定年後はインフレに負けぬ運用 物価連動国債は一案経済コラムニスト 大江英樹

写真はイメージ=123RF
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厚生労働省の社会保障審議会年金部会の委員を務める慶応義塾大学の権丈善一教授は我が国の社会保障分野で多くの優れた論文や著作を出しています。その著作「ちょっと気になる社会保障」の一節に「アウトプット・イズ・セントラル(Output is central)」という言葉が登場します。

これは「生産物こそが重要」という意味です。もともとは2013年1月に東京で開催された国際通貨基金(IMF)の公的年金に関するシンポジウムで英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のニコラス・バー教授が発言した言葉で、年金受給者は金銭に関心があるのではなく、食料、衣類、医療サービスなどの消費に関心があるという趣旨を説明する際に用いられました。

大切なのはお金が持つ購買力を維持すること

これは確かにその通りです。単純に考えると誰もがお金自体に関心があるように思えますが、それはあくまでもお金があれば生産物を消費できるからです。ところが、いくらお金がたくさんあったとしても生産物がなければ消費できません。

従って、お金以上に大切なのはそのお金が持つ購買力が維持されることです。そして、今後高齢になってもそうしたメリットが20年後や30年後も変わらず得られるということが大切なのです。

公的年金でいえば将来、物価上昇でお金の価値が目減りしてしまったのでは意味がありません。色々問題点があるにしても依然として、公的年金が賦課方式で運営されているのもこれが大きな理由といっていいでしょう。

賦課方式は今必要な給付を現在働く現役世代が支払う方式です。その時々の保険料を現役世代が仕送りするのでインフレに強いという特徴があります。公的年金は給付を抑制するマクロ経済スライドの適用もあって、厳密に物価上昇にスライドするわけではありませんが、将来インフレになったとしてもある程度の対応は可能です。

問題は自分が持っている金融資産です。もし将来物価上昇が起きる時代になり、何もしないでいると金融資産の価値は確実に目減りします。従って、定年退職者にとって大切なのは年金以外のお金をいかに確保し、価値が下がらないようにするかということです。

リスクが高い運用にさらすのは感心できない

勘違いしないでほしいのは、株式投資などでお金を大きく増やそうとか、もうけようということではありません。退職者にとっては、自分が保有する金融資産は年金を補完したり、将来の医療や介護に備えたりするための大切な資金です。