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談志が愛した幻の大ネタ 記念の独演会で初披露の幸せ

立川談笑

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NIKKEI STYLE

「立川談笑月例独演会」という落語会を続けています。おかげさまで200回を迎えました。足掛けなんと19年。パチパチパチ! ということで今回は本業の落語。その裏話をちょこっとご披露しますね。

独演会とは、基本的にわたしひとりだけが出演する落語会です。会場は各地の公会堂などのホール。休憩を挟んで2時間ほどかけて、落語3席を存分にお楽しみ頂きます。都内はもちろん、名古屋、大阪、新潟、日本中あちこちで開催しています。ありがたいことです。

そんな中で「月例独演会」は格別な意味があります。落語家としての活動の軸足のようなものです。当初から標榜しているのが「落語初心者を爆笑させ、マニアをうならせる」、「まだ見ぬ落語の地平を切り開く」。どうです、この設定したハードルの高さったら。またこの「月例」つまり「毎月開催」というのがミソで。

「芝浜」「文七元結」「富久」といった大ネタを談笑版に調整したもの、「ジーンズ屋ようこたん」「シシカバブ問答」「叙々苑」などの古典改作の数々も、すべてこの月例独演会で生まれた大切な演目です。

ホームグラウンドは師匠と同じ

お手本にしているのが、師匠がやっていた「立川談志ひとり会」。お客様からすれば、寄席とは違って時間を気にせずたっぷりと談志の落語を堪能できる場でした。寄席定席からホールへと落語を楽しめるスペースが拡大した時代です。後に落語協会を離れて立川流落語会を興すと、談志にとって独演会は主戦場としての意味を持つようになりました。

そんな談志がながらく「ひとり会」を催していたのが、東京・半蔵門にある国立演芸場。いまは「立川談笑月例独演会」のホームグラウンドにさせて頂いてます。なんとも誇らしい。

 さて、私の月例独演会の記念すべき第200回は2月23日(土)。場所はなかのZERO小ホールでした。いつもは私ひとりだけの出演ですが、今回は特別ゲストに漫才のナイツさんをお招きしました。もちろん集客と内容を充実させてもらうのが目的です。500席ものチケットは前売りの段階で完売。むふふ。計画通りです。ナイツさん、感謝!

もうひとつ特別なのが「ネタ出し」。その日の落語の演目を事前に告知するのです。しかも、あろうことか「九州吹き戻し」。なんたる、暴挙。無鉄砲。

というのも、「九州吹き戻し」は古典なのですが、三遊派宗家こと作家の藤浦敦さんが整えた脚本を口演したのが師匠談志でした。談志が愛した江戸情緒たっぷりの美麗な空気が詰まっています。そしてその後、談志の弟子の中では落語の名人で天才の談春師匠しか手掛けていない。おわかりいただけますか。要するに、とてつもなく難しい話なのです。

ストーリーは単純。江戸にいられなくなった男が九州熊本にたどり着き、働いて金がたまったところで江戸に帰ろうと乗った船が嵐に遭って鹿児島まで吹き戻された……。と、これだけ。単純だからこそ難しい。うっかり手を出すと、おそろしく退屈なシロモノができあがってしまいます。

では、なぜこの演目を選んだのか。一言でいうと「いまの自分から最も遠そうな落語だったから」。わはは。いや、正確にいうなら「イメージから遠そう」だから。「談笑はこんなネタはやらねえだろう」と思われていそうな。誰も談笑と九州吹き戻しを結び付けて想像すらしないような。そんな演目だと考えたからです。

あと、とりあえず口に出してしまって自分を追い込もうという意図もありましたね。ここまで支持して下さったお客様に、何か恩返しができるように汗をかきたいな、と。もちろん汗をかきさえすればどうにかなる、なんて簡単なものではないのですが。

「予想よりずっと良かった!」

演目を発表する前に、脚本を書かれた藤浦敦さんにお伺いを立てました。即座にご快諾。ありがたいことです。頑張ります!

最後に「自分なりの工夫を入れておくれよ」と言われた時は小躍りして喜びました。そうこなくっちゃ!お任せください!

「談志が愛した幻の大ネタ『九州吹き戻し』に挑戦します」と発表しました。さあ、賽(さい)は投げられた。大風呂敷は広げられた。脚本をコピーしたものに、鉛筆であれこれ書き込みながら手をいれていきます。全体のテーマ、人物造形、背景の設定なんかを何パターンも試してみる。当時の海運事情、船の構造、熊本弁をリサーチする。ギャグをつっこむ、などなど。

手探りで話を作っていくのですが、どこかで「いける」と確信するタイミングがやってきます。「うわあ、このネタを掛けたらみんなびっくりするだろうな」と楽しみになってくれば、もうしめたもの。演目に対する愛着を積極的に感じつつ、固まったフレーズをどんどん身体に入れていきます。暗記、暗記。愛着を覚えるほどにどんどん覚えられるものです。

さて、本番当日。わたしの最初の一席は古典落語「壺算(つぼざん)」を現代に直した改作、「4Kテレビ算」。次いでゲストのナイツのお二人による爆笑漫才。

そして休憩を挟んで、後半。江戸時代の旅の話、海運の話からいよいよ「九州吹き戻し」に突入しました。大きく小さく工夫を詰め込んだ自慢の談笑版です。初披露の手ごたえは上々。話は進み、大嵐のシーンまでこぎつけました。

わりとそっけないサゲを言って、頭を下げる。ここまで約70分。気が付くと鳴りやまない拍手の中にいました。幸せな時間です。感謝、感謝…。

終演後、藤浦さんに褒めてもらっちゃった。「良かったよ! 申し訳ないけど予想よりずっと良かった! 売り物になるよ。どんどん演(や)りな!」

落語家として、胸を張れる宝物がまたひとつ増えました。それも、これまでのお客様の支持があればこそ。ありがとうございます。立川談笑、まだまだ前に進みます。お楽しみに!

立川談笑
 1965年、東京都江東区で生まれる。高校時代は柔道で体を鍛え、早大法学部時代は六法全書で知識を蓄える。93年に立川談志に入門。立川談生を名乗る。96年に二ツ目昇進、2003年に談笑に改名、05年に真打ち昇進。近年は談志門下の四天王の一人に数えられる。古典落語をもとにブラックジョークを交えた改作に定評があり、十八番は「居酒屋」を改作した「イラサリマケー」など。

これまでの記事は、立川談笑、らくご「虎の穴」からご覧下さい。

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