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新入社員のメンタル不調、早期対応へ3つのポイント 産業医・精神科専門医 植田尚樹氏

2019/3/16

AさんはB医師に次のように話しました。睡眠が思うように取れず、日中ボーッとしてミスが出る。自分ができないこと、仕事の内容を理解できないことが一番のストレスで、プレッシャーを感じる。嫌な出来事を忘れられない。考えが堂々巡りになって、物事が前に進まなくなる感じがある――。このように、典型的なうつの前兆が表れていました。

■人事総務部門と医師のコミュニケーションが大事

人事総務部門と産業医の日ごろのコミュニケーションが大切。画像はイメージ=PIXTA

このままでは本当に出社できなくなる可能性があり、B医師は精神科医への紹介状を作成し、受診するよう話しました。さらに、会社に対しては翌日から時間外労働をさせないよう、就業時間をしばらく午前9時から午後6時までに限定するよう依頼。土日の出社もやめさせてもらいました。

結果はどうだったでしょうか。1カ月後にB医師が面談すると、Aさんは会社近くに引っ越していました。就寝時間は午後9時~10時半に早まり、最低でも8時間は寝れているようです。ただ、「体調が悪くなったら行こうと思っていたので、(紹介された)病院には行っていない」とのことでした。

これは、自分が精神的な病気にかかっていると認めたくないので、行きたくなかったのかもしれません。あるいは、病院に行ったら休職を勧められるのを懸念していた可能性もあります。

さらに1カ月後の11月上旬の面談でも経過は良好だったため、B医師は就労制限を緩和することにしました。12月から残業は月40時間以内とし、午後8時までには退社。ただし、土日の出社制限は継続しました。その後も問題はなかったので、B医師は1月からは通常勤務に戻し、土日の出社も許可。それ以降、Aさんは体調を崩すこともなく、元気に勤務しているそうです。

今回のケースはなぜうまくいったのか。ポイントは3点あると思います。

1点目は早期発見、早期対応です。Aさん本人が疲れ気味で、普段の自分と違うことに早めに気付きました。連絡を受けた人事総務部門も、産業医との面談を素早く調整し、早いタイミングで専門家に診てもらうことができました。また、産業医のB医師も残業時間や土日出勤による心身の疲労が原因であると判断し、思い切った就労制限を会社に提案しました。

社員本人から「休ませてください」とは言いづらいものです。ましてや新人の場合、体調の変化を自覚していても「会社生活とはこういうものだ」と我慢して働き続け、体調のさらなる悪化を招いてしまうケースが往々にしてあります。早期に専門家の判断を仰ぐことが不可欠といえます。

2点目は社員と人事総務部門、産業医、そして所属部署との円滑なコミュニケーションです。今では多くの企業がメンタル相談の窓口を置いていますが、社員に周知できていないところも多いようです。様々な場面を通じて、気軽に相談できる場所であることを日ごろから社員に周知しておく必要があります。

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