隣家に預けた愛犬が行方不明に 慰謝料は請求できる?弁護士 志賀剛一

あなたとAさんとの間には報酬の約束はないようなので、相談の件は無償寄託に該当すると解されます。そうなると、Aさんの負う注意義務は、プロとしてのペットホテルに課された善管注意義務より軽減された注意義務になります。

報酬の支払いの有無、つまり「お金」で注意義務のレベルが変わるのは納得いかないという意見もあるかもしれませんが、これが民法の思想です。

過失の認定、難しく

では、本件でAさんの注意義務違反を認定できるでしょうか。

相談のケースではAさんがどういう状況でジローを逃がしてしまったのか詳細がわかりませんが、本件と類似する判例があります。ペットホテルが寄託を受けた犬を散歩させている最中に、リードが外れて逃げてしまったという事案です。

この事案の判決理由を読むと、預けた犬は他の犬を怖がるので一緒にさせないよう飼い主がペットホテルに書面で指示を出していたにもかかわらず、ペットホテルが他の犬と散歩させ、結果として逃げてしまったこと、ペットホテルの従業員の説明が二転三転し、場当たり的であることなどの事情が重要視されてペットホテル側の過失が認定され、60万円という比較的高額の賠償が認められました。

ペットホテルは保管料を支払う有償寄託で、受寄者には善管注意義務が課せられています。しかし相手は動物ですから、ペットホテルですら通常業務として散歩中にただ犬が逃げてしまっただけでは過失の認定はなかなか難しかったのではないかとも思えるのです。

そうなると、「自己の財産に対するのと同一の注意義務」に軽減されているAさんについては、(ペットのプロではない)Aさんなりに注意を払って散歩させていたということであれば、注意義務違反を問うことはよほどの事情がない限り難しいかもしれません。

子どもを預かるぐらいの認識が必要

このようなことがあると、残念ながら、あなたとAさんの人間関係も綻びてしまいますね。預けるほうも預かるほうも、ペットを預ける(預かる)=自分(他人)の子どもを預ける(預かる)ぐらいの認識が必要ではないでしょうか。

志賀剛一
志賀・飯田・岡田法律事務所所長。1961年生まれ、名古屋市出身。89年、東京弁護士会に登録。2001年港区虎ノ門に現事務所を設立。民・商事事件を中心に企業から個人まで幅広い事件を取り扱う。難しい言葉を使わず、わかりやすく説明することを心掛けている。08~11年は司法研修所の民事弁護教官として後進の指導も担当。趣味は「馬券派ではないロマン派の競馬」とラーメン食べ歩き。
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