隣家に預けた愛犬が行方不明に 慰謝料は請求できる?弁護士 志賀剛一

寄託は他人の物を預かって一定期間保管する契約です。受寄者は寄託者から預かった物を保管する義務を負いますが、その際の注意義務の程度は受寄者が報酬をもらうかどうかで異なります。

受寄者が保管の対価として報酬をもらう約束がある場合(ペットホテルなどはこれに該当します)、受寄者は「善良な管理者としての注意義務」を負います(略して「善管注意義務」と呼ばれていますが、この言葉は委任契約における受任者の地位など他の場面でもしばしば登場するので、覚えておくとよいでしょう)。

善管注意義務とは、職業や社会的・経済的地位に応じ、取引上、一般的に要求される程度の注意のことをいいます。その仕事のプロに対して平均的に要求されている注意義務と考えてください。このため、有償寄託においては受寄者がいくら「私なりに注意義務を尽くした」と反論しても、そのレベルがプロとして求められるスタンダードを下回っていれば注意義務違反が問われることになります。

「お金」で注意義務のレベルが変わる

これに対し、受寄者が報酬をもらわない無償寄託の場合には、受寄者に課される注意義務の程度が軽減します。この場合、「自己の財産に対するのと同一の注意義務」を負えばよいことになっています。

これは講学上、その人の職業・性別・年齢など個々の具体的注意能力に応じた注意義務といわれていますが、平たくいうと「他人の物をタダで預かっている場合にまでプロと同様の注意義務を課すのは酷だから、立場や能力に応じてその人なりに注意を払っていればよい」というのが民法の考え方になっているのです。

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