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異次元緩和7年目 なぜ物価は上がらないか(加藤出) 東短リサーチ社長チーフエコノミスト

2019/3/18

写真はイメージ=123RF
「日本のインフレ率は日銀が期待したような持続的な上昇傾向を示していない」

異次元緩和と呼ばれる日銀の超金融緩和策は4月4日で7年目に入る。年率2%のインフレ目標を達成するために開始された同政策だが、1月の生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価総合指数(コアコアCPI)の上昇率は前年同月比で0.4%にとどまっている。

日銀が日本の金利をここまで押し下げたことはかつてなかった。国債や上場投資信託(ETF)などの大規模購入により日銀のバランスシートをここまで膨張させたこともなかった。ドル円レートは、国際通貨基金(IMF)推計の購買力平価レートに比べると顕著な円安が続いている(2019年の購買力平価レート推計値は1ドル=98.25円)。

それなのになぜ日本のインフレ率は日銀が期待したような持続的な上昇傾向を示さないのだろうか? 主な要因を以下に整理してみよう。

■将来不安で家計の値上げ許容度が高まらない

その原因としては、第1に「家計の値上げ許容度」が依然として高まってこないことが挙げられるだろう。

給与の伸びは日本全体ではまだまだ緩やかである。しかも将来不安が根強く存在している。第4次産業革命(デジタル革命)が今後社会を大きく変えていくことが予見される中、自分が勤めている会社は10年後、20年後も健在だろうか?、と心配している人は多い(企業経営者も同様に心配しているので近年の業績は好調でも賃金は抑制的である)。年金などの社会保障制度維持の可能性に強い不安を抱いている人も多い。

今後の名目生涯所得の伸びに楽観できない人が多数派という状況の中で、日銀の事実上の円安誘導が一部の生活必需品の価格を押し上げると、人々は「自分の生涯所得は今後、インフレで実質的に目減りするのかもしれない」と警戒してしまう。その場合の最も合理的な判断は「節約」となる。その結果、他の消費が抑制されている。インフレ率が2%前後の国ではサービス価格が顕著な上昇を示しているが、日本ではそれが起きない。

日本商工会議所の19年2月の「早期景気観測」調査もそれを裏付ける。「根強い消費者の節約志向により売り上げが伸び悩んだ飲食・宿泊業を中心に、サービス業の業況感が悪化した」という。

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