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折り畳みスマホの新感覚 カギは有機EL+ヒンジ 佐野正弘のモバイル最前線

2019/3/19

ファーウェイの「HUAWEI Mate X」。外側にディスプレーが搭載されており、折り畳むと前面と背面の両方にディスプレーが備わったスマホとして活用できる

2019年2月25日から28日までスペイン・バルセロナで開催された携帯電話の総合展示会「MWC2019バルセロナ」に合わせ、ディスプレーを直接折り曲げられる「折り畳みスマートフォン(スマホ)」が相次いで発表された。その魅力や使い勝手、普及への見通しを考えてみたい。

■サムスンとファーウェイが折り畳みスマホを発表

一つは、米国時間の2月20日に韓国サムスン電子が発表した「Galaxy Fold」。本体の内側に7.3インチのディスプレーを備え、本体を開くと大画面のディスプレーが現れる。外側にも4.6インチのディスプレーを搭載しており、折り畳んでいる状態ではそちらを使って通常のスマホと同じ感覚で操作することも可能だ。

サムスン電子の折り畳みスマホ「Galaxy Fold」。7.3インチのディスプレーが内側に備わっており、本体を開くと大画面ディスプレーが使える仕組みだ

そしてもう1つは、スペイン時間の2月24日に発表された、中国華為技術(ファーウェイ)の「HUAWEI Mate X」だ。こちらはGalaxy Foldとは逆に、本体の外側に8インチのディスプレーを備えており、本体を開いた状態で一つの大きなディスプレーとして利用できるだけでなく、本体を「さば折り」するように折り畳むことで、前面6.6インチ、背面6.38インチの両画面スマホとして利用できる。

筆者は「MWC2019バルセロナ」で両機種を実際にチェックしてみた。残念ながらGalaxy Foldはガラスケース内での展示のみで触れることはできなかったが、HUAWEI Mate Xは短い時間ながらも、実際に触る機会を得た。

その上で感じたのは、意外とコンパクトで使いやすいということ。HUAWEI Mate Xの重量は295gとスマホとして見れば重いが、折り畳んだ状態の厚さは11ミリと、やや厚めのスマホといった程度のサイズ感であり、片手でも違和感なく操作できる印象だった。

HUAWEI Mate Xを実際に折り曲げてみたところ。ディスプレーを折り曲げられるというのは非常に新鮮な感覚だ

何より、ディスプレーを自分の手で折り曲げられるというのはこれまでにない新しい体験だと感じた。折り畳みスマホの登場に多くの人が強い関心を寄せているのはよく理解できるところだ。

■実現に貢献したのは「有機EL」と「ヒンジ」

閉じたときは通常サイズのスマホ、開いた時はタブレット並みの大画面ディスプレーを実現するという折り畳みスマホの発想自体は、以前からあるものだ。日本でも、NTTドコモが過去に「MEDIAS W」「M」など、2枚のディスプレーを用いて折り畳めるスマホを販売している。

これまでにもNTTドコモが2017年に投入した「M」など、2つのディスプレーを組み合わせた折り畳みスマホは存在したが、開いた時に継ぎ目が生じる弱点があった

だがこれらは二つのディスプレーを並べて一つのディスプレーとして使うため、2枚のディスプレーの間に継ぎ目が発生するという弱点があった。一方、Galaxy FoldやHUAWEI Mate Xは、1枚のディスプレーを直接折り曲げることで、真の折り畳みスマホを実現している。

では一体なぜ、これまで折り曲げられないというのが常識だったディスプレーを、折り曲げられるようになったのだろうか。各社の関係者に話を聞いたところ、その理由は「有機EL」と「ヒンジ」の2つにあるようだ。

サムスン電子とファーウェイの2種はいずれもディスプレー素材に液晶ではなく、最近テレビやスマホでの採用が増えている「有機EL」を用いている。有機ELは素材そのものが発光するため、液晶のように画面を光らせるためのバックライトが必要なく、曲げられることが大きな特徴の1つとなっているのだ。例えば、以前からスマホのディスプレーに有機ELを採用しているサムスン電子の「Galaxy」シリーズの多くは、その特性を生かして側面がカーブしたディスプレーを採用している。

だがディスプレーの強度を保ちながら、折り畳める機構を実現し、なおかつスマートなデザインにするのは容易ではない。例えば中国のベンチャー企業Royoleは2社に先駆けて折り畳みスマホを発表したものの、本体を閉じた状態でヒンジ部分に隙間が空いてしまうため、スマートさに欠ける印象を受けた。

2機種に先んじて発表された折り畳みスマホ「FlexPai」。閉じた状態ではヒンジ部分に隙間ができるため、スマートさでは他機種に譲る印象だ

スマートなデザインの折り畳みスマホを実現するには、隙間を発生させずに折り畳める、ヒンジの開発が非常に重要なポイントになってくる。ファーウェイはHUAWEI Mate Xのヒンジの開発に3年を費やしたという。

■現時点では非常に高額、コンテンツ不足も弱み

スマホの未来像を見せた両社の折り畳みスマホだが、今後スマホが全て折り畳みスタイルになっていくのかというと、まだまだ時期尚早だ。

理由の一つは価格で、Galaxy Foldが1980ドル(約22万円)、HUAWEI Mate Xが2299ユーロ(約29万円)と、非常に高価だ。最先端の技術をふんだんに盛り込んだことがその理由だろうが、購入できる人はかなり限られてしまうだろう。

とはいえ、MWC2019バルセロナの展示からは折り畳みスマホの低価格化の道筋も見えつつある印象を受けた。というのも、中国のディスプレーメーカーであるチャイナスター(CSOT)など、折り畳み対応のディスプレーを提供するメーカーが増えつつあるからだ。今後メーカー同士の競争が進むことで、折り畳みスマホが手ごろな価格になることを期待したいところだ。

チャイナスターが展示していた折り畳みスマホ用ディスプレー。こうしたディスプレーを提供するメーカーが増えれば低廉化が進む可能性は高い

そしてもう1つの理由は、折り畳みディスプレーを生かすコンテンツやサービスの不足である。折り畳みスマホはいずれも正方形に近い画面比率なので、ウェブサイトや地図などを利用する上では非常に便利なのだが、横長の比率が多い映像コンテンツを再生すると、上下に黒い帯が目立ってしまう。

折り畳みスマホは開いた状態では正方形に近い画面比率のため、映画などの動画コンテンツ視聴時は黒帯の部分が目立ってしまう

折り畳みスマホのディスプレーのポテンシャルを生かすには、その画面比率に合わせたコンテンツが求められることは確かだろう。端末価格だけでなく、サービスやコンテンツが充実することも、普及を占う上で重要なポイントになるといえそうだ。

佐野正弘
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

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