじを切った。同時に総合経済対策とかで大量のお金を市中にばらまいた。

それが結果として、日本の経済全体を、何でも国頼みのゾンビにしてしまったんだな。資金調達コストなど、まるで考えない、弛緩した経営のゾンビ企業やゾンビ団体が世の中を跋扈(ばっこ)。自助自立の気概を持った企業を押しのけ、好き放題をやっている。

こんな状況下で、われわれ長期投資家は何をなすべきか? 答えは簡単だよね。

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